【獣医師監修】猫の後ろ足が麻痺したり、ふらついたりする心筋症の症状や治療法

猫の心臓病でよくみられるものは心筋症です。心筋症は心機能障害を伴う心筋疾患で、症状が重篤化することが多く、最悪の場合は猫の命にもかかわる恐ろしい病気です。

  • サムネイル: ひなた ふゆみ
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

猫の心筋症とは?

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猫の心筋症とは、心臓の筋肉である心筋に何らかの異常が起こり、心臓の機能が損なわれた状態を指します。心筋症は、心臓の状態や病態の特徴により以下の3つに分類されます。

●肥大型心筋症

肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)は、肥大を誘発する原因(圧負荷やホルモン性の刺激)がないにも関わらず、おもに左心室の心筋が肥大してしまう心筋症です。心筋が肥大することにより、左心室は狭くなり、左心室へ血液が流入しづらくなります。

なお、肥大型心筋症はほかの心筋症に比べ、動脈血栓症(血栓が動脈に詰まる疾患)の発生が多いことも知られています。

●拘束型心筋症

拘束型心筋症(こうそくがたしんきんしょう)は、心臓の内部にある線維が肥厚化してしまうことで心臓の壁が硬くなり、心臓が上手く伸縮できなくなる心筋症のことをいいます。伸展・収縮どちらの機能も失われてしまうため「中間型心筋症」と呼ばれることもあります。

原因についてはよくわかっていませんが、心筋炎と何らかのかかわりがあると考えれられており、肥大型・拡張型の心筋症を併発することもよくみられます。

●拡張型心筋症

拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)は、心室の収縮力が弱くなり、心室の内腔が広がっていってしまう心筋症のことをいいます。

以前は、拡張型心筋症は肥大型心筋症に次いで多い猫の心筋症でしたが、今では少なくなりました。また、非常にまれではありますが、不整脈を特徴とする右室心筋症(うしつしんきんしょう)や、いずれの心筋症にも分類できない分類不能心筋症を発症する場合があります。

心筋症の症状

猫が心筋症にかかった場合、以下のような症状が現れます。

●運動不耐性
●呼吸促迫
●開口呼吸
●咳
●呼吸困難
●突然の後肢麻痺

心筋症の初期段階では無症状か、もし症状が出たとしても元気や食欲の低下など、ほかの病気でもよくみられる症状がほとんどなので、発症になかなか気づきにくいといわれています。

病態が進むと、肺や胸に水が溜まり重度の呼吸困難を起こしたり、動脈血栓症(どうみゃくけっせんしょう)により、多臓器不全を起こしたりして死亡することもあります。血栓は後肢の血流を阻害する場所にできるケースが多く、その場合は突然の後肢麻痺を起こします。

猫の心筋症の原因

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猫の心筋症の原因は、そのほとんどが原因不明で起こるといわれていますが、現時点で考えられている要因をご紹介します。

肥大型心筋症の原因

肥大型心筋症の発症については、遺伝子が要因の一つではないかと考えられていますが、遺伝子と発症の関係性がはっきりと証明できていない猫種もあるなど、未解明な部分が多いのが現状です。

遺伝子の突然変異により肥大型心筋症を発症する可能性がある猫種
●アメリカン・ショートヘア
●メインクーン
●ペルシャ

これらの猫種は、遺伝子と発症の関係性が強いと考えられており、親や兄弟などが肥大型心筋症を発症した場合は、その猫も発症する可能性が高いといわれています。

拘束型心筋症の原因

拘束型心筋症についても、現在のところ発症の原因は特定されていませんが、ウイルス感染、遺伝、代謝性疾患などが要因ではないかと考えられています。

拡張型心筋症の原因

必須アミノ酸の一つであるタウリンの摂取不足が原因といわれています。拡張型心筋症とタウリンの関係性が判明して以降は、キャットフードにタウリンを配合することで、発症率が劇的に改善したといわれています。

ただし、猫がタウリンを摂取しているにもかかわらず、拡張型心筋症を発症するケースもあります。遺伝的には、シャムやアビシニアンが発症しやすいといわれています。

猫の心筋症の予防法

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猫の心筋症は原因がはっきりしないケースが多いため、完璧に予防することはできません。飼い主ができることとしては、タウリンが配合されたキャットフードを与え、猫にとってストレスの少ない生活を心がけることが挙げられます。

また、定期的な健康診断によって猫のカラダをチェックし、早期発見に努めることも重要です。

猫の心筋症の治療法

猫の心筋症の治療法としては、症状の悪化を防ぐための対症療法がメインとなります。

上記3つの心筋症に対しては、いずれも心室の拡張障害により起こるうっ血性心不全への治療として、血管拡張剤、利尿剤、強心剤などが使用されます。

また、動脈血栓症を起こしているケースでは、血栓を溶かす治療を行います。
呼吸困難を起こしているような場合は、酸素吸入により状態を落ち着かせることが優先されます。

心筋症には万全の予防法がなく、どの猫も発症する可能性があります。普段から愛猫の健康チェックを欠かさず、定期的に健康診断を受けるなどして、病気の早期発見に努めましょう。

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