『アニマル・ウェルフェア サミット2016』滝川クリステルさんに聞いた“目指すべき殺処分ゼロ”とは

『アニマル・ウェルフェア サミット2016』滝川クリステルさんに聞いた“目指すべき殺処分ゼロ”とは

“アニマル・ウェルフェア”の理念を正しく伝えるために有識者がそろう「ANIMAL WELFARE SUMMIT 2016」が8月、東京大学にて開催されました。主催の一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの代表理事・滝川クリステルさんに、サミットについてお聞きしました。

  • サムネイル: PECO編集部
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Photo by Kazumi Kurigami

日本に“アニマル・ウェルフェア”を正しく発信するため、小池百合子都知事を始めとした各分野のリーダーが集う「ANIMAL WELFARE SUMMIT 2016」が8/26~27、東京大学本郷キャンパスにて開催されました。今回PECOは、主催した一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルの代表理事を務める滝川クリステルさんに、今回のサミットや、「殺処分ゼロ」への思いを聞くためインタビューを行いました。

89%満足。51%が「動物を飼っていない」とのデータも!?

PECO(以下――)
今回「アニマル・ウェルフェア サミット」を開催しようと思われたきっかけは?

滝川クリステルさん(以下略)

「“アニマル・ウェルフェア”って聞きなれない言葉だと思うんですけど、その“アニマル・ウェルフェア”の基本的な考え方や、今起こっている問題について多くの皆さんに知ってもらうという啓発活動が大きな目標でした。また、さまざまな動物業界の方が集まる場というのが、あるようでなかなかなかったので、今回は動物保護活動をやっていらっしゃる団体や、殺処分ゼロを達成している各自治体の首長、獣医師、欧米のドッグジャーナリストなどたくさんの講師方々を集めて、さまざまなお話をしてもらいました。
昨今“殺処分ゼロ”という言葉があまりにも大きく踊り出ていますが、それについて実はいろんな声があって、「ゼロにするだけが目標なのか?」と責められることもあります。でもそうではなく、“アニマルウェルフェアに則った殺処分ゼロを目指す”ということを伝えたい、というのが大きなポイントでしたね」

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――かなり大規模なイベントでしたが、運営についてもご苦労があったのでは?

「今までこういうイベントをやったことが全くなかったので、どういう企業さんが集まるのか、どういう方々がいらっしゃるのか、なかなか分からなくて、本当に手探り状態でした。運営については、いろんな方々がボランティアをやってくださって助かりましたが、元々の運営スタッフが少し不足していたことも大きな反省点でした。来年(2017年)もまた開催する予定ですが・・」

※こちらのインタビューは2016年に行なわれました。

――あ、来年の開催も決定したのですか?

「はい。このサミットは、継続的に毎年開催していく予定でいます。なので、次回は今回の反省点を踏まえて、不足していた部分を埋めていくということになりますね。2日間続けて2,000人規模の人数が集まりましたが、会場に収まりきらなくて・・。今度はもう少し大きい会場を借りています。
でも概ね、いろんな意味で満足度の高いイベントになったようで、「89%満足」という数字が出ていました。お客さんの半分は地方の方で、半分は東京の方。そして51%の方が「動物を飼っていない」という面白いデータがありました。私は、動物を飼っている方がもっと多くて、かなり詳しい方が専門的な話を聞きにいらっしゃるのかと思っていましたが、そうではなく、「動物を飼っていないけど、勉強したい」「興味はあるけど、じゃあ、どうしたらいいか分らない」という方々がおそらく来てくださったのかなと。「何から始めていいのか分からない」という方は本当に多いので。そういう皆さんに、いろんな引き出しをあの場で提供させてもらえたのかなと思っています」

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――「89%満足」ということですが、滝川さんご自身の満足度はいかがでしたか?

「私自身、3~4回くらい登壇したのかな? なので、打ち合わせなどで、サミット全体をみることはできませんでした。ただ、介助犬のデモンストレーションを見させていただいたとき、会場の熱気を感じましたし、スタッフを含めた皆さんの表情を見たら、すごく満ち足りている様子がにじみ出ていました。そういう光景を見て、私の満足度も高まりました。私たちはプラットホームというか、場を提供する財団として、こういうイベントをやりたかったのですが、実際にやることができて、一つ段階を昇れたかなと思いました」

「ペット殺処分ゼロ」を掲げる小池都知事の本気

――いろいろな催しが行われましたが、滝川さんの中で特に印象に残った催しは?

