【獣医師監修】猫の元気がない。カリウムの過不足を原因として発症するカリウム血症の症状と治療法
カリウムは、過剰なナトリウムの排泄、神経刺激の伝達、筋肉や心臓の働きの調整などの役割を果たしている、猫にとって必要な栄養素の一つです。カリウムの過不足は猫のカラダに様々な影響を及ぼします。ここでは、猫のカリウム血症についてみていきましょう。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
カリウム血症の病態と病状
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カリウムは猫にとって必要不可欠な栄養素です。カリウムは多すぎても、逆に少なすぎても猫のカラダに悪い影響を与え、その症状は高カリウム血症、低カリウム血症と呼ばれています。
高カリウム血症
猫の高カリウム血症とは、何らかの原因で血中のカリウムの濃度が上がってしまった状態をいいます。カリウムの血中濃度が異常に上がってしまった場合、猫のカラダに重大な影響を及ぼします。症状が軽い場合には、ほとんど無症状にみえることから発見しづらく、悪化しやすいのが特徴です。
高カリウム血症のおもな症状は次の通りです。
●四肢のしびれ
●筋力低下
●吐き気
●脈拍の異常(不整脈・頻脈)
●死亡(重篤な場合)
とくに、心臓の機能が狂ってしまい、脈拍が不規則になる不整脈が発生した場合は、心停止から死に至る場合もあります。そのほか、カリウムは神経信号を伝達する上で重要な役割を果たしているため、筋力低下などの症状がみられます。
低カリウム血症
猫の低カリウム血症は、何らかの原因で血中のカリウム濃度が下がってしまうことで発症し、とくに中高齢の猫がかかりやすいといわれています。発症すると、高カリウム血症と同様の症状があらわれますが、こちらも発症に気づきにくいという特徴があります。
カリウム血症の原因
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高カリウム血症の原因
まず第一に考えられるのが、カリウムの過剰摂取です。カリウムを含んだ食べ物を摂取しすぎて体外への排泄能力を超えてしまうことで、高カリウム血症を発症します。カリウムを多く含む食材としては、味噌や納豆、ほうれん草、パセリなどが挙げられます。これらの食材を過剰に摂取してしまった場合、高カリウム血症を発症しやすくなります。
次に、カリウムを排出する機能が低下している可能性が考えられます。猫が腎臓病や糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)、尿路結石(にょうろけっせき)などを患っている場合に、カリウムの排出機能が低下する可能性があります。
また、細胞内のカリウムが流出することで、血中カリウム濃度が高くなることも。具体的には、外傷や火傷、化学療法などで細胞が破壊されてしまっている場合、もしくは代謝に異常が起こる代謝性アシドーシスを発症している場合には、高カリウム血症を発症するリスクが高まります。
低カリウム血症の原因
低カリウム血症は、偏った食生活によりカリウムが十分に摂取できていないことが原因となって発症します。また、腎臓や副腎に異常が起きたり、機能不全に陥ったりすることで過剰分泌されたカリウムが尿とともに体外に排出されてしまい、低カリウム血症を発症することがあります。
カリウム血症の治療法と予防方法
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カリウム血症の治療には、血中カリウムの濃度を正常に戻すための対症療法を行います。高カリウム血症の場合は、生理食塩水の輸液や、ブドウ糖液、重酸ナトリウム、カルシウム製剤などを投与します。
低カリウム血症の場合は、グルコン酸カリウムの錠剤や粉末などを投与し、症状が重篤な場合はカリウムを直接点滴によって投与します。猫の腎臓病や糸球体腎炎が原因でカリウム血症を発症している場合は、それぞれの疾患に対しての対症療法を行います。
また、カリウム血症の予防方法としては、必要なミネラル分であるカリウムを猫に過不足なく摂取させるために、毎日の食事の内容をしっかりと管理することが重要です。そのために、カリウムを含む食べ物についての知識を持ち、適量を判断できるようにしましょう。
健康な猫の場合は、パッケージに「総合栄養食」と書かれたキャットフードを常食とすることで、カリウムの過不足を回避できます。また、高カリウム血症の場合は、外傷や火傷が原因になることもあるので、飼育環境からそれらのリスクを極力排除してください。
高カリウム血症の原因となる腎臓病については、現在のところ確実な予防方法がありません。猫のカラダに異常が起きていないか毎日よく観察し、病気の早期発見を心がけましょう。そして、猫の様子に少しでも異変を感じた時は、すぐに動物病院で相談してください。
カリウムは多すぎても少なすぎても、猫のカラダに大きな影響を与えます。大切な愛猫が一日でも長く健康に過ごせるよう、日々の食事内容や飼育環境に気を配りましょう。