「これからの暮らしを考える。愛猫のための「老猫ホーム」という選択|『まるねこ』
出典 : 写真提供:まるねこ

「これからの暮らしを考える。愛猫のための「老猫ホーム」という選択|『まるねこ』

愛猫と過ごす日々は、かけがえのない宝物です。でも「もしも自分に何かあったら、この子はどうなるんだろう?」と、ふと不安を感じたことはありませんか。今回は、そんな飼い主さんの不安にそっと寄り添う「老猫ホーム」がどんな場所なのかをご紹介します。

  • サムネイル: PECO編集部
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1.老猫ホームの現状とは? 〜猫と人の「もしも」を支える場所〜

「老猫ホーム」と聞いて、どんな場所をイメージされるでしょうか。
かつては少し寂しい響きがあったかもしれません。けれど今は、飼い主さんがどうしてもお世話ができなくなった時に、愛猫の命と暮らしを守る「第二の我が家」として、その役割が変わってきています。

背景にあるのは、猫ちゃんの長寿化と、飼い主さん自身の高齢化。
「最後まで一緒にいたい」という願いは誰もが同じですが、飼い主さんの入院や施設入所など、やむを得ない事情で、離れなければならないことがあります。


そんな時、行き場を失ってしまう「猫ちゃん」を救う「セーフティーネット」として、老猫ホームは存在しています。ただ預かるだけでなく、猫ちゃんの尊厳を守り、穏やかな余生を支える。そんな温かい場所が、少しずつ増えているのです。

 

2. 「飼い主の不在」と「引き取れない事情」とは?

なぜ今、こうしたホームが必要とされているのでしょうか。
そこには、現代社会ならではの切実な事情が見えてきます。

実は、わんちゃんよりもねこちゃんの飼い主さんの方が、一般社団法人ペットフード協会の調べによると平均年齢が高く、高齢者である場合も多いという現状があります。
そのため、どうしても避けられない「飼い主の不在」が起きてしまうのです。

主な理由は以下の4つです。

長期入院     :病気や怪我で、長期間家を空けなければならなくなった時。
飼い主の認知症  :お世話をしたくても、適切なお世話ができなくなってしまった時。
老人ホームへの入所:ペットと一緒に入れない施設への入居が決まった時。
飼い主自身の死亡 :最期まで一緒に過ごした後の、残された猫ちゃんの行き場。

「では、ご家族や親戚が引き取ればいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、残された飼い主の親族も、どうしても引き取れない事情があるのです。

ペット不可物件  :住んでいるマンションやアパートが飼育を禁止している。
アレルギー    :ご家族自身や同居人に猫アレルギーがある。
経済的な余裕がない:自身の生活で手一杯で、猫ちゃんを養う余裕がない。
飼育経験がない  :扱い方が分からず、特に高齢猫のケアに自信が持てない。
動物たちとの相性 :先住猫、先住犬などとの相性が合わなかった。
動物が苦手    :猫が苦手なご家族がいた。

こうした「引き取りたくても引き取れない」という現実があり、高齢の猫の引き取り先の一つとして、「老猫ホーム」への入居や相談が増加しているのです。
決して「無責任だから」ではなく、猫ちゃんの幸せを一番に考えた結果の選択。それでは、実際にそうした猫ちゃんたちを受け入れている現場のお話を伺ってみました。


 

『まるねこ』さんインタビュー

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「まるねこ」の老猫ホーム・開放型シェルターにあるキャットウォークステップ。すでに里親さま宅で暮らしている元保護猫、白薄三毛のココちゃん(左)と黒猫のあずきくん(右)。

出典 写真提供:まるねこ

老猫ホーム、猫ホテルなどを運営し、猫シッター、保護猫シェルター、猫の「ペット後見」にも対応している「まるねこ」のいしまるあきこさんにお話を伺いました。

── 老猫ホームを始められたきっかけと、いつから運営されていますか?

