【獣医師監修】フレンチ・ブルドッグの性格や平均寿命は?飼い方、かかりやすい病気は?
鼻ぺちゃ顔と明るい性格のフレンチ・ブルドッグは、今や世界的に人気の犬種です。短頭種ならではの病気や皮膚トラブルに注意しながら、適切な飼い方をすれば、おちゃめなフレンチ・ブルドッグフレブルとの楽しい生活が送れることでしょう。
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フレンチ・ブルドッグの原産や歴史
フレンチという名のとおり原産国はフランスですが、そのルーツはイギリス。
1850年代に、イギリスの工業地帯で好んで飼育されていた10kg以下の小型のブルドッグを改良して作られたと言われています。
産業革命を発端に、イギリスからフランスへと渡ったレース職人が連れて行ったのが、そのトイ・ブルドッグでした。
フランスでさらに改良が進み、現在に近い姿へと変化を遂げると、トイ・ブルドッグはパリジャンを虜にする存在に。
その個性的な外貌は、ロートレックやドガなどの絵画にも好んで描かれるほどで、芸術家や作家にも愛される犬種になりました。
1885年、フランスのケネルクラブにフレンチ・ブルドッグとして登録されたのち、イギリスに逆輸入されました。
当初はイングリッシュ・ブルドッグとの交雑化が懸念されるなどして、イギリスでは歓迎されなかったフレンチ・ブルドッグ。
ところが、アメリカのドッグショーで紹介されるようになるとイギリスでも評価を得るようになり、イギリス王室でも愛好されるようになりました。
エドワード7世(在位1901~1910年)がフレンチ・ブルドッグを愛犬としていたことは、写真にも残っておりよく知られています。
フレンチ・ブルドッグの性格と特徴
フレンチ・ブルドッグの外観上の特徴は、なんといっても鼻ぺちゃ顔と、バットイヤー(こうもり耳)と呼ばれる大きな立ち耳、ウサギのしっぽのような短い尾ではないでしょうか。
成犬の標準的な体重は、10~14kg。筋肉質なボディを持っていますが、動きはしなやかです。
フレンチ・ブルドッグの性格は、一言で表現すれば明朗快活。飼い主さんと楽しいことをするのが大好きです。
ただし、フランスでは害獣駆除の役割を担うためにテリアの血が導入されたと伝わるとおり、さらに、イギリスではもともと闘犬系の血が入っていることもあり、興奮しやすい性格なのも事実。
多くはほかの犬にも人にも友好的ですが、気が強いフレンチ・ブルドッグフレブルも中にはいるので、愛犬の性格を見極めましょう。
小型犬だからと安心は禁物。
パワーがあるので、トレーニングやしつけは必須です。
ほかの犬に突進して重量のある頭突きでケガを負わせることなく、ソフトに遊べるように、子犬期の社会化はぜひ行いたいものです。
成犬になるまでに、興奮のコントロールを目的とした“待て”や“呼び戻し”なども、マスターしておきましょう。
もともと与えられた役割を考慮しても、吠えることは多くない犬種なので、その点ではマンションなど集合住宅などでも飼いやすく、一緒にお出かけをするにもぴったりだと言えるでしょう。
フレンチ・ブルドッグとの快適旅行の秘訣
フレンチ・ブルドッグは順応性が高く、誰とでもすぐに仲良くなってしまうようなタイプ。
どんなタイプの宿でも、おおらかに過ごしてくれることでしょう。
ただし、短毛種でも抜け毛が多いほうなので、なるべく洋服を持参して抜け毛の飛散を軽減させるようにしたいものです。
熱中症にかかりやすいので、春から秋にかけては、保冷剤やクールバンダナ、体を冷やせるタイプの洋服も必携。
夏期は搭乗できない航空会社もあるほど、暑さには弱い短頭種なので、夏は車でアクセスできる避暑地以外は旅行を控えたほうがよいでしょう。
フレンチ・ブルドッグの平均寿命は?
