【獣医師監修】立ち耳のスコティッシュフォールドは病気になりにくいって本当?

折れた耳が特徴的なスコティッシュフォールド。しかし、スコティッシュフォールドには立ち耳の猫も存在します。そして、折れ耳と比べて、立ち耳の個体の方が病気になりにくいといわれているのです。これは、一体どういうことなのでしょうか。

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監修:ヴァンケット動物病院 松原且季院長

立ち耳のスコティッシュフォールドは病気になりにくい?

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一般的に、スコティッシュフォールドは耳と骨の病気になりやすいといわれています。しかし、立ち耳のスコティッシュフォールドは、折れ耳のスコティッシュフォールドと比べて、これらの病気になりにくい傾向があります。では、なぜ立ち耳の猫の方が病気になりにくいのでしょうか。これには、スコティッシュフォールドが持っている「遺伝子」が関係しているようです。

立ち耳と折れ耳の仕組み

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スコティッシュフォールドの折れ耳は、軟骨異形成(骨や軟骨が正常に成長しない病気)によるもので、優性遺伝といわれています。もともとは、突然変異的に折れ耳の仔猫が生まれたことから、スコティッシュフォールドの歴史は始まりました。そして、その猫が産んだ仔猫の耳も折れ耳だったことから、折れ耳が遺伝することが判明したのです。その「遺伝」を「品種」として定着させるため、スコティッシュフォールドは計画的に繁殖されるようになっていきました。

しかし、イギリスでは、奇形や骨格障害が遺伝することで健康上の問題が発生するという懸念から、品種登録されることはありませんでした。その後、スコティッシュフォールドはアメリカへと渡り、遺伝疾患の影響を小さくするために、アメリカンショートヘアやブリティッシュショートヘアとの交配が行われ、1978年CFA(THE CAT FANCIERS' ASSOCIATION, INC.)に新しい猫種として認定されます。こうして、スコティッシュフォールドの血を受け継ぎながら、立ち耳の個体が産まれてくるようになったというわけです。

これが、折れ耳と立ち耳のスコティッシュフォールドが生まれてくる仕組みです。
スコティッシュフォールド同士を交配させた場合、優性遺伝である耳の軟骨の異形成は、ほぼ100%の確率で遺伝します。つまり、折れ耳の個体が生まれてきます。この猫は、将来、骨や軟骨などの組織の成長や発達に障害が起こる「骨軟骨異形成症」を発症するリスクが非常に高くなります。

一方、立ち耳の個体は、スコティッシュフォールド同士の交配で生まれていません。つまり、耳の軟骨の異形成の遺伝子を持っていないということになります。そのため、遺伝的疾患に対しても強い個体が多いとされているのです。また、耳の通気性がよいために、細菌が繁殖しにくく、耳の疾患や皮膚病などにかかりにくいといわれています。

前述した通り、スコティッシュフォールドの折れ耳は、軟骨異形成という遺伝的疾患を品種として定着させたことから始まっています。しかし、軟骨異形成を持って生まれた猫は、将来、骨や軟骨の疾患にかかる可能性が高く、慢性的な痛みを発症しやすいことから、国や地域によっては、スコティッシュフォールド同士の交配を禁止しているところもあるのです。

遺伝子学的に立ち耳のスコティッシュフォールドが耳や骨の病気になりにくい理由を解説してきましたが、当然ながら個体差があるので「折れ耳だと病弱」「立ち耳なら健康」とは言いきれません。いずれにしても、飼い主の健康管理が、愛らしいスコティッシュフォールドの元気を支えていくことになるのです。

 

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