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犬の死角を知れば日常生活も円滑に!? 柴さん! 後ろ、後ろ〜っ!!

犬の死角を知れば日常生活も円滑に!? 柴さん! 後ろ、後ろ〜っ!!

背後から近寄ると、愛犬がびくっとすることありますよね。死角がないようであるのが犬。一体どのくらいまで見えているのか。におい、音、あるいは気配といったことまで含め、検証してみた。(Shi-Ba 2017年7月号 Vol.95より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
  • 更新日:

犬はどの程度周囲を把握しているのだろうか

予期せぬ出来事に愛犬がビックリした、という経験のある飼い主は多いだろう。この予期せぬ、は犬が考えてもいなかった出来事であり、視認することを中心として音、においなども含めた犬の察知能力に引っ掛からなかった出来事である。

一方で、「何でわかっちゃうの」と驚くほどの察知能力を発揮する場面が多いのもまた事実。そうなると、一体どのくらい犬は周囲を把握できているのだろうか、とふと思った。逆に言えば、どこまでが犬の死角なのか、という疑問が生じてくるわけだ。

変な人「思ったよりもスキだらけだ」 柴さん「あぁ……木陰に変な奴がいる」

変な人「思ったよりもスキだらけだ」
柴さん「あぁ……木陰に変な奴がいる」

そこで、今回は犬の死角について様々な検証、実験を行ってみることにしたのである。もちろん、「シーバなりに」であるので、動物行動学的にとかいった点は専門家に譲る。

日常的にありそうな場面で、犬はどの程度見えているのか、あるいはどこまで気づかないのかといったところを知って、みなさんの愛犬ライフに活用していただければよし、なのだ。

犬の視界

見えている範囲は人より微妙に広い

犬の物事の察知能力からすると、人よりも視界がはるかに広いと思っている方が多いと思う。が、実際はそんなに大差はない。少し広い程度だ。

中央の濃い青は、両眼視野。 人は120°ほどある。 しかし全体の視野は180°を少し超える程度。

中央の濃い青は、両眼視野。
人は120°ほどある。
しかし全体の視野は180°を少し超える程度。

犬の両眼視野は人より狭い。
中央の獲物に集中するためか。
だが、全体視野は人より広い。

ギモン! では上下の視野はどの程度なのか

おおよそ上の概念図ほどだと思うが、実際はよくわからない。
なので、今回実験してみたのだ。

どんな結果がでることやら いざ、死角実験!!

正確なデータを出したいが、何せバレバレのことも多くて、難しかったっす。

柴犬は他の犬種よりも気を張っている時間が長い

柴犬の死角について、しつけインストラクターの戸田美由紀先生はこう言う。
「他の犬種よりは敏感です。気が張っている時間が長いので、一般的には死角が少ない犬種といえるでしょう」

ただ、これもその犬の性格や気質、あるいは場面によって大きく変わるともいう。だから一概に「柴は死角なし」とも言い切れない。

性格、気質の他に、学習によって死角が変わると戸田先生は指摘する。
「それがどんなものかを知ることで、意識するようになります」
それはつまり死角が少なくなるということだ。この時、その体験が嫌なものばかりだと、知ることで余計敏感な気質を助長してしまう。

このあたりは飼い主が意識して、正しい経験を細かいステップで積み重ねていくことが大切、と戸田先生は言う。そのことで死角によるトラブルが軽減できるはずだ。

守るべき条件
犬の死角はどんなものか、という実験を行うに当たって、以下の点を配慮し、守ることとする。

決して物音を立てない
今回は基本的に視野について実験を行いたいと考えた。ただ、犬は視野以外にも長けた器官を持っている。ちょっとした音でも存在がバレてしまうので、音にはよくよく注意した。

風上あるいは無風の場所で
音ともににおいも敏感に反応するので、外で実験を行う場合は犬が風上の位置にいるポジションを選んだ。もちろん無風の場所があれば、そこで行うのがベストである。

■協力してくれたモデル犬たち

長谷川むぎ(メス・1歳)

長谷川むぎ(メス・1歳)

人にも犬にも懐っこく、吠えることはない。おおらかすぎて他の犬に噛まれそうになったこともしばしば。家の中では静かだが、芝生フェチらしく、見るとあっという間に興奮する。

津野田銀次郎(オス・3歳)

津野田銀次郎(オス・3歳)

吠えない、噛まない穏やかな性格。長女のもあなちゃんが生まれてからは、さらに周囲を気にしなくなった。だが、散歩が好きでたまらない。マテはきかなくなり、凄い力でリードを引いていく。

実験1 物陰からオモチャを投げる

犬の背後から前に向かってオモチャを投げる。どのあたりで視界に入ってくるのだろうか。

銀次郎

銀次郎

目の前に来てようやく気付く
予期していない方向からオモチャが飛んでくるので、上を見て待っているわけではない。したがって、視野に入ってすぐに気づくということはなかった。

