【獣医師監修】猫の肛門嚢疾患 考えられる原因や症状、治療法と予防法
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【獣医師監修】猫の肛門嚢疾患 考えられる原因や症状、治療法と予防法

猫がお尻を気にしていたり、痛がったり、膿のようなものが出ていたり…。そんな時は肛門嚢疾患(こうもんのうしっかん)かもしれません。今回は、猫の肛門嚢疾患の原因や症状、治療法、予防法についてみていきましょう。

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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

肛門嚢疾患の症状

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肛門嚢疾患とは、肛門近くにある肛門嚢という器官に生じる疾患のことで、「炎症」「分泌不全」「破裂」などの症状がみられます。

肛門の周辺には、肛門腺と呼ばれる分泌器官があります。そこで作られた分泌液は、肛門嚢と呼ばれる袋状の部分に蓄えられ、排便時や興奮時などに排出されます。

しかし、何らかの理由で肛門嚢から分泌液が排出されにくくなったり、細菌感染を起こしたりすることで、肛門嚢疾患が起こります。

猫が肛門嚢疾患を発症すると、次のような症状が現れます。

●お尻をしきりに舐める
●お尻を床にこすりつける
●痛みを訴える
●元気がなくなる
●食欲が減退する

肛門嚢疾患により強い痛みを伴うので、元気や食欲がなくなります。また、痛みのせいで排便を嫌がり、便秘気味になってしまうこともあります。

肛門嚢疾患の原因

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肛門嚢疾患を患う原因ははっきりとしていませんが、リスクを高める要因としては以下のようなものが考えられます。

●慢性的な軟便や下痢
●加齢による筋力の低下
●肛門腺分泌量が多い

本来であれば、肛門嚢内の分泌液は、排便時の筋肉の緊張に伴って排出される仕組みになっています。しかし、慢性的に軟便や下痢などをしていると、排便時にいきまないため、肛門腺が排出されず溜まっていってしまうことがあります。

また、加齢による筋肉の衰えにより、自力で分泌液を排出できなくなる猫もいます。
そのほか、もともと肛門腺の分泌量が多く、排出してもすぐに溜まってしまい、排出が間に合わなくなってしまうことも。

外で狩りをしたり敵に出会ったりしていた頃に比べると、室内での生活は穏やかなため、興奮時の排出をすることが少なくなったことなども要因の一つではないかと考えられています。

肛門嚢疾患の治療方法

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肛門嚢疾患の治療法としては、次のようなものが挙げられます。

肛門絞り

動物病院で肛門嚢を絞ります。炎症を起こしている場合は強い痛みを伴うことが多いです。絞った後に、さらに洗浄をすることもあります。肛門嚢が破裂してしまっている時は、肛門嚢内を洗浄します。

投薬治療

抗生剤や消炎剤を使用します。内服させることもありますが、肛門嚢に直接塗布することもあります。

外科治療

肛門嚢疾患を何度も繰り返してしまう場合、外科手術で肛門嚢を切除する場合もあります。

肛門嚢疾患の予防方法

猫の肛門は、普段尻尾で隠れているので、異常を発見するのが難しいといわれています。そのため、定期的に猫の肛門をチェックすることが重要です。可能であれば、自宅でも月に1~2回程度、肛門絞りをしてあげてください。まめに行うことで、肛門周りを触られることを嫌がらなくなります。肛門嚢は肛門の左右両脇、時計で表現すると4時と8時の位置にあります。そこにティッシュなどを添えてそっと指で押すと、肛門から分泌液が出てきます。力加減によっては、勢いよく飛び出すこともあるので注意してください。また、不適切な肛門絞りは、かえって肛門嚢疾患の原因となります。不安な場合は、獣医師にお願いするようにしましょう。

また、肥満により運動量が低下したり、肛門周りのグルーミングができなくなったことで、肛門嚢疾患を発症するケースもあります。肥満は万病の元といわれているので、適度の運動と正しい食事で、適正体重を維持できるようにしましょう。

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