─ 知人が介護職をしていて、高齢者の方が施設入所をする際に家を失う老猫の相談を受けて2018年にボランティアで引き取ったことがきっかけです。
2018年に始めた猫シッター先などでも「自分に何かあった時の愛猫の行き先が心配。いしまるさんが引き受けてもらえませんか?」とのご相談が増えたことから、老猫ホーム・猫ホテルの施設を開設しました。
「まるねこ」の施設は保護猫シェルターからスタートして、2024年10月から老猫ホーム・猫ホテルとしても開業しています。
私自身が一級建築士で愛玩動物看護師ですから、猫のために「まるねこ」を設計してリフォームの施工もしています。連携している動物病院の獣医師の指示のもと投薬なども対応できる体制をとっています。

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「まるねこ」の老猫ホーム・開放型シェルターでは、基本的にケージを開け、猫たちが自由に出入りできるようにしている。猫たちはそれぞれ好きな場所で過ごしている。手前にいるのは保護猫のチビトラくん(2歳)。

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一般的に「老猫ホーム」と呼ばれていますが、「まるねこ」では猫さん側の年齢制限を設けていません。
若い猫さんや、人が好きな猫さんについては、健康状態などみた上で、新しいご家族さまを探すこともご提案しています」

「まるねこ」として猫の「ペット後見」にも対応していますし、現在は本部を岐阜に置く認定NPO法人人と動物の共生センターの東京支部を「まるねこ」に置いて、NPOの「ペット後見互助会とものわ」にも対応しています。

 

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「まるねこ」の老猫ホーム・開放型シェルターで、猫たちが集まってお昼寝している様子。

出典 写真提供:まるねこ

“まるねこ”さんもまた、介護現場の切実な声から立ち上がられたのですね。建築の知識を生かして、猫さんと人が共生できる場所を作る。しかもNPOのネットワークがあるなんて、とても魅力的で心強い限りです。

 

── 現在、何匹くらいの老猫が暮らしていますか?


─ いまのところ老猫さんはいません。開放型の保護猫シェルターと老猫ホームとして合わせて10個のケージを用意していて、いまは保護猫さんが7匹います。

スタッフは私を含めて7人いて、施設とはいえ猫さんたちが快適に楽しく過ごせるように、基本的にケージから出て自由に過ごしていて、それぞれの個性を意識したお世話を心がけています。
室温を一年中26度前後にするようにするなど、猫さんたちの体調管理に気をつけています。お客様がいらした際に保護猫さんたちを見て、「とても穏やかに過ごしていますね」、「幸せそうですね」とおっしゃってくださることが多いです。

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左は「まるねこ」の猫ホテル、右は老猫ホーム・開放型シェルター。室内窓で仕切られている。猫ホテルを半年利用していた海外生まれのキジ白・福くん(2歳)が、室内窓ごしに保護猫の茶白・チビトラくん(2歳)と遊んでいる。

出典 写真提供:まるねこ

多くの数を追うのではなく、いま目の前にいる子を確実に幸せにする。その堅実な姿勢が、信頼の証なんですね。

 

── 利用頭数の変化とその理由について教えてください?


─ 法改正の影響で、長期的に預かれる施設が少なくなっていて、受け皿が不足していると思います。


 

── 昔と比べて、猫の高齢化を感じますか?

─ 長寿命化を感じています。獣医療やフードの進化で、猫さんの寿命は伸びていています。 ただ、猫さんはシニアになっても見た目の変化が分かりにくいですし、一緒に暮らす方ほど老化による日々の変化に気づきにくいですよね。

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猫ホテルを1か月半利用した白猫のアンズちゃん(9歳)。高齢の元飼い主さまが施設に移るタイミングで、ご親族が「まるねこ」に預けた。デスクに前足をつき、室内窓ごしに保護猫たちを眺めている。

出典 写真提供:まるねこ

日々の変化に気がつけないと、病気の発見を遅らせてしまうこともあります。
いつもと同じようにかわいい姿でも、人よりも猫は早く歳をとることを忘れないようにしたいですね。

 

── 飼い主さんのニーズや相談内容に、なにか変化を感じられますか?


