Shi-Ba
【ぷりぷりの尻はかわいいだけの部位ではないのだ】尻は口ほどにモノを言う!?

【ぷりぷりの尻はかわいいだけの部位ではないのだ】尻は口ほどにモノを言う!?

柴犬の展覧会とかでは表情とか体型ほどには注目されない“尻”。でも、柴尻は探求すればするほど、なかなか奥深いもの。古今の尻に関する諺や慣用句が意外と現代の柴犬の気分を表すところがあったりするのです。(Shi-Ba 2017年9月号 Vol.96より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
  • 更新日:

お前の尻が何を考えてるかはまるっとお見通しだ!!

調べてみると「尻」に関する慣用句とか諺って意外と多いもの。けど、それを「特集」にしようって安直さ、編集部よ、ちょっと尻軽すぎねーか?

しかし、これだけの数の尻に関する言葉があるってことは、それだけ尻は体の中でも表現力豊かな部位ってことでは? あるいは、顔と同じくらいに意思を伝達したり、相手の意思を察したりすることが可能な部位なのかも。

共通言語を持たない犬と人は、その表情で互いの感情を読みとる。尻が顔と同じくらいに感情豊かなところであるならば、顔色だけに注目してもいられない。「顔色」じゃなくて「尻色」をうかがうというか……もう少し犬の尻にも注目してみるべきかも。犬はパンツ履いてないだけに、何か後ろめたいことを隠そうとして、必死で無表情を装っても、その尻見ればすべてお見通し。

さて、犬の尻が語る感情をよく知るための第一歩として、まずは古今の尻慣用句や尻諺に注目してみながら、各お宅の尻エピソードを拝見~!

「どやっ」 「私たち(コーギー)の方が美尻犬で有名なのに……」 「知らないのかな」

「どやっ」
「私たち(コーギー)の方が美尻犬で有名なのに……」
「知らないのかな」

[尻DATA1]

千葉県/齋藤がく(オス・5歳)

千葉県/齋藤がく(オス・5歳)

まあ、犬の生涯も山あり谷ありっすよ

理由あって最近お引っ越しして齋藤家で暮らすようになったがく。幸い先住犬の2頭のコーギーとも仲良くなって……これも、尻寄せあうも何かの縁ってやつ!?

同居犬に負けじと美尻カットにも挑戦

「がくは、もともと実家で飼われていたんですけど、事情があって2ヶ月前にうちで引き取ったんです」と、言う齋藤さん。先住犬である2匹のコーギーともすぐに打ち解けて、今ではカートにも一緒に入る尻触れ合う仲。新しい環境にもすっかり馴染んでいる様子だ。でも、「最初は私たちが戸惑いましたね。コーギーを飼っていたから犬のことはわかってるつもりだったんですけど、陽気で積極的なコーギーとは大違い。ドッグランに連れていっても、ぜんぜん走らなくて。他の犬とも遊ぶこともなく、離れてこそこそひとり遊びしてる感じでしたね」

最初の頃は、人見知りで消極的だったがく。だけど、天真爛漫な同居犬に感化されちゃったのか、今ではドッグランも大好きに。人見尻……いやいや、人見知りしなくなったという。あと、自慢のお尻は、ペットサロンでキレイにカット。美尻自慢のコーギーと張りあってる?

ドッグランにて尻を叩かれる

【解説】
まあ、叱咤激励ってことっすね
「尻を叩く」とは、やる気を起こすように促したり、急きたてたりするという意味がある。「尻を蹴飛ばす」なんて激しい別バージョンも。

だからぁ尻は撮るなって!!

だからぁ尻は撮るなって!!

何事も積極性に欠けたとこがある柴犬は、飼い主さんから、尻を叩かれることがしばしば。がくも例外にもれず、ドッグランでもマイペース。

え~、走るの? 面倒臭ぇ

え~、走るの? 面倒臭ぇ

あ、なんだかお腹が……

あ、なんだかお腹が……

尻への刺激で腸が活性化か?

尻への刺激で腸が活性化か?

