【獣医師監修】猫の出産について。 準備や産後の注意点とケアについて

猫が出産する時期や季節はいつころ? 1回に生まれる子猫の数は? 出産前の準備や、産後の注意とケアについて紹介します。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

猫の出産

メス猫が最初に発情するのは平均して生後5~9カ月です。季節は2~4月ごろと6~8月ごろで、1年間に発情するのは基本的にこの2回ですが、猫種や生活環境によって変わってきます。出産のピークは2~8歳です。ただし、猫の場合は10歳を超えても出産する可能性は十分あり、自由に交配できる環境下のメス猫は、10年で50~150匹の子猫を産むと試算されるほど、旺盛な繁殖力を備えています。あまり高齢で出産すると、未熟児や障害を持った子猫が生まれたり、死産だったりと、リスクが高いため、老猫は妊娠させないよう注意が必要です。

出産の流れと準備

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猫の妊娠期間はだいたい60~68日で、もっとも多いのがその間の63~65日です。交尾から約2カ月で出産に至るため、あっという間に分娩の時期がやってきます。そのときになって慌てないためにも、出産の流れや出産時の対処法などを知り、準備を進めておきましょう。

分娩の兆候

猫は分娩の24時間前くらいからほとんど食事をしなくなり、陣痛が始まると乳房や陰部をしきりに舐める、床を掘るしぐさをする、出産場所を探す、むやみに鳴く、威嚇するなどの行動を見せます。また体温が1℃ほど下がります。分娩に備え、事前に清潔なタオルや毛布を敷いた段ボールなどを用意し、四方を囲まれ、暗くて乾燥した場所に設置しておきましょう。その際、タオルや箱に猫の匂いをしみこませておくと、スムーズに入ってくれます。
<準備しておくもの> 段ボールなどの箱、タオルや毛布、猫の匂いがしみついたおもちゃなど

出産

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猫が一度の出産で生む子猫の数は平均3~5匹ですが、中には9~10匹産む猫もいます。通常は陣痛が始まってから30分くらいで第一子が生まれ、その後、15~30分間隔で分娩を繰り返し、すべて生まれるまで1~2時間程度かかります。分娩時間は個体差があり、12時間以上かかる場合もあります。なお、陣痛が始まってから1時間経っても生まれないときは、難産の可能性があるため、獣医師の指示を仰ぎましょう。

出産時、子猫を包んでいる羊膜は自然と破れますが、破れないときは母猫が舐めて破ります。胎盤は1匹につき一つずつあり、通常は子猫→胎盤→子猫→胎盤と出てきます。ただ、中には次の子猫が生まれる前に先に胎盤が出てくるケースがあり、その場合、お腹の中に胎盤が残ると子宮感染の原因となるため、子猫の数と胎盤の数が合っているかどうか確認することが大切です。

子猫を包んでいた羊膜や胎盤は母猫が食べて処理します。へその緒も自分で嚙み切るので、人間が手出しする必要はありません。まれに子猫の世話をしなかったり、初産のためきちんと子猫を舐めなかったりすることがあるので、そのときは手助けしてあげましょう。対処方法としては、まず清潔なタオルやガーゼで子猫をふき、羊膜をはがします。続いて、へその緒を木綿の糸でしばって止血し、消毒したハサミで切り離します。そこまでやってから、子猫は母親のもとへ戻して舐めてもらいましょう。
<準備しておくもの> 清潔なタオルやガーゼ、木綿の糸、消毒液、ハサミ

産後のケア

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母猫は子猫に乳をあげなければならないため、普段の約2倍の栄養素が必要になります。元気にもりもり食べていれば心配ありませんが、食欲がない、ぐったりしている、お腹が張っているなどの症状が見られたら、産後の体調不良かもしれません。

死産

出産したにもかかわらずお腹が張っている、食欲がなくてぐったりしているなどの症状があれば子宮内に亡くなった子猫が残っている可能性があります。急いで病院へ連れて行きましょう。子宮内に胎盤が残る「胎盤停滞」のときも同様に対処しましょう。

産褥熱(さんじょくねつ)

出産で子宮や膣の粘膜が傷つき、細菌感染が起きることで高熱が出ます。そのままにしておくと、子宮内膜症や腹膜炎、敗血症などへと進行することがあるため、産後は外陰部を清潔に保ち、おりものが出ていないかしっかり観察しましょう。

子癇(しかん)

妊娠や授乳によって、カルシウムが急激に減り、痙攣が起きることがあります。数秒で収まりますが、繰り返し起きるようであれば命に関わることもあるので、動物病院で適切な処置を行ってもらうなど、対策が必要です。妊娠・授乳期用フードはカルシウムをはじめ、この時期に必要な栄養素が配合されているので、妊娠中から与えておくのもおすすめです。

乳腺炎

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子猫があまり乳を飲まなかったり、もらい手が決まって、お乳を飲む子猫がいなくなったりすると、乳房の中に乳が残り、炎症が起こります。蒸しタオルで乳房を温め、詰まった乳を絞り出す必要がありますが、さわるといやがるときは、病院へ連れて行った方がいいでしょう。

たとえば、母猫が小さい、胎児が大きいという二つの原因から、帝王切開が必要になることがあります。猫にとっても、出産は一世一代の大仕事です。自力で出産できるとはいえ、最後まで何が起こるかわかりません。予期せぬ事態に見舞われたとき、すぐに病院へ駆けつけられるよう、愛猫のかかりつけ医はあらかじめ決めておいた方が安心です。

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