愛犬がいないからこそ柴犬の“ここ”が見えてくる ここ柴さんの“ここ”が好き
現在、柴犬飼いの間で話題の「ここ柴」さんをご存知だろうか? インスタグラムをはじめとするSNSで、「柴犬のここが好き」シリーズのイラストを発信中。そのマニアックな視点とその原点に迫った。(Shi-Ba 2017年11月号 Vol.97より)
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愛犬の思い出から始まった「ここ柴」シリーズ
「ウチの犬、口はエノキみたいなにおいで、肉球は、やっぱりポップコーンのような香ばしいにおいでした」と明るい笑顔で愛犬の思い出を語ってくれたのは、「柴犬のここが好き」シリーズでイラストをインスタグラムに掲載中の、通称“ここ柴さん”。本名は西田万里子さんだ。
「柴犬のここが好き」シリーズは、写実的なイラスト描写と、思わず「ぷぷぷ」と笑ってしまうような柴犬らしい“ここ”を描いていることで、多くの柴犬好きの心を掴んでいる。インスタグラムのフォロワー数は現在1万6千人以上。原画展を開けば全国各地から、ファンが訪れる。
西田さんの愛犬 ハナ・ソラ
ハナとソラの実際の写真。左がハナで、右がソラ。ハナは丸顔、ソラは細めの顔だった。2匹の間の微妙な距離が柴犬らしい。
川の中を走り抜ける2匹。
シリーズ200「生まれてすぐはおいもさんみたいなところ」。モデルは西田さんの愛犬・ハナと子犬たち。
「柴犬って耳の横に小耳があるんです」と始まった取材当日の柴犬談義。
「耳の横に小さなふくらみがあって小耳みたいなんですよ。“小耳に挟む”ってココのことかな~って……」と嬉しそうに話してくれるマニアックなポイントは、柴犬の飼い主さんなら思わず「あるある」「そうかも」と思わせるところばかり。
シリーズ1「鼻の下のふにふに」。記念すべき、シリーズ1の作品。モデルは西田さんの愛犬・ソラ。
他にも『不安定な場所のはずなのに何故か落ち着いて座っている』『嬉しいと糸目になる』『欲しいものがあると穴が開くほど見つめている』など、「ここ柴」シリーズは、柴犬らしい“ここ”ばかりが集められているのだ。
シリーズ10「振り向いた時にチラッと見える白目」。困った表情の時とかに出る、白目ってかわいい。
そんなマニアックな「ここ柴」だが、どうやって始まったのだろうか。
「3年前に、亡くなった愛犬の好きなところを描いたのが始まりです。最初は、柴犬の画像見たさにインスタグラムで柴犬画像を検索していただけだったんです。でも、自分も何かしらの形で発信して“いいね”って言ってもらいたいなと思うようになって……」
シリーズ132「何気なく足を踏んでいるとこ」。踏んでいても全く気にしていない表情がポイント。
そう話してくれた西田さんの愛犬はハナ(メス・享年12歳)とソラ(オス・享年16歳)。実家で飼っていた柴犬だ。ハナが西田家にやってきたのは西田さんが8歳の頃。斜にかまえたタイプで、脱走癖があった。一緒に育ったこともあり、西田さんとは姉妹のような関係性だったとか。一方ソラは、おっとり優しいタイプ。ハナの実の子供で、お母さんであるハナの言うことをよく聞いていたそう。
シリーズ227「それ、直したほうがいいよ、のまま平気そうにしている」。
確かに、こんな子いる。
「ハナと私は一緒に育ちました。私は姉妹のように感じていたのに、ハナは2歳でお母さんになりました。なんだか、あっという間に抜かされてしまって、私が20歳になった頃は、もうハナはおばあちゃんで。なんでそんなに先に行っちゃうのかなあって思いましたね」と、愛犬の思い出を語ってくれる時の西田さんの表情はとても穏やか。
シリーズ600「目からビームをだす」。撮影時の最新作のこちら。フラッシュで撮影すると、なりがちなビーム。
「ハナとソラがいた頃って、SNSはないし、携帯で写真を撮る時代でもありませんでした。だからあまり写真が残っていないんです。写真がないから、私はハナとソラの好きだったところを文字とイラストで綴ってみようって思ったんです」と始まったのが「ここ柴」シリーズだった。
シリーズ100「大切な家族であるとこ」。モデルは西田家。ハナとソラがしっかりお食事に参加。
シリーズ①は、なんと柴犬の「鼻の下のふにふに」。イラストも、今よりもさらにピンポイントのものだ。
「最初に友人とのやりとりで見せてみたら好感触だったので思い切って投稿してみました」そうして始まり、そのシリーズはもう600を数える。
愛犬の“ここ”からそれぞれの柴犬の“ここ”へ
「ここ柴」のキャラクター、パンツインちゃん。西田さんが小学生の頃からこのキャラクターを描いていたというから驚き。最近では、自身のことでもある30代女子のあるあるをパンツインちゃんで描いている。
西田さんの記憶に残る、愛犬の“ここ”からスタートしたシリーズは、現在、インスタグラムに投稿されている柴犬の写真をイラストにして綴られるようになった。
「最初は愛犬の写真をもとにしていたのですが、限りがあったので、インスタグラムで柴犬の写真を検索して、ああ“ここ、ここ”と思ったものをイラストにするようになりました」
シリーズ300「ウチの子記念日があるとこ」。たまたま取材日は、ハナちゃんのウチの子記念日だった。
その“ここ”のポイントとは……。