ドッグランに着いてもがくは隅っこに座り込み。飼い主さんががくの尻を叩いて遊ばせようとしたのだがお尻への刺激が便意を促しちゃったようで……。

尻を据えてゴハン食う

【解説】
気合入れて飯食う時がこんな感じ
本気で物事に取り組む姿勢を「尻を据えて◯◯に打ち込む」ってな言いをする。「腰を据える」とも言うけど。

尻を突き出しゴハン中

尻を突き出しゴハン中

みんなで仲良く

「食べ終わった」 「おいらはじっくり」

「食べ終わった」
「おいらはじっくり」

「味わって食べるタイプっす」 「居残りお疲れ~」

「味わって食べるタイプっす」
「居残りお疲れ~」

一心不乱に食事する姿は、たしかに尻を据えてかかってるってな感じ。でも、あまり食事にばかり没頭してるとオヤツを同居犬に奪われるから、ほどほどに。

美尻犬(コーギー)と尻を並べる!?

【解説】
美尻比べしてるワケではない
対等の関係を「肩を並べる」と言う。仲良く尻を並べて座ってるのも、まあ、そういった対等関係ということで。

「とりあえず集合してみたけど」 「期待した目で見られても……」 「何か貰えるわけではないのか?」 「気安く呼ばないでもらっていーっすか?」

「とりあえず集合してみたけど」
「期待した目で見られても……」
「何か貰えるわけではないのか?」
「気安く呼ばないでもらっていーっすか?」

2匹の先住犬に挟まれても気にすることなく、がくは仲良く尻を並べて座ってる。いい関係が築けてるようだ。

[尻DATA2]

千葉県 / 服部はな(メス・5歳)

千葉県 / 服部はな(メス・5歳)

ワタシ、活発系女子です

お子様たちは独立してご主人と奥さん、はなの3人暮らし。広いリビングも、今でははなの専用ルームに……ご夫婦はまるで1人娘のように、はなを溺愛してるご様子。

ご夫婦にとってはつき合いのよい尻軽犬!?

奥様の恵子さんは大の旅好きで、1人と1匹で泊りがけで旅行に行ったこともあるほど。平日に1人ではなを連れてドライブもよくするそう。「はなは車酔いしないし、長距離ドライブが大好きなんですよ」

また、ボールを持って遊びに誘えば、寝ていてもガバっと起きて大はしゃぎ。旅行でもボール遊びでも、付き合いがいいのだ。ということで、いい意味で「尻軽」ではある。

ただし、遊びに関しては……飽きるのも早い。「早く投げて!」と催促しておきながら、突然、飽きてプイッと横向き知らん顔。はなの要求に従ってボールを手に投げる気満々だったご主人は、「尻切れトンボな感じだなぁ」と、困り顔。まあ、気まぐれなところだってかわいいに決まってる。

お父さん、目尻が下ってますよ。惚れた弱みってやつですな。でも、あんまりデレデレしてると、ちゃっかり者の柴犬に、「尻の毛まで抜かれちゃう」こともあるからご用心されたし。

そして、高見の尻見物……!?

【解説】
我関せずっていうことか!?
安全圏にいて騒ぎを傍観することを「高みの見物」。尻向けてそれやられると、なすすべありません……。

この冷たさがキモチ良いな~

この冷たさがキモチ良いな~

撮影に必死なカメラマンを完全無視。「こっち向いて」というスタッフの呼びかけにも「尻(しり)ません」ってな感じで、我関せず。

嫌な時はやっぱり尻が重い

【解説】
尻が重くなる理由って?
一般的には「尻が重い」とは、身軽に動けない、動作が鈍いってな人のことをいう言葉。犬の場合、イヤなことがある時に発動する。

なんかくれるまで動きません

なんかくれるまで動きません

散歩中に頑として動かなくなる時がある。その尻の重さには、理由あり。その先には大嫌いな動物病院があるのだ。

まだまだ尻が青いのだ

【解説】
柴犬にも蒙古斑あるのかね!?
子供っぽいことしてると「尻が青いな」と言うのは、日本人を含むモンゴル系の赤ん坊にできる蒙古斑に由来してる。

わたくしのコレクション、見る?

わたくしのコレクション、見る?

