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【Shi-Ba】我こそは挑戦者なり!【辰巳出版】(その3)

【Shi-Ba】我こそは挑戦者なり!【辰巳出版】(その3)

ドッグダンスやドッグマラソン、その他、難易度の高い芸など、自分の中の秘めた可能性を引き出すべく、飼い主さんと果敢にチャレンジしている読者犬を取材してきたぞ〜。(Shi-Ba 2019年5月号 Vol.106より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
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君は自分の大きな可能性にもう気づいているか?

ドッグダンスや ドッグマラソン、その他、 難易度の高い芸など、自分の中の 秘めた可能性を引き出すべく、 飼い主さんと果敢にチャレンジしている 読者犬を取材してきたぞ

とっくの昔に気づいてましたっ!

日本犬は「楽しいこと」より、「安全なこと」の方が好き

犬の挑戦で思い浮かぶのが、フリスビーとかアジリティ。
でも、我が家のまる子もそうだが、日本犬ってフリスビーをくわえるどころか、顔に当たらないようによけたり、家ではできるのに外でやると周囲を気にしてにおいばかり嗅いで挙動が不審だったり。

これって、やる気がないってこと?

あたし、どれだけジャンプできるか?

あたし、どれだけジャンプできるか?

「柴犬たちは楽しいことよりも安全なことを好みます。家の中や庭、顔馴染みがいるホームグラウンド的な公園やドッグランで遊ぶのは自分の身が守られていて、周りに知らない人がいないので安心できるのです」と茂木先生は話す。

彼らがもともと猟犬だったことはご存知の通りだが、飼い主の指示に従って狩りをする犬たちとは異なり、日本犬は猟において、獲物を自分で追い詰める役割を担っていた。追い詰め方を一歩間違えれば、自分の身に危険が及ぶこともあったろう。
それゆえに警戒心が強く、馴染みのない場所では四方八方に気を配り、飼い主からすれば注意力が散漫なように見えるのだそう。

なるほど! 本番に弱いように感じたのはそのせいか。まぁ、競技に出る、出ないかはこの際おいておき、犬との信頼関係がしっかりとできていて、彼らが楽しいと思うことが見つかれば、飼い主的には一緒にいろいろと挑戦したいもの。

どれだけ葉っぱをキャッチできるか日々自主練!

どれだけ葉っぱをキャッチできるか日々自主練!

今日も自己ベストの大きなウンコでて気分爽快♪

今日も自己ベストの大きなウンコでて気分爽快♪

そんなわけで、今回も各家庭の工夫やエピソードを紹介していこう。

あたしもお姉ちゃんたちのソリ遊びに挑戦!?

土手にあったダンボールで子供達がソリ遊びに挑戦。

土手にあったダンボールで子供達がソリ遊びに挑戦。楽しそうな様子を見ていたはなこは「私もやる!」と参加。最後はソリを噛んで遊んでたよ。かわいい♥

あたしもやる~♪

あたしもやる~♪

お姉ちゃん「え~っ?」「それ、ちがくな~い?」 はなこ「いーの♥」

お姉ちゃん「え~っ?」「それ、ちがくな~い?」
はなこ「いーの♥」

お姉ちゃん「ソリ、こわれちゃった~(笑)」 はなこ「あたし、やった!」

お姉ちゃん「ソリ、こわれちゃった~(笑)」
はなこ「あたし、やった!」

パパとの「鼻パク」練習風景。

パパとの「鼻パク」練習風景。

男は高い所を歩けなければ生きていけない……(by柴大ハム…って、これ、前も書いたな)

男は高い所を歩けなければ生きていけない

若い頃は高い所をよく歩いたSUN。取材当日も防波堤の上を散歩。この道は今度挑戦するマラソンのコースにもなっているらしい。
「途中に行きつけのパン屋さんやヤギ乳を飲むお店があるので、足が止まらないか心配です」

日本犬の本能や特性に合った競技や遊びを選ぶのもオススメ

各ご家庭のチャレンジエピソード、いかがでした? どのご家庭も、失敗成功に関わらず、犬、人共に満面の笑みでいろいろなことに挑戦しているのが印象的だった。そんな姿を見て「我が家もこれから愛犬と何かやってみたい」と思っているみなさんへ役に立つお話をいくつか紹介しよう。

今からアジリティやフリスビーに挑戦してみたいのなら、まずは家で楽しく始めてみよう。
家で慣れたら、犬が大好きなよく行く公園などで練習するなど、徐々に段階を踏むこと。ある日いきなり会場に連れて行くのはNG。「こんな知らない所に連れてこられて怖いんですけど」と犬が感じてしまうからだ。競技に出てみたい場合は、2年くいかけてこまめに見学に連れて行き、見知らぬ場所に無理せず慣れてもらうことが大切。

また競技に出て成果を確認したい場合は、「日本犬の特性を考えると、他の洋犬に比べ競技内容のステップアップは慎重に行い、達成感を味あわせてあげながら進めましょう。また、競技会でいつも通りにうまくできなかったとしても、犬の前で飼い主さんが落胆した様子を見せると、犬もショックを受けてしまう可能性があります」
挑戦する際は飼い主さんも楽しそうにしていることが大切とのこと。

犬も人も楽しく無理せず、達成感を満喫したいよね

犬も人も楽しく無理せず、達成感を満喫したいよね!

