「さくらねこ活動」は、公益財団法人どうぶつ基金が行っている動物愛護活動のひとつ。飼い主のいない猫に不妊手術を実施し、繁殖を防止して、地域猫として一代限りの猫生を全うさせようとする尊い活動だ。「さくらねこ」とは、猫の耳先を桜の花びらのようにV字にカットし、不妊手術済の印とすることから名づけられた。
山口先生は「真の殺処分0社会」を目指し、全国で出張不妊手術を実施する
通常の活動は、協力する獣医師が全国各地に出向いて出張手術を行うスタイルだが、鹿児島県・奄美大島においては2018年8月15日、奄美市内に無料不妊手術専門の「あまみのさくらねこ病院」を開院し、飼い主不明の猫のTNR(Trap/捕獲し、Neuter/不妊手術を行い、Return/もとの場所に戻す)を集中的に行っている。
獣医師の足立先生(左)と齊藤先生。猫に手早く不妊手術を施す
このプロジェクトの背景にあるのが、環境省による「ノネコ管理計画」。世界遺産登録を目指す島には、特別天然記念物に指定されているアマミノクロウサギなどの希少動物が生息し、これを野生化した猫=ノネコが捕食するため、ノネコを捕獲後、1週間以内に譲渡先が決まらなければ殺処分するというものだ。
小学生が見学に来院。足立先生と佐上理事長(右)も笑顔で歓迎
どうぶつ基金は、不妊手術・里親探しを並行して行い、殺処分を減らし、希少種の保護の実現に向け、1日50頭×年間200日稼働計算で、合計1万頭の飼い主のいない猫の不妊手術を目標にしている。開院以来、台風などの悪天候の日以外は、毎日のように地元住人やボランティアの手で捕獲された猫が運ばれ、手術を受けている。他に3種混合ワクチン接種やノミ駆除なども実施する。この活動では、プロジェクトリーダーで獣医師の足立萌美先生を中心に、山口獣医科病院院長の山口武雄先生、「mocoどうぶつ病院」院長の齊藤朋子先生も定期的に島を訪れ、協力している。
病院や一斉手術会場となる施設のない地域に赴いて一斉手術を行う移動手術車「さくらねこ号」
「山で暮らすノネコの発生源をたどると、もとは人に飼われていた飼い猫です。人里離れた場所で暮らし、人間にいじめられていない分、捕獲後、人に慣れるのも早く、世話をするうちにゴロゴロと喉を鳴らすようになります。罪のない猫の命を守り、希少種を保護するためには私たちの活動だけでなく、多くの人に『あまみのさくらねこ病院』の活動を知ってもらい、様々な形でご支援頂けることを切に願います」(どうぶつ基金理事長の佐上邦久さん)。
「あまみのさくらねこ活動を、遠くからでも協力したい」という人は、ぜひHPにアクセスを! 現地で活躍するボランティアも募集している。
公益財団法人どうぶつ基金
https://www.doubutukikin.or.jp
さくらねこサポーター
https://www.doubutukikin.or.jp/contribution3
あまみのさくらねこ病院
鹿児島県奄美市名瀬港町24-25
TEL 0797-57-1215 ※完全予約制
対象動物:野良猫(飼い主不明猫)、飼い猫(多頭飼育など理由がある場合)、保護猫 診療内容:不妊手術(3種混合ワクチン、ノミよけ薬込み)
費用:無料 ※受診方法・診療時間等の詳細については、どうぶつ基金のHPをご覧ください。
(文・西宮三代)
写真提供・公益財団法人どうぶつ基金