口の中に残った食べ物が歯垢となり、やがて石のようにカチカチになり歯に付着して歯石となります。
人間と同様、猫の歯垢や歯石は歯周病にもつながる恐れがありますので、しっかりとケアしておきたいものです。
ここでは、安全な歯石の除去方法や、子猫のうちからはじめておきたい自宅でのデンタルケアなどをご紹介します。
自分で猫の歯石取りを行うのは危険なのでNG
歯石は、口の中に溜まった歯垢が石灰化したものです。歯石が出来てしまうと、歯磨きでは簡単に落とすことができず、安全に取り除くためには麻酔をし、専用の器具で取り除くことが必要です。
歯石除去には正しい知識・高度な技術が必要なため、飼い主さん自らの手で行うことは危険です。
必ず獣医師へ相談の上、動物病院で除去してもらうようにしましょう。
動物病院での歯石除去方法
動物病院では、事前に口腔内のチェックや身体検査を済ませたうえで、歯のクリーニングが行われます。
歯のクリーニングは
①スケーリング
②ポリッシング(研磨)
③洗浄
の順番で行います。
①スケーリング
スケーラーという専用の器具で歯石を除去します。歯の表面だけでなく、歯の内側や歯周ポケット内の歯石も取り除いていきます。
また、グラグラと抜け落ちそうな歯があるときには、抜歯をするケースもあります。
②ポリッシング(研磨)
スケーリングで歯石が取り除かれた歯を、専用の研磨機で磨きます。歯の表面をつるつるにすることで、新たな歯石が付着しにくくなります。
③洗浄
最後にしっかりと口腔洗浄をして、終了です。
猫の歯石除去は何歳からできる?
歯石除去自体は何歳からでも可能です。
・口臭はないか
・歯肉が赤くなっていないか
・歯磨きのときに出血しないか
など、日常的に猫の口内チェックをしながら、歯石除去のタイミングを見計らいましょう。
基本的には歯石除去は何歳からでも大丈夫ですが、歯石除去には麻酔が必要なため、高齢の猫には麻酔リスクが伴うので注意が必要です。
猫の歯石は毎日の歯磨きで予防可能
前述にもある通りですが、歯石は食べ物が口の中に残っていることによってできる「歯垢」が原因です。
つまり、歯石予防には歯垢を溜めないことが必要で、そのためには自宅でできる毎日の歯磨きが大切になります。歯垢が石灰化して歯石となってしまう前に、しっかりお掃除してあげましょう。
猫の歯磨きはいつから行うべき?
歳を取るにつれて、新しい習慣への抵抗も生まれやすくなるため、歯磨きは子猫のうちから習慣づけておいた方が良いでしょう。
猫の歯は、まず乳歯が生後1ヶ月半くらいまでに生えそろい、その後、生後約3~6ヶ月にわたって永久歯へと生え変わります。この生え変わりが終わるころには“歯磨き習慣”が身に付いているのが理想的でしょう。
猫の歯の構造
歯磨きの方法を解説する前に、まずは猫の歯の構造についてご説明します。
猫の歯は、歯の中心部分から表面に向かって
・歯髄
・象牙質
・エナメル質(歯肉に埋まっている部位はセメント質)
の3層で構成されていて、この歯を支えている部分を「歯周」といいます。
そして、歯周の表面(歯肉)と歯の間に存在する数ミリ程度の溝が、よく耳にする「歯周ポケット」です。
ここに歯垢や歯石が溜まると歯周組織に炎症が起こり、歯周病の引き金になります。
猫の歯磨き方法
猫の歯磨きの仕方について、
・歯ブラシの使い方
・奥歯の磨き方
に分けて説明していきます。
歯ブラシの使い方
上手な歯ブラシの使い方としては、
・歯の根元部分に対して45度くらいの角度で当てる
・力を入れ過ぎない
この2点がポイントです。
また、磨くときは、小刻みに揺らすようにして磨くようにしましょう。
奥歯の磨き方
特に歯垢の溜まりやすいのは奥歯です。
奥歯を磨くときは、猫の頭を優しくつかみ、親指で唇を持ち上げるように隙間から歯ブラシを入れて磨きます。
難しい場合は、口の端から歯ブラシを入れ、閉じたままの状態で磨くようにしましょう。
猫の歯磨きの頻度・時間
続いて、猫の歯磨きの頻度や、一回の時間について説明していきます。
歯磨きの頻度
歯磨きは、毎日できればベストです。毎日が難しい場合は、少なくとも2~3日に一回はできるように習慣づけましょう。
口の中に残った歯垢が歯石になるまでは約1週間です。猫の歯垢は、非常に早いスピードで石灰化が進んでしまいます。
そして前述の通りですが、一度歯石になってしまうと、自宅での歯磨きでは取り除くことはできません。
歯石ができないようにするために、なるべく毎日歯磨きをするようにしましょう。
歯磨きの時間
「必ず一回◯分」と厳密な時間設定はしなくて大丈夫ですが、あまりにも長い時間の歯磨きは猫にとっては負担になるため、目安として猫が嫌がり始めたら終わりにしましょう。
1回で全ての歯が磨けていなくても大丈夫です。磨けなかった歯は翌日に磨くなどしましょう。
猫が歯磨きを嫌がる場合はどうすれば良い?