ワォ~ンと遊びを要求してみる

ワォ~ンと遊びを要求してみる

でも、そのオモチャはもう飽きたかも

でも、そのオモチャはもう飽きたかも

成犬になってもオモチャが大好き。まだまだ尻が青いなぁ……ってな感じ。はなの場合は、かわいいオモチャが大好きなのだとか。まあ、女のコらしくていいんじゃないの?

お父さんの尻に付きますっ

【解説】
人と犬では意味合いが違う
媚びへつらうのを「尻に付く」と、人にとってはよい表現ではない。けど、これが犬なら忠犬ってことでほめ言葉。

「よーし、今日は走るか」 「はい、ついて行きます! キリッ!!」

「よーし、今日は走るか」
「はい、ついて行きます! キリッ!!」

はなは何事でも、お父さんにはおとなしく従うという。散歩中も、お父さんの少し後について歩くあたりは……まさしく、お父さんの「尻に付いてる」といった感じ。

「はい、足」 「あ、足を拭くのですね はい、解りました」

「はい、足」
「あ、足を拭くのですね はい、解りました」

「お母さんじゃもの足りないの」 「旅行にも連れてってるのに……」

「お母さんじゃもの足りないの」
「旅行にも連れてってるのに……」

父の目尻が下がる下がる

【解説】
やっぱり目尻は下がるもの
デレデレした態度を「目尻を下げる」というけど、これには「好色そうな表情になる」って意味もあるのだとか。

「今日も目尻が下がりそーな予感」 「ワタシもそー思います」

「今日も目尻が下がりそーな予感」
「ワタシもそー思います」

「うへへへはなちゃ~ん」 「いつもよりいっぱい下がってますよ」

「うへへへはなちゃ~ん」
「いつもよりいっぱい下がってますよ」

甘えてくると、お父さんは人目もはばからず「はなちゃ~ん」とデレデレ。その目尻に注目してみると……たしかに、普段よりも下がってる。まさしく、慣用句の通りだね。

[尻DATA3]

茨城県/河野すず(メス・1歳)

茨城県/河野すず(メス・1歳)

雨ニモ負ケズ
雪ニモ負ケズっす

すずは散歩が大好き。フレンドリーな犬なので、散歩中に出会う犬には、自ら積極的に挨拶に。お尻をクンクン嗅ぎあう犬同士の挨拶も、最近は上手くできるようになった。雨や雪が降って家族が尻込みしてると「何やってるの早く散歩行くよ」と、すずに尻を叩かれるのだとか。

車酔いは想定外だったけど

ご主人の鉄也さんの趣味はサーフィン。ご家族も海やアウトドアで遊ぶことが大好きだ。自宅から車で30分も走らない場所に海があり、週末にはよく出かけるそう。「犬がいれば、もっと楽しいだろうなぁ」と、愛犬と一緒に渚を走ることを夢見ていたという。すずが家族の一員となり、これで夢も叶うと思いきや、「すずは車が苦手で、5分も乗ってたらもう酔って大変なんです」

今では車に乗せようとしただけで、思いっ切り尻込みしてしまうのだ。これでは海に連れて行くのはちょっと無理。鉄也さんの夢は潰えた。けど、「海には行けないけど、近所で一緒に遊べるし、妻や子供たちも、すずが来てから楽しそうだから、やっぱり、飼って良かったです」

なかでも、すずが来てから一番楽しそうなのは長男の降人くん。学校から帰ってくると、いつも一緒に戯れ合っている。犬と人も相性ってのがあるらしいから、いい出会いだったのだろう。知り(尻)合えて良かったね。