ところで、ボールを追いかけるのは好きだけど持ってこない、という話もよく聞く。
「狩猟本能があるので、狩りの一環としてボールや逃げる猫など、動くものを追いかけたり、追い詰めることは好きです。しかし、レトリーバーのように持ってくることに喜びを感じるわけではありません。また、自分がくわえたものは飼い主の元へ持って行くよりも、噛んだりボロボロにして楽しみたいのです。『モッテコイ』を教える場合は、まず飼い主さんとボールなどで引っ張りっこ遊びをして、『飼い主の所に持って行ったら楽しいことをしてくれる』と学習をさせて、持って行く動機を高めておきましょう」

では日本犬の特性にあった、これから挑戦できそうな競技ってどんなものだろう。
「K9ゲーム(犬のしつけやマナーを楽しみながら学べるゲーム。椅子取りゲーム、オイデオイデ競争、ハンドラーが投げたものを犬が空中キャッチするなどの9つのゲームがある。)はゲーム感覚で楽しめますし、犬の本能的な部分に着目したノーズワークはシニアになっても参加できてオススメです」

※K9ゲーム®とは?
犬のしつけやマナーを楽しみながら学べるゲーム。椅子取りゲーム、オイデオイデ競争、ハンドラーが投げたものを犬が空中キャッチするなどの9つのゲームがある。

いずれも、パピーの頃から社会化を十分に行っていて、どこに連れて行っても平気という状態になっているのが理想的。しかし、大抵の場合はいろいろな場所に連れて行くようになるのは6ヶ月過ぎあたり。そうすると社会化期は既に終わっているもの。いきなり初めての場所に連れて行くのは犬にとってストレスがかかることを頭に置きながら、慎重に検討しよう。

カバンからの初脱出に挑戦中~♪

カバンからの初脱出に挑戦中~♪

さて、今度は競技以外での遊びやしつけ全般において、茂木先生から伺った「犬のやる気を引き出すポイント」を挙げよう。

【どこでやるといい?】
落ち着ける静かな場所、家の中や庭、周りに誰もいなくて飼い主に集中できる場所。

【どうやるといい?】
ゆっくり動き、わかりやすく指示を出すこと。また体に何かが触れると集中できないので、犬の体を押したり引いたりするのもNG。そして、狩りに似た状況を作るのもオススメ。初めてのオモチャなどは獲物のように動かし犬の興味を引くなどの工夫をしてみよう。わかりやすくほめる。長すぎるマテはイラつきやすいのでNG。犬が嫌がるそぶりを見せないうちにやめよう。

というわけで【犬がやる気をなくす教え方】は、長くやりすぎる、体罰を使う、飼い主の気分次第でごほうびをあげるあげないなど一貫性がない、など。一方、【犬のやる気を引き出す教え方】は、上記の他、遊びたそうにしている時に始める、などだ。実践時に役立ててほしい。

オテを進化させたすごい芸に挑戦したいっす!

オテを進化させたすごい芸に挑戦したいっす!

さて、犬にやる気が出ると、目つきが輝いてくる、体を動かして遊ぶので食欲がアップ、飼い主のことが好きになり号令にも従いやすくなる、成功体験が増え自分の行動に自信がつく、飼い主のことをよく見るようになるなど、多くの変化が出る。忙しい日でも、1日に2〜3回は号令をかけて遊んであげることが大切。そして、せっかくやる気に火がついたなら、飼い主は期待に応え犬のやる気にあぐらをかかないこと。
「やる気が出ると脳内でドーパミンが出て、学習能力が向上します。ストレスも軽減し、脳の中が若返るなど、いいことだらけです。犬が得意なこと、自発的にやっていることを伸ばしてあげたり、そこから教えていくのが良いでしょう。自分の犬がどんな時に、どんなことを楽しそうにやっているのかをよく見てあげてください」

犬種の特性を知り、愛犬の好みや行動を観察しながら、楽しく挑戦してほしい。

監修:茂木千恵先生
東京大学大学院農学生命科学科獣医学博士課程卒。獣医師。専門は獣医行動学。ヤマザキ動物看護大学講師。
教育・研究活動のかたわら、東京都町田市内でペットの問題行動治療やパピークラスの開催も行う。
「飼い主が幸せになれば犬も幸せになり、犬が幸せになれば飼い主も幸せになる」という考えをベースとし、飼い主の話をじっくり聞くことも大切にした指導は、多くの人や犬から好評を得ている。

Text:Mari Kusumoto
Photos:Minako Okuyama、Miharu Saitoh、Etsu Moriyama

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