『黒船屋』や『立田姫』などで知られる美人画の巨匠・竹久夢二のふるさと岡山県にある「夢二郷土美術館」で昨年12月、一匹の黒猫が「お庭番」に任命されました。
その名も黑の助(推定8ヶ月♂)。
8月の終わり頃、まだ手のひらに乗るぐらい小さな黒猫が、雨が降る交差点の真ん中で轢かれかけていたのを、職員さんが保護。
里親を探すも見つからず、それならばと、館長が黑の助君に美術館の「お庭番」の役目を与えることを決断しました。
黑の助君は天候などにより出勤しない日もあるので、夢二郷土美術館TwitterなどのSNSでチェックしてください!(写真提供・猫星)
「夢二郷土美術館と黑の助の間には不思議な縁があったんです」と話すのは、館長代理・学芸員の小嶋ひろみさん。
「まず、黑の助を保護した日は夢二の命日(9月1日)の数日前だったんです。そして、びしょ濡れダニだらけの黑の助を洗うと、どこか見覚えがありました。当館が版木を所蔵する夢二作品のうち、猫に関する35図を木版画におこして制作された豆本『猫』の赤いリボンをつけた黒猫に、目の色までソックリでした」。
偶然がもうひとつ。お庭番就任の12月24日は、初代館長の命日だったそうです(写真提供・猫星)
さらに「じつは館長・小嶋光信は、あの『たま駅長』を任命した人物です。館長は以前、夢二の絵から猫の魅力と人を癒す力を再認識し、それが『たま駅長』の誕生へと繋がったという経緯がありました。そのときの“役目があれば猫も人も楽しく幸せになる”という実感から『お庭番』という役目が黑の助に与えられたのです」。
「黑の助を通して子どもたちが夢二芸術に触れて、日本のアートに興味を持ってくれたら」と小嶋館長。
その効果はさっそく表れているとか。
「黑の助が来てから、お子さんや家族連れが確実に増えました。遊んでもらえて黑の助も楽しそうです。私たち学芸員も密に黑の助と接することで『夢二は本当に猫が好きで、よく観察して描いていたのだな』とより理解が深まりました」。
立派な名刺も持っています
役目と安住の地を得た黑の助君は、アートへの興味と理解に大きく貢献しているのです。
夢二郷土美術館本館
岡山県岡山市中区浜2-1-32
TEL 086-271-1000
開館時間/9:00~17:00(入館は 30分前まで)
休館日/月曜、 年末年始
http://yumeji-art-museum.com
Twitter:@YumejiArtMuseum
取材・菅野治