「やはり介助犬のデモンストレーションで、それを子供たちがうれしそうに見ていたところが一番印象に残りましたね。介助犬たちがうれしそうにお手伝いしている様子が伝わったのが良かったと思うんですよ。中には「介助犬や盲導犬たちが強要されて仕事をしているのを見るのが嫌。あれは人間のエゴだ」なんて言う人たちもいるんですよ。いろんな意見がありますからね。でも、あのデモンストレーションを見ていただくと、彼らが無理にやらされているのではなく、遊びながら楽しそうにやっている様子がすごく伝わったと思いますし、これまでの介助犬のイメージが変わったのではないかと思います。犬だって、気持ちが顔に出ますからね」

――また今回のサミットでは、東京都知事の小池百合子さんが登壇されたことも大きな話題になりました。

「そうですね。小池さんは都知事に当選される前から「ペット殺処分ゼロ」のマニフェストを掲げられていたので、今回のサミットの打ち合わせのときに「小池さんから何かメッセージをいただけないかな」なんて話していたんです。財団から小池さんにコンタクトを取ったところ、あんなにスケジュールがお忙しい方なのに「行きます」と快いお返事をくださって。本当にありがたかったです」

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――小池さんと対談された中で、特に印象に残ったお話は?

「小池さんご自身が阪神淡路大震災のときに (動物を) レスキューしてらっしゃったというお話がありましたが、あれはテレビにも雑誌にも言ってなくて、どこにも出ていないお話だったそうです。サミットの後、ある番組でご一緒させてもらったとき、「あのお話って、知らなかったんですけど・・」って言ったら「誰にも言ってないわよ」って仰っていました。
それと、予算づけの件ですね。「ペット殺処分ゼロ」実現のために予算をつけると、あの場できちんと明言してくださったことは、大きな意義があったと思います。私たちは2020年までに「殺処分ゼロ」を実現すると言っていましたが、小池さんは「2020年を前倒ししたい」と明言されていました。私たちは「日本全国で、2020年までに」と考えていたんですが、彼女は「東京都では、2020年を前倒しして」という意味で仰ったようです。いずれにしても、彼女は本気だと思います。期待できます」

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「アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロ」を目指して

――来場者の皆さんと直接お話する機会はありましたか?

「質疑応答のときに質問をくださった方や、イベント終了後にお名刺を渡しに来てくださった方はいましたけど、残念ながら、ゆっくりお話するほどは時間がなかったですね。あとはアンケートで皆さんの声を聞いたり、サミットのFacebookページにもいくつかリアクションがありました。「本当にためになりました」という感想がほとんどでした」

――今回のサミットを通じて、「ペット殺処分ゼロ」について考えを新たにされた部分や、また新しい発見などはありましたか?

「今回は、いろんなタイプの催しがありました。たとえば、人気の柴犬・まるちゃんと触れ合ったり、リアル猫ヘッドアートプロジェクトを楽しんでいただく一方で、今現実に起こっていることの写真展を見ていただいたり。ただ浮かれた感じでワイワイと騒いだだけで終わってしまっても意味ないですし、写真展のようなヘビーな催しだけだと重い気持ちで帰ることになりますし・・。その辺のメリハリをきちんとつけることにすごく意味があると感じました。
今回のサミットの目的は、「アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロを目指す」ということ。動物愛護でも動物福祉でもない“アニマル・ウェルフェア”を浸透させて、“アニマル・ウェルフェアに則った”という部分をちゃんと伝えたかったんです。ただ数字の上での「殺処分ゼロ」を追い求めることでおかしくなってしまったり、人間のエゴによって動物を苦しませてしまう部分もありますが、そうではなく、「アニマル・ウェルフェアに則った殺処分ゼロを目指す」ということを大きくちゃんと伝えるべきで、そうした目標を掲げることの大事さも再認識しましたね」

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――今回のサミットを終えて、次回に活かしたい課題はありましたか?

「今回は第1回ですので、アニマル・ウェルフェアを浸透させたいという気持ちが大きかったのですが、繁殖屋やパピーミルの問題などを専門とされている方々もいらっしゃったので、もう少しそれらの実態を開示する場があっても良かったかなと思いました。
本当は最初のリーダーズ会議を、もっとディスカッション風にしたかったんです。来てくださった皆さんがもっとお話ができるようにした方が良かったかなと。さらに、ピースワンコ・ジャパンのプロジェクトリーダー・大西純子さんが今回イタリアの災害のために欠席されていたので、次回はぜひ出ていただきたいと思っています。
今回は主に土曜日にやらせてもらったのですが、子供たちとのふれ合いのやり方をもっといろいろ考えたいと思いました。子供たちが自分の目線でペット問題について作文を書く機会も増えているそうなので、そういう作文を展示するのもいいですね。子供たちは問題をどうとらえているのか、彼らの目線を、ぜひ大人たちに見てほしいと思っています」

やんちゃ盛りの大型犬を迎え入れて・・

――滝川さん自身、5年前に保護犬のアリスちゃんを迎えられたそうですが、そのときのエピソードを教えていただけますか?

