【獣医師監修】猫が頻繁に“伸び”をする心理とは

よく見かける、気持ちよさそうに体をぐーんと伸ばす猫。なぜ猫は伸びをするのでしょう。そこには、猫の本能や心理が隠されています。

  • サムネイル: PECO編集部
  • 更新日:

監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

伸びは野生本能のなごり?

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

twinlynx/Shutterstock.com

猫の伸びは、一日の様々な場面で見かける日常的な行動ですが、とくに眠りから覚めた時は必ずといっていいほど伸びをします。これは、「これから動くぞ」と体の末端まで号令をかけている印。人間も猫も、寝ている間に夢と同じ行動をとらないように、脳が筋肉に信号を送り、動きを止めています。睡眠中動きを止めていた筋肉は、急に素早い動きはとれません。猫は本来、狩猟の本能を持つハンター。野生では外敵に襲われることも少なくありません。狩りをするにも逃げるにも、体の動きはとても大切なもの。伸びは、寝起きの無防備な状態から脱し、素早く動くための準備運動なのです。

人間にも同じことがいえますが、寝ているときやリラックスをしている時は血圧が下がります。低血圧だと体に力が入らずフラフラしてしまいますよね。伸びは、血流を増やして血圧を上げ、脳や筋肉を活発に動かす準備にもなっています。また、筋肉を動かし、血流やリンパの流れを良くすることで、体内に溜まった二酸化炭素や乳酸などの老廃物を体外へ排出するデトックス効果も担っています。

寝起きに伸びをするのは、猫や人間だけではありません。ライオンや犬、草食動物の多くも伸びをします。伸びは本能的に備わった、体を起こす効率的な動きなのです。

気持ちを切り替える、伸びーるスイッチ

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

Bogdan Sonjachnyj/Shutterstock.com

読書やパソコンなど一つの作業を続けていると、大きく伸びをして一息つきたくなるという経験は、誰でもお持ちではないでしょうか。猫も同じように、気分転換として伸びをすることがよくあります。同じ遊びを続けていて、ふとした瞬間に伸びをして次の動きに移ったり、飼い主の帰宅時などに、興奮しすぎた気持ちを落ち着けるために伸びをしたり、まるで気持ちを切り替えるスイッチのように、うまく伸びを使って自分の気持ちをコントロールしています。

一緒に遊んでいる時に、伸びをして遊びをやめてしまうことがあるかもしれませんが、そんな時は猫の気分を尊重してあげることが、円滑な猫付き合いの秘訣。無理に気を引こうとせず、猫の気持ちがまた遊びに向いた時に遊んであげましょう。飼い主との遊びが退屈だったわけではなく、ちょっと気分を切り替えたくなっただけなのですから。

無防備な伸びはリラックスの証

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

Africa Studio/Shutterstock.com

寝起きに伸びをする猫ですが、眠くなった時にも伸びをします。眠くなった時の伸びは、寝起きとは違い、全身の力をほぐすように隅々まで伸ばし、大きなあくびをします。表情も穏やかで、傍で撫でてあげるとそのまま眠りについてしまうことも。このような伸びをしているときは、心身共にリラックスしている証拠。飼い主の足元にすりすりしながら伸びをしたり、リビングでのびのびしながら過ごしていたり。飼い主に心を開き、環境にも満足しているからこそ見せる、可愛らしい仕草に思わず幸せを感じてしまいますね。

また、眠気のアピールでもあるこの伸び。寝室で一緒に眠る習慣のある猫が、物言いたげに伸びをアピールしてきたら「ベッドに行こうよ」のサインです。機嫌を損ねないうちに寝室へ連れて行ってあげましょう。

どこまで伸びる?猫の体

動物,犬,猫,しつけ,飼い方,育て方,病気,健康

Maria D/Shutterstock.com

インターネットやSNSでよく見かけるながーい猫の写真。ユーモラスな姿に、思わずにんまりしてしまいます。寝ている状態で前足と後ろ足を上下に伸ばしてみると、人間では考えられないほど体長が長くなります。なぜあんなに体が伸びるのか。その秘密は、猫の骨格構造にあります。

人間の骨は約200個からなるパーツで出来上がっています。それに比べ、猫の骨格は約240個。ただでさえ人と比べて小さな体なのに、人間を上回る骨の数で構成されているとは驚きですよね。そのため、柔軟に動きを調整することができるわけです。さらに、関節がやわらかく関節間もよく伸びるため、元の体長の約2倍伸びることができるといわれています。内臓も、体の伸び縮みに合わせて移動しやすくできており、皮膚の十分なたるみも体が伸びるのを邪魔しません。まさに、伸びやすく進化した体のつくりといえるでしょう。

猫が伸びるのは、その時々で意味がある、体と心のサインであることがわかりましたね。表情や状況をふまえて猫の気持ちを考えてあげると、より良い関係づくりに役立つのではないでしょうか。

内容について報告する