「ハナとソラがいた時に感じていた“ここが好きだな~”という思い出が、インスタグラムにアップされている皆さんの写真を見ていると蘇ってくるんです」と西田さん。投稿した人への“共感”が西田さんのイラストとなり、そのイラストがさらに多くの“共感”を生んでいるのだ。
シリーズ365「365日好きなとこ」。365にかけた“ここ”。365日、なぜか楽しそうなのが柴犬なのだ。
しかし、先日SNSならではの問題が起こった。
「今まで描いたイラストをラインのスタンプにしていました。先日、著作権のことでご指導いただきました。私の勉強不足が原因であったため、これまでのやり方を見直すきっかけになりました。本当に反省しました」と西田さん。今後は、イラストにしてもよい写真には、固定のハッシュタグをつけて投稿してもらう形に落ち着いた。
シリーズ557「誰やねん」。思わず突っ込みたくなるほど顔を汚しているとこ。そうそう、あるある。
そういった紆余曲折を経ながらも、「ここ柴」シリーズは柴犬の飼い主さんや柴犬好きの間でどんどん浸透していっており、イベントなどにも呼ばれるようになった。
「年に一回、4月8日の“柴の日”にかけて鎌倉と京都で行われる“柴犬祭り”などイベントに呼んでもらえることもあって本当に嬉しいですね。また、昨年は初めて企画から携わったマルシェを開催することができました。柴犬さんとご主人さんが一緒に楽しめるイベントを自分たちの力で作れたということは、大きな思い出です」
シリーズ303「人間が盛り上がっているほど本犬は盛り上がっていないとこ」。何故か、反比例しがちなのが人間と犬のテンションだ。
西田さんの生活の中でも「ここ柴」としての活動が増え比重がどんどん大きくなっているという。
そのためなのか、愛犬だけの“ここ”だった最初の頃に比べると、視点が少しずつ変わってきたそう。
「最近では、現代の柴犬ならではの“ここ”を感じることが多くなりました。もしかしたら、今、自分の中に1番がいないからこそ、客観的にそれぞれの子たちの好きなところを見つけられるのかもしれません」
愛犬だけの“ここ”から、現代の柴犬やそれぞれの個性から“ここ”を見つけるようになったのだ。そんな西田さんに、もしかしたら天国にいるハナ・ソラの2匹から不満が出ているかも? でも、2匹ともご安心を。
「たくさんの柴犬さんを描くようにはなりましたが、やっぱりイラストを描くたびにハナとソラ2匹の思い出が反復されて、2匹への想いはより濃くなっています」と、愛犬への愛は変わらないご様子。
そんな“ここ柴さん”だが、いなくてはならない頼もしい助っ人がいる。それは“ここ柴の母”。イベント前になるとグッズを作るため、親子で何日間も作業に勤しむそう。そんな親子で考え、作られた柴犬グッズは「ここ柴バンダナ」をはじめ「柴レリーナブローチ」「ここ柴トート」などセンスが光る、柴犬ファンにはたまらない品ばかりだ。
柴レリーナのブローチ。一個一個スカートの柄が違う、完全1点もの。
ここ柴トート。「芝生カラー(キナリ×オリーブ)」と、「柴犬カラー(ベージュxブラック)」の2色展開。
最後に、今後の「柴犬のここが好き」が向かう先をお聞きしたところ、「シリーズ1000を目指したいですね」とのこと。“ここ柴さん”を支える、愛犬のハナ・ソラ、ここ柴の母の全面バックアップ体制は、これからもまだまだ続きそうだ。
ここ柴イラストができるまで
いつも西田さんがどのようにイラストを描いているのかちょこっと拝見!
1
インスタグラムで、柴犬画像をチェック。画像が決まったらイラストの製作開始!
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最初は鉛筆で下書きをする。ポイントは鼻から描くこと。全体のバランスをとるためにも絶対なのだそう。
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ボールペンで下書きをなぞる。ひげの小さな穴など、細かいところも描くのが西田さんのイラストの特徴。
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色付け。色鉛筆で優しく色付け。触りたくなるような立体感を表すことを目指している。
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撮影。基本的に携帯で全て行っている。スキャンにしてしまうと、思ったとおりの色味が出ないこともあるため写真派だ。
ここ柴情報
SNSをはじめ、イベントも開催予定の「ここ柴」情報をCHECK!
SNSではイラストを掲載、ミンネではグッズを販売中。イラストに関しては、イラスト描いてOK、原画展等展示OK、ラインスタンプ、ポストカード、グッズ等に使ってOK、の方は 「#ここ柴部」でハッシュタグをつけてインスタグラムで投稿してみよう。
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撮影協力 Dog café General store
「柴犬のここが好き」の原画展が7月17~24日で行われていた
住所:京都府京都市中京区 蛸薬師新町西入る不動町80番地
tel:075-257-3865
Text:Yoshimi Okada Photos:Minako Okuyama