【獣医師監修】こんなときは犬のストレスサイン? 行動から読み取るストレスと、疾患について

犬はストレスを感じるとさまざまな行動を見せます。ストレスサインとされる行動や症状を知り、ストレスを解消してあげるよう努めましょう。

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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

人間だけでなく、犬もストレスを抱えることがあります。人が考えるストレスは精神的なものばかりが浮かびますが、ストレスには大きく分けて以下の3つが存在します。

「物理・科学的ストレッサー」:寒冷、暑熱、騒音など
「生理学的ストレッサー」:絶食、飢餓、重労働、病気全般など
「心理学的ストレッサー」:緊張、不安、恐怖、興奮など

では犬の場合、どのようなことがストレスの原因となっているのでしょうか。

犬が受ける強いストレスとしては、引越しや家族が増えるなど環境の急な変化、妊娠・出産、病気全般、があります。また、日中ひとりぼっちであること、飼い主さんの生活パターンの変化、家族の不和などによりストレスを感じることもあります。

愛犬のストレスサインに気づいてあげられるのは、飼い主だけです。犬のストレスの原因を表す行動パターンと、ストレスがもたらす疾患を理解して、早めに解消してあげましょう。

ストレスがもたらす行動パターン

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犬はストレスがあることを言葉で知らせることはできません。飼い主が愛犬の行動などを見て、ストレスに気づいてあげる必要があるのです。

犬がストレスを抱えているときに示す「カーミングシグナル」という行動があります。
カーミング(calming)は落ち着く、シグナル(signal)は信号という意味で、犬が緊張や不安などストレスを感じた時や、対面している相手に対して、「敵意はありませんよ、リラックスしましょう」と伝えるための行動です。カーミングシグナルには以下のようなものがあります。

・あくびをする
・目をそらす
・目を細める
・自分の鼻を舐める(空気を舐めるかのように舌をペロペロと動かす)
・床のにおいを嗅ぐ、舐める

飼い主が叱っている時にあくびをしたら「そんなに怒らないでリラックスしようよ」という合図です。カメラを向けた時に舌をペロペロ動かしていたら、見慣れないものに恐怖を感じているかもしれません。また、散歩で他の犬とすれ違う時に目をそらしていたら「僕には敵意がないよケンカは避けよう」と相手の犬に信号を送っています。カーミングシグナルを読み取り、それに応えてあげることで、愛犬がどんな場面でストレスを感じているかを理解し、回避することもできます。

ストレス状態が継続すると、以下のような行動を示すこともあります。

体を震わせる

犬が体をぶるぶると震わせるのは、寒いときや痛いときですが、緊張をしていたり怖がっているときも震えます。ほかの犬や知らない人が苦手な犬は、相手に対して緊張して吠えもせずに震え続けます。このような行動を特定の場所で起こす場合はそこに、犬にとって苦手なものがあるということになります。そういった場所や人には近づかないようにしたり、怖がらない程度に少しずつ慣らしていくようにしましょう。

お腹を壊す

犬が下痢をした際は、まず、胃腸炎や誤飲などを疑う必要がありますが、ストレスから起こる場合もあります。近所で工事をしていて騒音がひどい、引越しをして環境が変わった、など明らかに変化があるときはストレスが原因かもしれません。なかには、夫婦喧嘩の翌日に必ず下痢をする、という犬もいるようです。

体の一部を舐め続ける

かゆみや痛みの原因がないのに、同じ箇所をずっと舐め続けているときは、ストレスが影響していることがあります。この行動を続けると、ざらざらとしている犬の舌によって皮膚が炎症を起こしたり、毛が抜けてしまったりすることもあるそうです。愛犬の健康のためにもやめさせる必要があります。

しっぽを追いかけて回る

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仔犬が遊びでしっぽを追いかけてくるくる周る行動は、さほどめずらしくないかもしれません。しかし、先ほどの「体の一部を舐め続ける」もそうですが、このような同じ動作をしつこく何度も繰り返すことを「常同行動」といい、強い不安などから引き起こされているおそれがあります。

犬のストレスサインとされる行動は、ほかにもいろいろあります。普段はしないような異常な行動が見られる場合は、それがストレスかもしれないと考えて、愛犬の気持ちを読み取ってあげるようにしましょう。

ストレスがもたらす疾患

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単発のストレスに対して、犬はちゃんと対応していけますので、心配しすぎる必要はありません。ただ、慢性的に続くストレスは、睡眠不足、食欲低下、体力消失などを引き起こすおそれがあります。

また、強い不安を感じると、物を破壊したり、飼い主の留守中ずっと鳴き続けるなど、人が問題と感じる行動を取るようになることもあります。
あまりに強い不安には薬物療法を行うこともありますが、まずは、取り除けるストレスがないかどうか考えてみるといいでしょう。

極端にいえば、リラックスしている時以外、少なからずストレスはあります。暑い、寒い、おなかが空いた、などもストレスですし、興奮してドッグランで楽しく走り回っているときもそうです。ストレスが全くない生活は不可能であり、むしろ元気に生活していくために、適度な刺激は必要なものです。あまり神経質になりすぎず、飼い主が毎日リラックスして過ごしていれば、愛犬も安心してストレスを少なくできるのではないでしょうか。愛犬に寄り添い、ともに安心できるゆとりの時間を過ごしてくださいね。

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