【愛犬のためにしていたあんなこと、こんなこと】実は犬にとって大迷惑!?
かわいい愛犬のために、いろいろなことをしてあげたくなってしまいますが、実はそれ、犬にとっては“大迷惑”かもしれません! 飼い主がさんがしてしまいがちな行動は、犬目線で見てみるとどう感じるのか、鹿野先生に伺いました。(MY♡DOG Autumn 2020 Vol.4より)
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教えてくれる人
鹿野正顕(かのまさあき)先生
「スタディ・ドッグ・スクール」(神奈川県相模原市)代表。麻布大学介在動物研究室(旧・動物人間関係学研究室)で人と犬の関係学を研究。この分野では、日本で初めての博士号を取得している
頭や顔を上から激しくなでないで!
ジルちゃん(メス・6カ月/トイ・プードル)
上から触れられたりなでられたりするのが苦手。また、近いと焦点が合いづらいため脅威に感じます
犬は真正面や上から近づかれると威圧感や圧迫感を覚えてしまいます。また、犬は、近くのものに焦点を合わせることが難しく、100cm以内のものははっきりと見えていないようです。そのため、ぼやけて見えて距離感がつかみづらいので、不安になってしまうんです。犬がなでてほしいタイミングや場所に気をつけてスキンシップをしましょう。ちなみに、顔を手の下や足の間に入れてくるときは、なでてほしいサイン。犬にも幸せホルモン・オキシトシンが分泌されるので、ぜひたくさんなでてあげて。
【ADVICE 01】犬の好きな部分をなでよう
一般的に犬が好む背中、胸、脇腹を、リラックスしているときに毛並みに沿ってやさしくなでるとよいでしょう。ワシャワシャと激しく触るのは、遊びでテンションを上げたいときだけにすると◎。
【POINT!】
気持ちがいいと目を細めるので、様子を見ながらなでましょう
無理やり抱っこされるのが嫌い!
柔(やわら)ちゃん(メス・12才/スタンダード・プードル)
拘束されると不安に感じるもの。意図していないときの抱っこはストレスに
人に抱かれると行動が制限されるため、犬は不安に感じてしまうもの。また、動物病院での診療や爪切り、トリミングなどの犬にとっては嫌なことをされるときに抱っこされる機会が多く、より嫌いになっていることが多いです。実際、ランダムに集められた250枚の“人に抱かれた犬の写真”を調査した結果では、犬が不安の兆候を見せているものが8割にも達しています。しかし、自発的に抱かれるのは好きなので、犬の気持ちを確認してから抱きましょう。
【ADVICE 02】抱っこは横からしてあげよう
犬の大きさによって抱っこの仕方は変わりますが、小型犬でも大型犬でも横から抱っこしてあげるのが基本。間違った抱き方をすると、犬に不安を与えるだけでなく体に負担をかけるので気をつけましょう。
NG
小型犬にやりがちな脇の下に手を入れ持ち上げる方法。腰に負担がかかり危険です
NG
縦に抱っこすると、腰に体重がかかり、体に負担が多い姿勢になってしまいます
体をくっつけるのは大好き
Elena Shvetsova/Shutterstock.com
飼い主さんの膝には乗りたいよ
Elena Shvetsova/Shutterstock.com
一日中ずーっとべったりは、構いすぎ!