フレンチ・ブルドッグは、多くのペット保険で請求件数がトップ3に入るほど、他犬種に比べて病気をしがち。
巷では“10歳の壁”という言葉がささやかれ、呼吸器トラブルや悪性腫瘍などで長生きできないフレンチ・ブルドッグも少なくありません。
一方で、15歳のご長寿もいます。
10~13歳が、平均寿命と考えられます。
フレンチ・ブルドッグのかかりやすい病気
短頭種気道症候群
短頭種であるフレンチ・ブルドッグは、鼻から気管の入口である喉頭にかけての気道が狭いという生まれつきの身体的特徴を備えています。
そのために引き起こされる、短頭種気道症候群には要注意。
軟口蓋過長症、外鼻孔狭窄、喉頭虚脱、気管低形成などが単独または複数で起こるのが、短頭種気道症候群です。
愛犬が子犬の頃から、呼吸をする際に音がしたり、いびきがあったり、口を開けて荒い呼吸をすることが多かったりしたら、早めに獣医師に相談を。
最近は、避妊・去勢手術の際に、軟口蓋過長症と外鼻孔狭窄を治療するための手術を行うケースも増えています。
老犬になると、呼吸器周辺の筋肉が衰えてきて、病状が悪化することに加えて、手術のリスクも高くなります。
呼吸器の疾患は自然治癒はしないため、獣医師と相談のうえ手術を決断した場合、2~3歳までに実施するのが理想的です。
日常生活では、呼吸器への負担を減らすために首輪ではなくハーネスを使って散歩するのがベスト。
皮膚疾患
フレンチ・ブルドッグは、アレルギー性皮膚炎や膿皮症などを生じやすい犬種です。
食物アレルギーや、生活環境のハウスダストや室内ダニなどが原因で皮膚炎になるフレンチ・ブルドッグがめずらしくありません。
動物病院を受診すると、アレルゲンを特定したのち、食事療法や対症療法を選択することになるでしょう。
膿皮症は、ブドウ球菌の細菌感染で起こる皮膚炎。
赤いブツブツとした発疹が出現したのち、発疹がドーナツ状に拡がって、その周囲にフケが見られることもあります。
痒みをともなうので、愛犬が掻き壊すと2次感染を起こす恐れもあります。
抗菌作用のあるシャンプー療法を行いつつ、抗生物質を投与するのが一般的な治療法です。
皮膚トラブル予防のため、フレンチ・ブルドッグのシャンプー後は、保湿も重要になります。
椎間板ヘルニア
フレンチ・ブルドッグは、椎間板ヘルニアを発症しやすい犬種のひとつ。
椎間板が脊髄に向かって飛び出した状態が、椎間板ヘルニアです。
脊髄が圧迫されると激しい痛みを感じるので、抱き上げると悲鳴を上げたり、運動をしたがらなくなるといった症状で、飼い主さんは気づくかもしれません。
重症になると、後肢に力が入らずに歩行困難に陥ることも。そのような重症例では、深部痛覚を失う前に、脊髄の減圧を行う外科手術を行う必要があります。
軽症のケースでは、数週間の安静と、疼痛と炎症を軽減させるためのステロイドの投薬による温存療法が選択されるでしょう。
最初の発症は3~6歳までが多いと言われます。
加齢にともない、椎間板が変性を起こして発症する例も見られます。
いずれにしても、椎間板ヘルニアが疑われたら、早期に動物病院を受診してください。
外耳炎
フレンチ・ブルドッグは垂れ耳ではありませんが、外耳炎が発症しやすい犬種です。
原因は、食事性アレルギーやアトピー体質によるものが少なくありません。
その場合、根本的な治療が必要になります。
通常の治療は、点耳薬で行います。
マラセチアなどの真菌やブドウ球菌などの細菌が耳道内に増殖していた場合は、抗生物質や抗真菌剤も用います。
高温多湿の環境で外耳炎が発症しやすくなるので、熱中症の予防も含めて、フレンチ・ブルドッグフレブルとの生活では夏は冷房を活用して、高温多湿の環境を避けるようにしましょう。
悪性腫瘍(がん)
若齢からの肥満細胞腫、悪性リンパ腫などのがんに、他犬種よりもフレンチ・ブルドッグはかかりやすいことが知られています。
悪性腫瘍の早期発見のために、フレンチ・ブルドッグとの暮らしをスタートしたら定期的に超音波検査も含めた定期健診を受けるようにしたいものです。
フレンチ・ブルドッグの価格相場は?
フレンチ・ブルドッグの価格は20~50万円ほどです。
遺伝病などに関する管理がしっかりしている、優良なブリーダーのもとで生まれた子犬を探して迎えるのをおすすめします。
まとめ
ファニーフェイスが魅力的なフレンチ・ブルドッグ。
吠えにくく、順応性も高いので一緒に旅行をするにもぴったりの犬種です。
ただし、短頭種ゆえに熱中症になりやすいので、夏の旅行は避暑地を選んで、愛犬も笑顔満開になるような楽しい思い出をたくさん作ってみてくださいね!
監修者情報
箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科
ライタープロフィール
臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。
コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally