【獣医師監修】犬の糖尿病|考えられる原因や症状、治療法と予防法について

人間同様、犬も糖尿病になります。この糖尿病、様々な病気との合併症になりやすい、非常に怖い病気です。しかも、犬の糖尿病の場合、インスリンの補給が必須になるので、治療も大変になるという厄介なものです。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬が糖尿病になる原因

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犬の糖尿病は、ホルモンの働きが低下して起こる内分泌の病気の一種です。ホルモンとは、体内のいくつかの部分で生成されるもので、血液やリンパ液によって体内のほかの場所に運ばれて組織の活動に変化を与えます。そのホルモンを生成する場所を内分泌腺と呼ぶので、内分泌の病気に分類されています。早食いや体重の増加によりホルモンバランスが崩れると、糖尿病になるリスクが高まります。

人間の場合、糖尿病には「インスリン依存性糖尿病」といわれる外からインスリンを注射することで補給して治療するタイプと、「インスリン非依存性糖尿病」といわれるインスリンの補給を必要としないタイプの2種類があります。人間は中高年以降に糖尿病を発症することが多く、一般的に後者のタイプなのですが、犬の場合はほとんどが前者のタイプなので、インスリンの補給が必須になります。

この糖尿病になりやすい犬種としては、8歳以上の高齢のプードル、ダックスフンド、ビーグル、ミニチュア・シュナウザー、テリアなどで、発症率はおよそ200頭に1頭の割合です。一般的には小型犬が発症しやすいですが、まれに大型犬でも発症することがあり、また、オスよりもメスの方が2倍近い確率で発症します。

犬が糖尿病になった時の症状

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犬の糖尿病の典型的な症状は、以下のようなものです。

●水を飲む量とおしっこの量がともに増える
●食欲旺盛なのに痩せて体重が低下する
●常にごはんを食べたがる

これらの症状のほか、合併症として白内障を発症すると目が白っぽくなります。また、糖尿病性ケトアシドーシスという厄介な病気になると、食欲がなくなり水すらも飲まなくなってしまいます。さらに進むと、元気がなくなり嘔吐・下痢をし、昏睡状態に陥ることもある恐ろしい病気です。糖尿病になって数日で発症する可能性もあるので、治療が困難な疾患のひとつに挙げられています。この病気が発症した犬の死亡率は30%と高くなっているので、このような症状が出ている時はすぐに獣医師の診断を仰ぎましょう。

犬の糖尿病の治療・予防方法

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犬の糖尿病は進行性の病気ですので、血糖値を一定に保つことで症状を抑えていきます。そのためにインスリンの投与が必要になり、合併症の予防につながります。

インスリンの注射は、毎日同じ時間に食事をさせた直後に打ちます。これを獣医師から指定された回数と用量で注射しますが、インスリンの量や打つ回数を間違えると大変なことになるので注意が必要です。過度にインスリンを投与すると、体内のインスリンが過剰となり低血糖発作を起こし、意識を失ったり痙攣したりする原因になってしまいます。また、同じ場所にインスリンを連続で注射すると、皮膚が硬くなってしまい効果が薄まるので、前にどこに打ったかも覚えておきましょう。

このインスリン注射と並行して、食餌療法も行います。食後は血糖値が急上昇する可能性があるので、繊維質の多いごはんを与えることで、ブドウ糖の吸収速度を緩めるものです。加えて、毎日同じ時間帯に同じ内容の運動を行うのも犬の糖尿病には効果的です。毎日の運動に極端な差がある場合は、糖尿病の中でも危険な低血糖レベルになってしまう可能性があるので、運動量の差がないようにするのがポイントです。
また、犬ではメスの方が糖尿病になりやすいと先述しましたが、これはエストロジェンというホルモンがインスリンの効きやすさに大きく影響するからです。従いまして、メスで未避妊の犬が糖尿病になった場合、治療の一環として避妊手術を行う場合があります。

このように、糖尿病になると大変なことが多くなります。日頃から、犬の体重管理や食事の与え方に気を遣い、糖尿病になるリスクを下げるようにしましょう。

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