【獣医師監修】犬にとって、階段の上り下りは負担になる。その理由について
出典 : Steve Silver Smith/Shutterstock.com

【獣医師監修】犬にとって、階段の上り下りは負担になる。その理由について

犬が自宅にいる時、散歩をしている時、階段を上り下りする機会があると思います。人間にとってはそんなに負担にならない高さの階段でも、犬にとっては大きな負担になることを知っていましたか? 今回は、犬と階段の関係性について解説していきます。

  • サムネイル: PECO編集部
  • 更新日:

監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬にとって階段の上り下りは足腰の負担になる

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康


出典 thka/Shutterstock.com

犬にとって、階段の上り下りは足腰に相当な負担をかける動作です。これは、階段にいえることだけではなく、ソファやベッドの上り下りや、フローリングで足を滑らせることも同じく大きな負担となっています。

階段の上り下りは、人間にとっては少し足を上げるだけの動作ですが、犬にとってはカラダ全体の重さが腰にかかるため、そのダメージは相当なものです。とくに下りは腰への負担が大きく、頻繁に階段の上り下りをしている犬は、椎間板ヘルニアになりやすいといわれています。椎間板ヘルニアになると腰に痛みが生じ、悪化すると四肢、とりわけ後肢が完全に麻痺してしまう場合もあります。

犬はもともと平面で生活する動物で、猫のように高いところに上る習性がありません。そのため、犬の足腰は柔軟性に欠け、衝撃に弱いという特徴があります。つまり、犬のカラダの構造は、日常的な階段の上り下りに対応していないのです。

胴長犬種はとくに注意

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康


出典 Welshea Photography/Shutterstock.com

犬の中でも、階段の上り下りにとくに注意が必要なのが、胴長短足の犬種です。ミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーなどにとっては、階段は上りも下りも危険な行為です。階段の上り下りのたびにカラダを屈めることになるので、腰へのダメージがどんどん蓄積され、椎間板ヘルニア予備軍になっていきます。

対策としては、普段から犬に階段を使わせないことが一番です。もちろん、どうしても階段を使わざるを得ない場面もあるかと思いますが、その時は飼い主が抱っこをしてあげたり、休憩を挟みながらゆっくり歩かせたりすることで、少しでも犬の足腰の負担を減らしてあげましょう。

犬が階段から落ちやすい理由

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康


出典 WichitS/Shutterstock.com

犬は、下半身と比較すると上半身の方が重い動物です。頭部に重さが集中しているために、どうしても上半身が重くなるのですが、階段の下りの時は重い上半身が下になってしまうため、犬は転ばないようにバランスを取らなくてはなりません。この時にバランスを取り損ねると、階段から落下してしまうというわけです。

そのため、階段の上りは喜んで駆け上がっていくのに、下りになると急にへっぴり腰になる犬が多いのです。最近では「犬が階段を下りるのを怖がっている動画」が投稿サイトなどにアップされていますが、腰へのダメージや落下のリスクを避けるためにも、犬が階段を下りたがっている時は、飼い主がしっかりサポートしてあげましょう。

上述の通り、足が短いミニチュア・ダックスフンドやウェルシュ・コーギーは、階段の上り下りのダメージをカラダに蓄積しやすい犬種ですが、万が一階段から落ちてしまうと、顎やお腹を床にぶつけてしまうことがあります。そのため、顎の骨にダメージが残り噛み合わせが悪くなったり、内臓にダメージが残り体調不良になったりすることがあります。

また、犬種を問わず、階段から落下した直後はいつも通りでも、数日経ってから体調が急変することがあります。これは、落下の衝撃で脳に外傷を受け、その影響でてんかん発作などの神経障害を起こしてしまう場合があるためです。

このように、階段の上り下りは犬にとって大変リスクが高いものです。椎間板ヘルニアや落下のリスクを低減するためにも、犬のカラダの構造をしっかりと理解し、生活環境の見直しや適切なサポートに努めましょう。

内容について報告する