はなちゃん(メス・1才/ミックス)
触れ合うことが大好きな犬は多いですが、犬種によってベタベタされるのが苦手なタイプも
犬は、人に慣れやすい子どもっぽい性格のオオカミ同士を掛け合わせて生み出されたと言われています。子どもっぽい性格ということは、触れ合いのある愛着行動が強くなる傾向があるということ。つまり、犬は愛玩犬を目的とした交配をされるほど、愛着行動が強くなります。逆にオオカミに近いとされる犬種は独立心が強く、構われすぎることを苦手に感じます。また、活動量が多い猟犬などはベタベタしているより、動いていたいタイプです。
【ADVICE 03】犬のタイプを見極めて接して
愛犬が構われるのが大好きなタイプか、それともひとりの時間も好きなタイプか犬種別にチェック。また、オスに比べメスのほうが愛着行動が強い傾向があるので、考慮するとよいでしょう。
構ってほしい(愛玩犬など)
・トイ・プードル
・ヨークシャー・テリア
・シー・ズー
・ミニチュア・シュナウザー
etc.…
Mokisworld/Shutterstock.com
構われるより動いていたい(テリアなど)
・ジャック・ラッセル・テリア
・ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
・ノーフォーク・テリア
etc.…
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必要以上に構われたくない(原始的な犬など)
・シベリアン・ハスキー
・柴
・秋田
・甲斐
etc.…
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犬の上に立とうとして厳しく叱りつけないで
ロロちゃん(メス・9カ月/ミニチュア・シュナウザー)
そもそも人と犬の間に上下関係はありません。オオカミにも明確なボスがいないことがわかっています
以前は、犬には、祖先のオオカミのように群れの中に序列があると考えられてきました。しかし、この考え方には科学的な根拠がありませんでした。そして、最新の研究では、オオカミの群れの中には明確なボスはおらず、家族のようなかかわりでつながっていることがわかってきました。犬は叱られても、人のように「自分が悪いことをした」「迷惑をかけた」というようには考えられません。ただ犬に恐怖を感じさせてしまうだけなので、気をつけましょう。
【ADVICE 04】強く叱らず、やさしく導こう
犬は、善悪の判断ができないので、人のようにモラルやルールなどを考えることができません。叱るのではなく、人の社会で生きるためのルールを守れるように、やさしく導いてあげることが大切です。
叱られたときの反応は 犬によって違います
だらだら長いだけのお散歩、物足りません!
若葉くん(オス・2才/秋田)
散歩の役割は2つの欲求を満たすこと。歩くだけではどちらも満たすことができません
散歩には、家の中とは違う刺激を受けたり、人や犬と交流したりすることで満足する“精神的な欲求”と、体を動かして発散する“身体的な欲求”を満たす役割があります。そのため、リードをつけて、人や自転車、車などが行き来するアスファルトの上を歩くだけでは、犬は十分に欲求を満たすことができないことがあります。また、かつては自然の中で生活していた犬は、アスファルトの上を歩くよりも土や草の上の探索をしたり、走り回ることを好みます。
【ADVICE 05】精神的な欲求を満たして
散歩中の歩行は移動と考え、公園やドッグランなどの目的地で体を動かすと、犬の満足度をアップさせることができますよ。自由に歩かせたり、走ったり、飼い主さんと遊んだりすることで犬も満たされます。
愛犬が喜ぶお散歩リスト
・山や海岸など普段行かない場所に行く
・広い公園で自由に散策させる
・土や芝生の上を歩かせる
・ロングリードを使っておもちゃで遊ぶ
・ドッグランで走る
・段差をまたいだり、ポールをジグザグによけて歩いたりして変化をつける
ドッグランで遊ぶときの注意
リードを外して思いっきり走り回れるドッグランは、愛犬にとって楽しい場所です。しかし、ドックランの面積に対してどのくらい犬がいると、犬はストレスを感じるのか、という研究は、まだされていません。密度が高いと犬もイライラしてしまうので、空いている時間を選ぶ、貸し切りの場所を利用するなど工夫が必要です。また、犬同士が遊んでいるときに目を放したり、放っておいたりしないで犬の様子をよく見ておくことを心がけて。犬同士のトラブルは突然起こることがあるので、とっさの介入が必要になることがあります。
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体が動きづらくなったからって、家に閉じ込めないで!
里都くん(オス・6カ月/ミニチュア・シュナウザー)
外に出ることは、犬にとってよい気分転換。歩けなくても精神的な欲求は満たせます!
