【獣医師監修】アラスカン・マラミュートの特徴や性格、飼い方について

シベリアン・ハスキーとよく似ているといわれる大型犬、アラスカン・マラミュート。力強いカラダつきとゆるやかに巻いた尾が特徴のアラスカン・マラミュートは、その名の通りアラスカ原産の犬種で、シベリアン・ハスキーとはまったく異なるルーツを持っています。

  • サムネイル: PECO編集部
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監修:ヴァンケット動物病院 松原且季院長

アラスカン・マラミュートの歴史

アラスカン・マラミュートは、アメリカ・アラスカの北西部にあるセワードペニンシュラ地方を原産地とする犬種で、スピッツ系の血を引いています。マラミュート族(マールマット・イヌイット)によって飼育されてきたことから、この名がつきました。犬ぞりを引いたり、狩猟や漁業を手伝ったりして、古くから人間とともに生活していた犬です。

18世紀にアメリカ・ヨーロッパ系の人々がアラスカにやってくるまでは、ほかの犬種との交配が行われなかったため、純粋性が保たれていました。しかし、犬ぞりレースの流行に伴い、よりそりを引くのに適した犬を生み出すために様々な犬種との交配が行われたことで、純粋なアラスカン・マラミュートは個体数を激減させることになります。

その後、1920年頃に純粋なアラスカン・マラミュートが発見され、改めて品種を確立するための繁殖がスタートします。その結果、アラスカン・マラミュートは1935年に原産国アメリカのアメリカンケネルクラブに登録され、第二次世界大戦中は軍用犬として活躍しました。

アラスカン・マラミュートの特徴

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アラスカン・マラミュートは、中型犬のシベリアン・ハスキーとよく似た外見をしていますが、平均体重が21kg~28kgのシベリアン・ハスキーに対してアラスカン・マラミュートは39~56kgと、カラダの大きさが異なります。

大型犬種に分類されるアラスカン・マラミュートは、そり犬らしくがっちりとした筋肉質なカラダつきが特徴。四肢や肩もたくましく、外見からして力強い犬種です。オオカミのようなマーキングの入った大きな頭には三角形の立ち耳がついていて、アーモンド形の目は茶色。しっぽは垂れ尾のシベリアン・ハスキーと異なり、背中の方にゆるやかに巻いています。

また、アラスカン・マラミュートの被毛は厚いダブルコートです。きめの粗いオーバーコート(上毛)と密度の高い羊毛のようなアンダーコート(下毛)を持ち、毛の色はライトグレーからブラック、セーブルやレッドなど、多彩なカラーが認められています。

アラスカン・マラミュートの性格と上手な付き合い方

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そり犬や狩猟犬として活躍していたアラスカン・マラミュートは、人間の作業を手伝うことに適した体格と、疲れを知らない体力の持ち主です。力強さと耐久力に優れた犬種なので、犬そりレースの種目としては、速く走るレースよりも重い荷物を引くレース(ウェイトプル)の方が向いています。

アラスカン・マラミュートは愛情深く友好的な性格が特徴です。飼い主とその家族に忠実で献身的なため、しっかりと信頼関係を築くことができれば、よき人生のパートナーになってくれるでしょう。しかし、その一方で自立心が強い面もあり、納得できないことには従わない頑固さをみせます。

たくさんの仲間とそりを引く仕事をしていたアラスカン・マラミュートは協調性に優れ、一緒に暮らすほかの動物とも仲良くできます。しかし、見知らぬ人や犬に対しては、攻撃的な一面をみせる場合があるので注意してください。

アラスカン・マラミュートと長く快適に暮らすためのヒント

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アラスカン・マラミュートとの共同生活で大変なのは、被毛のお手入れです。アラスカの厳しい気候に耐えるため、数ある犬種の中でもとくに分厚いダブルコートを持つアラスカン・マラミュートの抜け毛の量は、大型犬の中でトップクラス。春と秋の換毛期はもちろん、一年を通して大量の毛が抜けるため、毎日のブラッシングが欠かせません。

保温性抜群のアンダーコートは蒸れやすく、お手入れを怠ると体臭が強くなってしまったり、被毛がフェルトのようにゴワゴワになってしまったりする場合があります。また、大量の抜け毛により被毛の通気性が悪化することで、皮膚トラブルを発症するリスクが高まります。愛犬の健康を守るためにも、スリッカーブラシやコームを使用して、しっかりと抜け毛を取り除いてあげましょう。

また、アラスカン・マラミュートは寒さに強く暑さに弱い犬種なので、暑さ対策は必須です。日本では室内飼いを徹底し、とくに夏場はエアコンの効いた環境で過ごさせてください。そのほか、いつでも水分補給を行えるように新鮮な飲み水を用意しておく、散歩は涼しい早朝や夜に行うなど、アラスカン・マラミュートが快適に過ごせる環境づくりに努めましょう。

重いそりを引く仕事をしていたアラスカン・マラミュートは体力があるため、毎日十分な運動をさせてあげる必要があります。運動不足によるストレスは、無駄吠えなどの問題行動につながるおそれがあります。朝晩2回、1日2時間程度の散歩に加え、時にはドッグランなど安全に遊べる広い場所に連れて行ってあげるとよいでしょう。

アラスカン・マラミュートがかかりやすい病気としては、遺伝性の股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)や白内障などの目の病気、高温多湿の環境を原因とする熱中症や皮膚疾患などが挙げられます。また、胸が深い大型犬によくみられる胃捻転(いねんてん)のリスクも高いため、なるべく消化のよいフードを与えるとともに、食後の激しい運動は控えましょう。

力強さとやさしさを併せ持った大型犬、アラスカン・マラミュートを家族に迎える場合は、これらの特徴をしっかりと理解し、最適な飼育環境を整えてあげてください。

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