─羽田空港の近くのため海外勤務の方のご利用が多いですが、それ以外にも高齢の親御さんのところにいた猫さんをお子さんが引き取って次の行き先が決まるまでお預かりしたり、ご自身の入院予定で長期的な預かり先を探している方もいらっしゃいます。
猫さん側にも持病があり投薬などが必要となると、預かり先がなかなか見つからないようです。「まるねこ」では猫さん側のかかりつけ医の指示のもと、対応することがあります。

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ご親族のご友人宅に迎えられることになったアンズちゃん。「まるねこ」に来た当初は、他の猫を見ると激しく威嚇していたが、少しずつ慣れていった。「まるねこ」でのお預かり期間を経たことで、里親さま宅の先住猫とも短期間で仲良くなれたという。

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ー老猫ホーム「まるねこ」での猫の「ペット後見」では、「一緒のお墓に入りたい」などのご家族のご希望に寄り添えるように、猫さんの看取りや納骨までお約束するご相談が増えました。

ご自身の入院や亡くなった後の心配から、残された猫さんのために『ペット後見』に関心を寄せて、準備をされている方が増えてきています。認定NPO法人人と動物の共生センターがご提案している「ペット後見互助会とものわ」は、新しいご家族を探すことを前提としているので、比較的安価な金額で取り組んでいます。

“自分が亡くなった後”のこと。皆さん、口には出さなくても、心の中でずっと心配されていたことなんですね。こうした相談ができる窓口があるだけで、どれだけ救われることでしょう。

── NPOの「とものわ」で、もし、新しい里親さんが見つからない場合はどうなるのでしょうか?


─ 成猫の譲渡は時間がかかることが多いです。里親さんが見つかるまでは責任を持ってお預かりします。結果として「まるねこ」で猫生を全うする場合もありますし、岐阜本部に移動してそこで過ごしてもらうこともあります。

「お家が見つからなくても、ずっとのお家がある」。その覚悟があるからこそ、安心して託せるのですね。

 

── 獣医さんや動物病院とは、どのような連携をされていますか?


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半年の滞在中、出入りしていた他の猫たちとも仲良くできた福くん。いまは海外で暮らしている。

出典 写真提供:まるねこ

─ 近隣で我が家の猫さんたちのかかりつけ医で信頼している動物病院・獣医師の先生と連携させてもらっています。また、私自身が勤務し始めた動物病院とも連携を取らせてもらっています。「近さ」だけではなく、猫の特性を理解して親身になってくれるか、専門的な検査や対応ができるかどうかも重視しています。

医療連携がしっかりしていると、託す側としても安心感が違いますよね。いざという時に、猫さんのことをよく知る先生に診てもらえる。それ以上の安心はありません。

 

── 介護期間やケアの内容の変化について教えてください。


─ 足腰が弱るので、トイレの段差を低くしたり数を増やしたり、生活動線を短くする工夫が必要です。 オムツは最終手段にして、できるだけ自力で排泄できるようにします。例えば猫さんも今までできていたことを失敗したら落ち込みます。
失敗しても叱らず、猫さんのプライドを傷つけない配慮が大切です。食事も、持病に合わせたり、食欲がない時は温めたり、おやつ感覚の総合栄養食を使ったりと猫さんに合わせて工夫をしています。

 

── 猫の飼い主さんにどんなことを知ってほしいですか?


─ いつまでもかわいい姿の猫さんも体は歳をとりますので、定期的な健康診断を受けて早めに対処をして、少しでも気になることがあったらこまめに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
何もなければ「良かったね」で済みますし、何かあっても「早く見つかって良かったね」と言えるように早めの対応が大切です。

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高齢の飼い主さまが施設に移るタイミングで「まるねこ」にやってきた海ちゃん(12歳)。スタッフの背中をやさしくバリバリするのが好き。

出典 写真提供:まるねこ

“そなえ”はいつか来るその時のために、飼い主さんが愛猫のために知っておくべき知識であり、若いうちからできることもたくさんあります。今できることを少しずつ始めていくことが愛猫にとっての愛のかたちなのかもしれません。

 

── 「老猫ホーム」という選択肢をどう捉えてほしいですか?