加齢や怪我などで愛犬の体が動きづらくなると、かわいそうに思って家の中だけで過ごさせてしまう飼い主さんもいます。しかし、散歩には“精神的欲求”を満たす役割があります。普段とは違う刺激を受けたり、ほかの人や犬と交流を持ったりすることは、体が動きづらくなっても必要なこと。公園などに連れ出し、負担にならない程度に体を動かしましょう。また、日頃から運動させて筋力を鍛えておくことは、寝たきりの防止にもなりますよ。
【ADVICE 06】状態に合った外出の仕方を選ぼう
ポイントは、愛犬がどのくらい動けるか。ヘルニアなどで後ろ足が麻痺してしまっているなら犬用車イス、足腰の筋力が低下しているなら補助ハーネス、寝たきりならカートに乗せるなど、無理のない範囲で外出しましょう。
カート選びは耐荷重だけでなく、愛犬が中で寝られる十分なサイズなのかも重要。また、カートの深さと愛犬の大きさが合っていないと、飛び出しのリスクが高まります
PongMoji/Shutterstock.com
犬用車イスってどんなもの?
Susan Schmitz/Shutterstock.com
犬用の車イスは、加齢や怪我、病気などで足の力が弱まってきた犬の歩行をサポートするもの。少ない力でも歩けるようにサポートするタイプや体を起こせない犬を支えられるタイプ、後ろ足が完全に動かない犬にでも使えるタイプなどさまざまあり、愛犬の状態に合わせて選べます。オーダーメイドなら体のサイズや症状などに合わせて、ぴったりのものが作れますよ。
ヘルニアなどによって若くして後ろ足が動かなくなってしまった犬は、走り回れるようになってすごく喜びます!
犬同士を並ばせて食事をさせたり、寝床を一緒にしないで
ルーちゃん(メス・9カ月/ミニチュア・ピンシャー)
一般的には犬が好まないシチュエーション。攻撃行動に発展する可能性があります
並ばせてフードを与えたり、寝床を並べたり、共有させたりするのは、フードをめぐる食物関連性攻撃行動、場所をめぐる縄張り性攻撃行動に発展しやすくなります。特にフードは、安心して得られる状況をつくる必要があります。トラブルが起きてしまうと、犬同士が仲よくなることはもちろん、同じ部屋で過ごさせることすら難しくなってしまうでしょう。また、愛着行動が強い犬は一緒に寝ることもしますが、一頭になると分離不安になりやすくなるので注意が必要です。
【ADVICE 07】距離をとり安心できる環境づくりを!
フードをあげるときは部屋を分けるか、ケージやサークルなどを使って距離をとって。寝床は違う犬のものを使ったら自分のものを使うように誘導し、配慮してあげることが必要です。
部屋やケージなどで分けられない場合は、部屋の四隅を利用したり、パーテーションを設けて対策を
多頭飼いの×○(ウソ・ホント)
先住犬の問題行動が解決する
×
犬が増えることでお世話や悩みも増えるので、飼い主さんの余裕がなくなるかも。まずは先住犬のトラブルを解決しましょう。
犬種が同じだと飼いやすい
○
ただし、子犬を2頭同時に飼い始める、若い先住犬と年齢の近い犬を迎えるときは、双子のお母さんのように大変なので覚悟して。
同じ性別同士は多頭飼いに向いていない
○
一般的に、同性の組み合わせは異性の組み合わせに比べて、ケンカなどのトラブルが起こりやすいと言われているので注意が必要です。
兄弟や親子だと犬同士の依存性が高くなる
○
犬は母親、兄弟と離す時期が遅すぎると犬同士の絆が強くなりすぎ、それにより、人に対する社会性が持ちづらくなるとも言われています。
犬同士の友達を無理やりつくろうとしないで
若葉くん
ほかの犬が苦手なタイプだとトラウマになったり恐怖心からケンカに発展してしまうかも