むぎ

むぎ

早い時で落ちる寸前に目が動いた
この実験では動体視力はあまり関係がないよう。視界に何か動くものが入ってきたとわかったのは、鼻先より下までオモチャが来た時。予想できないと難しい。

実験2 無心で近づいていく

気配を殺し、音を立てずに犬の背後に座る。そして少しずつ顔を近づけていくと、どのあたりで気づくのか。

銀次郎

銀次郎

気配は感じているようだが
「後ろに何か来た、誰かいる」という気配は早々に感じ取ったようだった。しかし性格的なものなのか、それをすぐに確認する、という行動はほぼなかった。

むぎ

むぎ

音に敏感なだけに耳が動く
むぎは音とにおいに敏感だが、視野は狭いかも、というのが飼い主の思うところ。背後に人が座った瞬間から、確かに耳で後ろを気にしているようであった。

実験3 座って念を送る

超常的な実験。背後から手のひらを犬に向けて念を送ると、気がつくものなのだろうか。

銀次郎

銀次郎

銀次郎


なーにしてるのーって余裕あり
後ろでなんかしてるなって気づくのだが、それでハッとすることもなし。ゆっくりと振り返って確認。ドキッとしたり、ピンチだという行動はなかった。

むぎ

むぎ

勝手にやっててちょうだいと……
写真のように最接近しても振り向かず。むぎはもうわかっている、後ろに人がいると。だが、危険でないこともわかっているので気にしないのである。

あほらし……

あほらし……

↑すでに気づいている

アナタイルノワカッテルカラ
いろいろな実験を行ってきて、もうあらかた事情がわかっているので、付き合ってくれなくなった。

実験4 立って無心で近づく

先ほどは座って低い位置から。ここでは立ち上がって少し上からも気配を感じさせてみる。

銀次郎

銀次郎

まったく気にせず、オモチャに夢中でそれどころではない
後ろから何かが近づいていることは早々にわかった。だがこちらもそれどころではないといった感じで、いつオモチャが解き放たれるかのほうがプライオリティが高いのだ。

むぎ

むぎ

気づいているけれど、目の前のオヤツから目が離せない
目の前にオヤツを持って、マテをさせているところへ背後から近づいて行ったのだが、すぐにむぎの耳は後ろを気にした。だが、オヤツが気になって振り向くことなし。

実験5 立って念を送る

「念を送る」立ち上がってのパターン。犬たちはもう飽き始めていたのだが……。

銀次郎

銀次郎

立って念を送る


お尻触ってももう無視です
銀次郎もすでにのんびりモード。何かやってる人たちがいる、と理解して安心しているのか、最後は触っても確認も何もしないのです。

むぎ

むぎ

誰がいるかわかっちゃってるからね
後方上部から手のひらを広げて念を送る。でも実験も数々こなして、何となく何をやっているのかわかっている様子。

実験6 物が視界の上に来ると?

最後は長い棒状のものを上から伸ばしていくとどういう反応が出るかという実験。

実験6 物が視界の上に来ると?

銀次郎



最後は長い棒状のものを上から伸ばしていくとどういう反応が出るかという実験。



鼻先まで来たところで「んっ」と顔を上げる


鼻先まで来たところで「んっ」と顔を上げる
耳の上から目の上あたりまでは気付かず。鼻先のあたりまで伸びてきた時に、「何か来た」というように上を仰ぎ見た。

横からの反応はいかに


横からの反応はいかに
銀次郎の場合は横から伸ばしてみる実験も行う。真横に来てもまだ反応なし。鼻よりかなり前まで来て目が動いた。

横からの反応はいかに

むぎ



むぎ



鼻先よりも少し前まで来て「何っ」と目をやる


鼻先よりも少し前まで来て「何っ」と目をやる
こちらも銀次郎とほぼ同じようなところで反応。銀次郎よりはもう少し前まで来てから不意に目を上げた。そして「邪魔よ」と手で払った。

かなり上だとどうか


かなり上だとどうか
先ほどよりかなり上から伸ばすと、鼻を越えても気づかず。高いほうが、より前に来ないと見えない。

こんな死角もあるんです モデル犬死角エピソード

性格や生活環境で犬の死角は変わるもの。今回のモデル犬の死角も個性的だ。

むぎ

お気に入りの場所では死角だらけ
むぎは広いベランダの芝生の上が大好き。ここに出ると日差しが気持ちいいのか、うつらうつらしてくる。我々スタッフがいてもお構いなしだから、ある意味死角だらけなのだ。

何も目に入りません

何も目に入りません

はじめは絶対に後ろには回らせないぞ
撮影開始当初は、我々はどこの馬の骨ともわからない輩。だから自分の背後には回らせず、絶えず注意深くポジショニングに留意する。

あなたたち、一体何!?