─ まずは、元飼い主さまのご親族さまや親しい方に猫さんを引き継いでいただくことをおすすめします。どうしても行き先がなかったり、託そうと思っていた方と猫さんの飼育方針が大きく違ったりする場合に、ご相談いただければと思います。

 

── 終生飼育だけでなく、「猫ホテル」としての一時預かりもされているそうですね。

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猫ホテル開業のきっかけとなったチャンチャンきょうだい。猫シッターでお世話していたご家族が海外勤務となり、海外の住まいの準備が整うまで預かることになった。開業から丸1年間を「まるねこ」で過ごした。当初は人が苦手なこわがりの2匹だったが、新しい家ではおうちの猫らしく暮らしているという。

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ー2週間以上の長期預かり専門の猫ホテルは6個のケージですが、2024年10月の開業以来、常に猫さんたちにご利用いただいています。まだ1年半ほどですが、1年間のお預かり実績があります。滞在している猫さんの個性に合わせてケージの外の自由時間を充実できるようにお世話方法を考えたり、その子の体質や好みに合ったごはんを探したり、お世話方法を見直すお手伝いもしています。
「まるねこ」滞在後に以前よりもご家族と仲良くできるようになったり、健康になったり、その後も良いご報告をいただいています。

 

──どんな方が利用されていますか?

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猫ホテルを利用していた海ちゃんと、保護猫チビトラくんの室内窓ごしの交流。海ちゃんを預かった4か月の間に、飼い主の娘さんはペット不可からペット可のマンションへ引っ越し。その後、高齢の飼い主さんも体調が回復して施設を出て、再び一緒に暮らせるようになった。

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ー主に3つの理由で選ばれることが多いです。

1つ目は、『ご家族が施設へ入る時のサポート』です。親御さんが施設に入居される際、猫さんの新しい居場所が見つかるまでの一時的なお預かりをしています。その間に、私たちが新しい飼い主さんを探すお手伝いをすることもあります。

2つ目は、『海外赴任』です。羽田空港が近いので、海外赴任先での受け入れ準備が整うまでの期間などにご利用いただいています。

3つ目は、『投薬が必要な猫さん』です。私が「愛玩動物看護師」のため、獣医師の指示のもとであれば投薬などの対応も可能です。「薬が必要だから預け先がない」と困っている方にも相談していただきたいですね。

いずれにせよ、長期専門の猫ホテルのため、致し方ないご事情でお預けになる方ばかりです。私も過去に短期間ではありますが、手術で入院したことがあるため、愛猫と離れて過ごす寂しさは理解しているつもりです。
毎日のご報告は、できるだけ多くの写真や映像などをお送りし、「まるねこ」に預けて良かったと思っていただけるよう努めています。

「空港に近い」「看護師がいる」。この利便性と安心感はとても貴重です。
介護や引っ越しでバタバタしてしまう時期にも、プロがしっかり預かってくれる場所があるのは、本当に心強いですね。

 

── 最後に、利用を検討している飼い主さんに伝えたいことは?


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猫ホテルを利用したケイくん(10歳)。高齢のご家族が施設に移るタイミングで親族が引き取ったが、先住犬と合わず、老猫ホーム入所の話も出ていた。その後、別のご家族に迎えられることになった。

出典 写真提供:まるねこ

─ 猫さんのためにも、人が健康でいることが大切です。猫さんのためにと無理をしすぎず、自身の体調不良の時に猫シッターや猫ホテルなどのプロを頼るのも一つの手です。やむを得ない事情で老猫ホームに託されると思いますので、事前の見学や猫との面談ができるところなど納得のできる施設を選ぶのが良いと思います。

 

── 施設情報

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上から、ココちゃん、ミミちゃん、茶太郎くん(左)、はるちゃん(右)。ココちゃんとはるちゃんはいまは里親さま宅で暮らしている。

出典 写真提供:まるねこ

▪️猫シッター・老猫ホーム・猫ホテル・開放型シェルター『まるねこ』


「まるねこ」では、いしまるあきこさん(一級建築士・愛玩動物看護師)が、猫シッター、老猫ホーム、猫ホテル、開放型シェルター、ペット後見など、猫さんと飼い主の暮らしを多角的に支えるサービスを提供しています。「まるねこ一級建築士事務所」では、猫との住まいの設計・施工などを行なっており、「まるねこ」のリフォームも手がけています。

老猫ホームでは、終生飼養を前提とした猫さんの受け入れを行っています。
猫ホテルは2週間以上の長期預かりを専門とし、短期間のケアについては猫シッターの利用をご案内しています。

▪️住所
〒144-0043
東京都大田区羽田三丁目16番10号 白山荘104

ホームページ内にお問い合わせフォームあり

▪️認定NPO法人 人と動物の共生センターの「ペット後見互助会とものわ」について

 

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