愛犬がほかの犬に苦手意識を持っているタイプなら、無理にほかの犬と仲よくさせる必要はありません。ほかの犬と仲よくさせようとしたときに嫌なことがあると、その後散歩嫌いになったり、犬を見かけたら吠えるようになったりとトラブルが生じます。また、人が「戯れている」「遊んでいる」と思っても実際は違う場合も。追いかけっこをしているようで、実は狩猟本能から自分より小さい犬を追いかけていることもあるんですよ。
【ADVICE 08】犬を怖がるタイプは少しずつ克服を
ほかの犬と近くですれ違うと吠えてしまう愛犬は、距離をとって気をそらして慣れさせて、少しずつ克服を。犬がいるだけでも恐怖を感じてしまうタイプなら、専門家に相談するとよいでしょう。
犬が苦手でも大丈夫! 飼い主さんと絆を深めよう
愛犬がほかの犬と仲よくできないと「寂しくないのかな?」と心配になってしまう飼い主さんもいますが、気にすることはありません。飼い主さんと楽しい時間をたくさん過ごせば、犬は幸せなんですよ。また、犬によっては特定の相手なら大丈夫、という場合も。相性がよいコが見つかれば、多頭飼いも可能です。
テラスや窓の近くに居住場所を置かないで
ジルちゃん
外からの音が入りやすいと警戒心が強くなり、吠えの頻度が高まる可能性があります
外の景色が見え風通しのいい窓際やテラスは、サークルやクレートなどの犬の居住場所を設置しがちな場所ですが、実はNG。外からの音が入りやすく、また、縄張りの境界にあたる場所なので、「外敵が入ってくるかも!」と犬が警戒し、吠えやすくなってしまいます。また、暑い季節は網戸にすることで外の音が聞こえやすくなり、より警戒心が強くなることも。同じく玄関付近も音が入りやすいため、犬の居住場所を設けるのは避けましょう。
【ADVICE 09】人と犬のいる場所が違うことを考慮して
同じ部屋の中でも人が過ごす場所と犬が過ごす場所では、気温や湿度が異なることも。人が快適でも、犬にとっては違うかもしれません。犬の居住エリアの気温や温度も確認し、快適なお部屋をつくることが大切です。
愛犬のGood Roomを作ろう!
愛犬が快適に過ごせる居住場所のポイントをご紹介。季節によって場所を変えて、心地よいベストな場所を見つけましょう。
【Check Point!】
□ 家族が集まるリビング
□ 気温は20~26℃
□ 湿度は40~60%
□ 直射日光が当たらない
□ エアコンや扇風機の風が直接当たらない
□ 外やテレビから聞こえてくる音がうるさくない
□ 家電が近くにない(耳がよく、人に聞こえない家電の音が聞こえるため)
大好きだけど……僕たちのためにやめて!
ムクくん(オス・1才/ミニチュア・シュナウザー)
肥満の原因に! 肉づきを見て調整して
犬は祖先である野生のオオカミの習性から満腹中枢があまり機能していないため、与えただけ食べてしまう傾向があります。栄養バランスを考えるとごはんであるドッグフードをメインで食べさせて、おやつはご褒美として与えるのが◎。犬は丸飲みしてしまうので、おやつをあげるときは小分けにして回数を増やしてあげるとよいでしょう。
危険なだけでなく、警戒心が強くなることも
走行中の自動車から犬が顔を出している姿は、一見すると気持ちよさそう。しかし、普段から乗っている車は犬にとって縄張りのため、顔を出して見張りをしているんです。窓の外を歩く人や犬を不審者とみなして警戒心が強くなってしまうことも。外に向かって吠えるようになる可能性があるので気をつけましょう。
犬も人も危険! 道路交通法に違反する可能性あり
走るのが好きな犬は、飼い主さんが自転車を漕ぎ、一緒に走れるのはうれしいと感じるでしょう。しかし、自動車や自転車と事故に遭う可能性が高まるだけでなく、リードが自転車に巻きつくこともあり、犬にとっても人にとってもとても危険です。そもそも、自転車を運転するルールにも違反してしまうのでやめましょう。
企画/SOULWORK
撮影/秋馬ユタカ
構成・文/河島まりあ