あなたたち、一体何!?

後ろにまわらないで!

後ろにまわらないで!

大丈夫! お姉ちゃんが守ってくれる! きっと……

大丈夫! お姉ちゃんが守ってくれる! きっと……

抱っこされてる時はお尻は無防備なのです
飼い主の脇に抱きかかえられた時のむぎは無防備だ。お尻は丸出し、後方も気にしない。いやできないか。抱っこされている安心感もあるのかもしれない。

銀次郎

抱きつかれても全然平気なの
津野田家の長女・もあなちゃんが突然後ろから抱きついても、もう慣れたもので驚きもしない。お兄さんだね。でも、大好きなオモチャを抱えている時は、耳が気配を伺っていた。

目はオモチャ 耳はもあなちゃん……

目はオモチャ
耳はもあなちゃん……

スキにしてくれ~

スキにしてくれ~

外に出ても特にキョロキョロしない
外に出るのが好きだから、人がたくさんいても気にせずズンズン進んでいく。かなり警戒心は薄れていて、邁進するだけ死角ありか。

次はぜひ向こうへ!

次はぜひ向こうへ!

穏やかに暮らしていると死角は気にならない?

今回のモデル犬として協力いただいた2匹もまた、独自の死角エピソードをいくつか持っていた。

まず、むぎの話。
上の写真の通り、はじめは警戒して他人を後ろに回らせなかった。だが、ほどなく「安全確認」ができたのか、どこにいてもあまり関心がないような様子に。

「基本的にはかなりおおらかな性格なので、死角がないというよりは、すぐに気にしなくなるみたいです」飼い主はそう言う。ストレスを溜めにくい気質なのだろう。さらに、大好きなオヤツやオモチャが出てくると、視線はそこに一点集中、まさに周りが見えなくなる状態で、死角だらけになってしまう。これはみんなそうかな。

そして銀次郎。
もあなちゃんが生まれたばかりの頃は、その存在や泣き声などにいちいちビクビクして戸惑いもあったという。
だが今は相当に鍛えられた。

「娘に後ろから突然抱きつかれても驚きませんし、夜中に突然娘が泣き出しても全然起きません」逆にもあなちゃんを踏みつけていくこともあるほどとのことなので、お互いもう空気のような存在なのだ。だが、初めて泊まる場所に行くと銀次郎は、しばらくの間そこをグルグル回るという。この場所が危険ではないか、大丈夫なのかを確認しているらしい。

この辺りは「死角がない」と言える部分か。環境によってきちんと使い分けているのがなかなかのものだ。

リラックスできる死角を作ること それが健康的日常

ボールの軌跡は眼中になしか

ぼ~

ぼ~


る~

る~


は~?

は~?


あっ!

あっ!

外で大好きなボールを後ろから投げる。すると視野に入ってからではなく、ボールが地面に着地する音で気付く。外の方が情報が多く、気持ちがいろいろなところに行ってるからか。

死角があるのはいいこと? 悪いこと?

適度に緩められる環境が望ましい

死角がない、ということは常に周囲を気にしているということ。それはつまり気を張っていることであり、そこには当然緊張と疲労が伴ってくる。

戸田先生は言う。
「ですから、食後や寝る前などのまったりしている時間は一日で一番死角が大きくなる時間ですが、これを大事にしてあげたいですね」

リラックスした時間も必要なのだ。また、愛犬の死角がどこにあるのかを把握しておくことも大事。そしてそれに気をつけて生活することも、飼い主には心得ていてほしいことだ。

後ろには立たないでってば!

後ろには立たないでってば!

死角から突然現れて怖がらせてはいけない

死角というのは見えていない部分、把握できていないエリア。だからここから何かが突然現れてくれば、当然犬は驚く、時に怖い思いをする。これは犬にとって快い体験ではない。

戸田先生は次の点に注意を促す。
「性格によって死角は大きく変わってきます。ビビリな犬はいろいろな方向にアンテナを巡らせていますから、ちょっとしたことでもすぐに反応します。そうすると世の中怖いものだらけという意識が強くなり、逆に鈍感な犬はあまり気にしないので、その意味では死角が多くなる傾向があります」

驚きが大きすぎると、それが攻撃に転化するともいう。つまり死角があまりない犬ほど、予期せぬ出来事に対する反応が大きくなる。どうせビックリするのであれば恐怖のビックリではなく、ボールやオヤツなどのワクワクのビックリを経験させてあげたい。

監修:戸田美由紀先生
Text:Takahiro Kadono Photos:Minako Okuyama Illustration:Yuko Yamada

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