【猫びより】【君に金メダル! 我が家のご長寿猫】みよちゃん(19歳)子分が2匹。マイブームはお風呂。

みよちゃんは19歳(♀)。きょうもひと風呂浴びてさっぱり。好物のササミを平らげて、ストーブの前でうつらうつら。なんとも優雅な老後生活を満喫中だ。(猫びより 2018年3月号 Vol.98より)

  • サムネイル: 猫びより編集部
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いい湯だな♪

「みよちゃん、お風呂入ろうか」

飼い主の田原由子(よしこ)さん(54歳)に声をかけられ、みよちゃんは浴室へ。残り湯の量を少なくした温(ぬる)めの湯に、肩までつけてもらう。肩周り、お腹周り、あごの下、お尻と、ちゃぷちゃぷ洗ってもらって、ご機嫌なみよちゃん。

あごの下を洗う

あごの下を洗う

「いい湯だな♪」の味を覚えたのは、この数ヶ月のこと。年をとってよだれが粘っこくなり、それが毛にこびりついて、拭くだけではきれいにならなくなったからだ。思いついて、由子さんが残り湯に入れてやると、最初は「えっ」という顔をしたが、すぐにまんざらでもない顔つきになった。

入浴後スタスタと、ストーブの前へ

入浴後スタスタと、ストーブの前へ

以来、ときどき、入浴を楽しむようになったみよちゃん。つい最近、奥歯を抜いてからは、いっそう気分がいい様子。ひと風呂浴びた後、一杯やって(お水だが)、好物のササミぶつ切りを一皿ペロリと平らげ、ストーブの前に陣取る。

「ヒゲが焦げちゃうよ!」と言われても、まるでストーブに恋したみたいに離れないみよちゃんなのだ。その満ち足りた姿を見るにつけ、由子さんは、みよちゃんに初めて会った2年前の、放心したような目を思い出す。

若造の教育係に

そのときのみよちゃんは、17歳。飼い主のおばあちゃんを亡くし、家が取り壊されることになって、行き場のない状態だった。

年寄り猫に新たな飼い主が見つかるのは至難だ。ところが、保護団体「アリスの会」経由で里親話を持ち込まれた由子さんは、すぐに引き取ることにした。先住保護猫のクロ(当時4歳半♂)の社会性のなさにほとほと手を焼いていたからだ。クロは、渋谷川の護岸に落ちて上がれずにいたところを、餌を落として命をつなげ、何日もかけて救助した子猫だった。ところが、4年たってもビクビクとノラ気質が抜けない。ニャン生経験の豊富な老猫なら、クロにみっちり家猫教育をしてくれるかもしれないと、由子さんは思ったのだった。

来客を怖がるクロ

来客を怖がるクロ

みよちゃんは、やってきたその日に、クロを一瞥(いちべつ)で瞬殺し、子分にしてしまった。ニンゲンが怖くてたまらないクロが、ピンポンの音にもおびえ、押入れにこそこそ隠れるのを、「根性なし。バッカじゃないの」と言いたげに見やる。クロは、そんな度胸の据わったみよちゃんを「姐さん」とあがめ、姐さんのウンチの後の砂かけまで進んでする子分ぶり。2匹揃って窓際でひなたぼっこする様子は、「みよちゃんを迎えてよかった」と、由子さんに心から思わせた。

みよ姐さんのトイレの後始末をすべく、待機するクロ(写真提供・田原由子)

みよ姐さんのトイレの後始末をすべく、待機するクロ(写真提供・田原由子)

「驚いたのは、みよちゃんの食欲。ええ、やって来たその日からモリモリと。『枯れた年寄り猫を看取る』つもりで迎えたのですが、予想外れの達者で豪気なおばあちゃんでした。たぶん、牛が来ても動じない(笑)」

婆さんが一番エライ

みよちゃんとクロの平和な暮らしは続き、クロも何とか由子さんに心を許すようになった一昨年の初夏のこと。またしても、渋谷川に落ちて呆然と上を見上げている、かつてのクロそっくりな若いノラを発見。由子さんが保護団体「ねこけん」に相談すると、すっ飛んできてくれて、無事救助できた。

クロと大吉が落ちて上がれなかった渋谷川

クロと大吉が落ちて上がれなかった渋谷川

3匹目の猫になったこの子は、「大吉」という立派な名をもらったものの、クロと血縁なのか同じく超ビビリ。風呂場に籠城して固まったまま、丸2日、何も食べない。

そこで、みよちゃんの出番だ。

ずっと押し入れに隠れていた大吉

ずっと押し入れに隠れていた大吉

「あのさ、この子の前で、ご飯食べて見せてくれる?」

そう頼むと、スタスタと風呂場に行き、大吉用の山盛りのごちそうを一気に完食するみよちゃん。それを見た大吉は、ご飯を食べだした。また、人に飼われたことのない大吉は、システムトイレの使い方がわからず、バスタオルにおしっこを。

「みよちゃん、この子の前で、トイレを使って見せてやってくれる?」

その後、大吉はちゃんとトイレでしてくれるようになった。いまだ由子さんに触らせない大吉だが、クロには大甘えだそうな。

ウマウマ~と、ササミぶつ切りをあっという間に平らげ「食べちゃった。もっと食べたい……」

ウマウマ~と、ササミぶつ切りをあっという間に平らげ「食べちゃった。もっと食べたい……」

「『世の中で一番偉いのは、婆さんだよ』って教え込んでいるので、クロも大吉も、みよちゃんと私には絶対服従です(笑)」そんな由子さんの夢は、定年後、田舎に猫屋敷を作ること。みよちゃんのように飼い主に遺された猫を、何匹かでも引き取ることができたら、と考えているそうだ。

由子さんの定年は、まだまだ先だけど、ひょっとしたら、みよちゃん、猫屋敷の大姐御になっていたりして……。

文・写真 佐竹茉莉子

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