「当時、保護団体の方がアリスを連れてきてくれたんです。ある日突然、大型犬がド~ンと家に来るわけですからね。その団体の方にも「やめた方がいい」って言われました。もちろん今は大丈夫ですけど、最初の頃は大変でした。今、女性の方が一人で大型犬に引っ張られて歩いている姿を見ると、本当に大変そうで、「私もあの頃はこう見られていたんだな」って。まぁ、家族がいれば別ですけど、女性一人で大型犬を飼うとは正直冒険したなと思います(笑)。団体の方も、他の方が大型犬を引き取るときに「滝川さんも、やんちゃ盛りの成犬を引き取っていますから、大丈夫ですよ」なんて例に出してくれているみたいです。何しろ大型犬は力が強いですから。男性ならまだしも、女性にはそれが一番大変ですね。
アリスを引き取って5年。もう8歳になるので、少しずつ落ち着いてはきたけど、相変わらず子供みたいな性格をしています。最近だんだん人間っぽくなってきて、そのうち私と会話ができちゃうんじゃないかって思います(笑)」

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――成犬は意外と育てやすいとも言われますが、その点はどうでしたか?

「ええ、育てやすいと思いましたよ。でも、私は、野良犬も良いと思うんです。今フォスター(一時預かりボランティア)をしている子も雑種の野良犬で、いずれ新しい飼い主を探して引き取ってもらうつもりです。フォスターとは、保護された犬や猫を一時的に預かるボランティアのことで、新しい家族に出会うまでの大切な時間を一緒に過ごすパートナーとして、命を繋ぐ大切な役割を担います。しかし現在、このフォスターの数は犬猫の殺処分をなくすために活動しているボランティアの中で絶対的に不足しています。財団では、このフォスターを養成する講座もおこなっていますので、興味のある方は是非HPをチェックしてみてください。

今預かっている野良犬だった子も、いざ預かってみたら、従順でおとなしいんですよ。野良犬の中でも、生まれてから1回も人間に触れてない子は、人間に対する恐怖心からか、すごく距離感があります。でもちゃんと心を開いたら、意外に吠えないし、噛まないんです。性格がシャイな子の場合は、時間と根気は要りますよ。こちら(飼い主)がどこまで待てるか、が大事ですよね。でも(犬が)心を開いたときの“2歩下がりながら、3歩出る”みたいな感じが、もうたまらなく可愛いんです!!」

――犬を迎える前の準備として、ぜひ心がけてほしいことは?

「人それぞれ、環境の違いもありますから、一概には言えませんけど・・。たとえば、ご高齢の方が飼う場合は、自分に何かあった後にどなたに預けるか、譲るかということをちゃんと決めておいてほしいですね。60~70歳になったら、何があるか分からないので、それは考えてほしいと思います。ラブラドールレトリバーなどの大型犬を飼われているご高齢の方が「もう手に負えない」って放棄するケースが多いとよく聞きますしね。
犬を迎えることって、良いことばかりじゃなく大変さもあるから、それは覚悟して迎えてほしいと思います。「タダで引きとれるから」と安直な考えで引き取る人もいますが、その先どのくらいお金がかかるか、とか金銭的なことも冷静に考えておくべきです。
もちろんいきなり飼うのではなく「預かり」という形がありますから、ここを飛ばす必要はまったくないですよ。預かってみて「本当に無理」と思ったら、それを正直に伝えてお返しすること。そうじゃないと、お互いがハッピーじゃない結果になりますから。これは団体さんも心得ているはずなので、遠慮することはないです。でも、人間、どんなこともできると思いますよ。犬を飼うことも、(人間の)子供を育てることの大変さに比べたら、そこまでの苦労はないと思います」

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最後に

――最後に、PECOをご覧のユーザーの皆さんへ、メッセージをお願いします。

「皆さん、今年の『アニマル・ウェルフェア サミット』にご協力いただき、大変ありがとうございました。次回は2017年8月27日(日)、28日(月)に開催する予定です。このサミットは私たち財団への皆さんのご支援で支えられています。寄付していただいたお金は、目の前の動物たちの命を助けるために使われることももちろんですが、同時に、サミットのような啓発活動にも使わせていただき、大きな効果を出していきたいと考えています。それをご理解していただき、今後もご協力をお願いできれば幸いです」

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Photo by Kazumi Kurigami

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