いきなり歯磨きをすると、猫が不安や恐怖を感じて嫌がる場合もあります。
その場合には、以下3点を心がけると良いでしょう。
・口の周りを触られることから慣れさせる
・「歯磨きすると良いことがある」と思わせる
・どうしても嫌がる場合はデンタルグッズでケアする
一つずつ見ていきましょう。
口の周りを触られることから慣れさせる
はじめのうちは歯磨きに抵抗する場合も多いので、飼い主さんの工夫で少しずつ歯磨きに慣れていくことができます。
まずは、頭をなでたり首元をくすぐるなど猫とコミュニケーションを取りながら、少しずつ口元に触れていきます。
1日では慣れることはできないので、
・口を触ることができるようになる
↓
・唇を少しめくってみる
↓
・指で歯にタッチしてみる
というように、徐々に慣らしていきます。
「歯磨きすると良いことがある」と思わせる
歯磨きの練習をするうえで大切なのは、その都度しっかりと褒めてあげること。
「上手にできたね」「お利口だったね」などの声をかけたり、おやつをあげながら行うなど、猫にとって“歯磨きを楽しい時間”にしていくのがポイントです。
そうすることによって、少しずつ「歯磨き=良いこと」と思うようになるでしょう。
どうしても嫌がる場合はデンタルグッズでケアする
どうしても歯磨きに抵抗がある場合は、市販のデンタルグッズでケアをすることもできます。
・手に持ったまま猫に噛ませるデンタルガム
・おもちゃを噛みながらケアできるデンタルトイ
・指で直接口に塗ることのできる歯磨きジェル
など、様々なデンタルケアグッズがありますので、猫に合ったグッズを選んでみましょう。
歯石の他に子猫のうちから予防・ケアしておくべきこと
歯石になる前に、日頃の歯磨きで歯垢を綺麗に取ることは大切なのは上述の通りですが、歯石の他にも子猫のうちから予防・ケアした方が良いことがあります。
肥満予防
猫の肥満は万病のもとです。
肥満は
・糖尿病
・脂肪肝
・心臓病
など、様々な病気の発症リスクを高めます。
子猫のうちから、適正なカロリーの摂取や室内での運動などを心がけ、肥満にならないように注意しましょう。
爪切り
鋭く先のとがった猫の爪は、伸ばしたままにしておくのはとても危険です。
飼い主を引っ掻いてしまったり、猫自身が痛みを伴う巻き爪になってしまうこともあります。
特に子猫は爪を出し入れする筋肉が発達していないため、爪を出したままにしていることが多く、よりこまめなケアが必要です。
子猫のうちから爪切りに慣れておけば、成長してからの定期的な爪ケアも、スムーズにできるようになるでしょう。
被毛のケア
定期的なブラッシングは、被毛の毛玉防止になり、さらに、猫とのコミュニケーションにもつながるのでおすすめです。
また、寄生が心配なノミやマダニの早期発見にもつながります。
猫が健康に暮らしていく上では、ノミ・マダニへの対策も忘れてはいけません。
ノミやマダニの寄生は、かゆみと皮膚症状を引き起こすだけでなく、二次的に様々な感染症を引き起こす可能性もあり決して侮れないものです。
ノミやマダニのトラブルが見つかったら、専用の駆除薬で対策するとよいでしょう。専用の駆除薬の中には、すでに寄生してしまったノミ・マダニの駆除はもちろん、ノミについては再繁殖・再寄生の防止にも効果的なものもあります。
猫のノミ・マダニ対策について、以下の記事でより詳しく解説していますので、こちらも是非ご覧ください。
▼猫のノミ・マダニ対策について、もっと知りたい!
愛する猫ちゃんをノミ・マダニ寄生のリスクから守る!室内飼いの猫ちゃんも注意
まとめ
猫の歯石除去は、専用の器具や正しい知識、高度な技術が不可欠なため、自分では行わず、必ず動物病院で行いましょう。
また、そもそも歯石が出来ないようにするためには、歯石になる前の歯垢を毎日の歯磨きで取り除いてあげることが大切です。
「歯磨きはちょっと苦手…」という猫でも、楽しくコミュニケーションを取りながら、上手に工夫をしてみましょう。
毎日の歯磨きをしっかり行い、歯石が出来てしまったら動物病院で歯石除去をし、一日でも長く猫が健康でいられることを目指しましょう。
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