男性陣は尻に敷かれている

【解説】
今時は主従関係が逆転!?
妻が夫を意のままに従わせることを「亭主を尻に敷く」という。今時は男女関係だけじゃなく、犬との関係もそういったのが多いようで。

「尻に敷いてるというよりも足で踏んづけてねーか?」 「あの……最近、重くなってますよ」 「そんなハズないでしょ!!」

「尻に敷いてるというよりも足で踏んづけてねーか?」
「あの……最近、重くなってますよ」
「そんなハズないでしょ!!」

すずに出会った瞬間「飼おう!」と家族の総意で即決。ひと目惚れってやつ。やっぱ、惚れた弱みってのもあるのだろう。尻に敷かれて嬉しそうだったりする。

一方で……

「ママ、座りま~す」 「クッション扱いですか?」

「ママ、座りま~す」
「クッション扱いですか?」

大甘な男連中を尻に敷いてるすずだけど、しつけに厳しいママが相手だと、そういうワケにはいかない。強者にはその尻に敷かれて従う。処世術としては、これが正しい。

あんなことやこんなことで尻子玉を抜かれる~

【解説】
ところで……尻子玉って何?
尻子玉は尻の付近にある魂のようなもので、これを喪失すると人は死ぬ。昔の子供は「カッパに尻子玉抜かれるぞ」と大人に脅された。

「すりすり う~んキモチ良い」 「愛情表現ハンパない……」

「すりすり う~んキモチ良い」
「愛情表現ハンパない……」

「うりゃ~河童だぞ~!!」 「将来キミに彼女できたらこの写真見せちゃる。」

「うりゃ~河童だぞ~!!」
「将来キミに彼女できたらこの写真見せちゃる。」

「散歩はいいけど足拭きは嫌です」 「楽あれば苦ありってヤツだよね」

「散歩はいいけど足拭きは嫌です」
「楽あれば苦ありってヤツだよね」

降人くん、頭にお皿を乗せたカッパの扮装で熱演。ふたりで気合入れて戯れてるうちに、すずは疲れたのか放心状態。あと、足拭きもキライ。尻子玉抜かれるって、こういう感じなのだろか?

ボール遊びも散歩も尻が軽~い

【解説】
好きなことなら当然こうなる
「尻が軽い」は「尻が重い」の対義語。素早く物事を始め、軽快に動く様をいう。だが、軽率な行動とか、浮気っぽいヤツとか悪い意味に使われることも。

ボールが遅い もっと鍛えとけ!!

ボールが遅い
もっと鍛えとけ!!

「尻軽ならボクも負けちゃいねーぞ」 「まあ……あんまり自慢にゃなんないけどね」

「尻軽ならボクも負けちゃいねーぞ」
「まあ……あんまり自慢にゃなんないけどね」

つき合いの良いすずは、「遊ぶんすか?」といつでもやる気満々。気合入り過ぎて、ボールを投げる前から走りだして……見失ってしまうこともよくある。

女子のたしなみ尻は1日にしてならず

【解説】
楽してなれたらいいのだが……
「ローマは1日して成らず」と、700年を費やした長い苦難の歴史が、ローマ帝国の繁栄をつくりあげた。人が羨むほどの美尻になるには、日々の弛まぬ努力が必要ってこと。

美尻コンテストってあるといいよなー

美尻コンテストってあるといいよなー

せっかく努力して美尻になっても、人間の場合はそう簡単に人前じゃ見せられず。結局、宝の持ち腐れみたいな。堂々と美尻をアピールして散歩できる犬に生まれて、良かったな~、とか思ったりもする。

【まとめ】犬にとっては人間以上にお尻が大切!?

人間同士だと、相手にお尻向けるってのは失礼な行為にとられることが多々あり。けど、犬が人に尻を向けてるのは、べつに無視したりナメた態度をとってるわけではない。むしろ、信頼の証だったりもする。尻を向けるのは無防備な状態だけに、確かに信用してなきゃできないわな。
尻を向けるという行為も、人と犬とでは意味合いがかなり違ってそうだ。

また、犬同士の挨拶は尻の臭いを嗅ぎ合うもの。尻はコミュニケーションの道具でもある。絶対に尻の臭い嗅がせまいと逃げまわるよーな、ケチ臭い態度をとってると「尻の穴の小さいヤツだな」と、犬仲間にディスられるかも。

「ボクの尻のにおい、嗅ぐ?」 「本当にやめてください」

「ボクの尻のにおい、嗅ぐ?」
「本当にやめてください」

こうして考えると、人間が考える以上に尻は犬にとって重用な場所。それだけに、犬語には我々人類よりもさらに豊富な尻慣用句や尻諺が存在するかもしれない。

Text:Makoto Aoyama
Photos:Michio Hino、Miharu Saitoh

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