【獣医師監修】犬の去勢のメリットやデメリット、手術方法や時期、リスクと効果、費用は?

【獣医師監修】犬の去勢のメリットやデメリット、手術方法や時期、リスクと効果、費用は?

愛犬の去勢を検討している飼い主さん、必読です! オス犬の去勢には、心身両面からメリットもあれば、デメリットも存在します。それらを知り、あとで後悔しないような選択をしてあげたいものです。

  • サムネイル: PECO編集部
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犬の去勢の効果は?「マーキング・ケンカの軽減」

犬の去勢の効果は?「マーキング・ケンカの軽減」


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オスは去勢をしたほうが飼いやすいと、目や耳にしたことがあるのではないでしょうか?

理由はまず、性格面の変化が挙げられます。

オスは、男性ホルモンとも呼ばれるテストステロンの影響でマーキングを頻繁にしたり、攻撃性が出るケースもあります。

去勢後は男性ホルモンの分泌が抑えられるため、マーキングをはじめ、とくに未去勢のオス同士で起こるケンカを軽減することができるのです。

実際に、マーキングを直したいとドッグトレーナーや行動治療を行う獣医師に相談すると、まずは去勢をすすめられるでしょう。

ただし、マーキング行動が癖になってしまっている場合、去勢をしても行動改善が見られない場合もあります。

攻撃性に関しては、血統や生活環境や飼い主さんの接し方などによって行動の出かたは異なってきますが、去勢後は性格が多少なりとも穏やかになる例も少なくありません。

犬の去勢のメリットは?「ストレス軽減・行動改善」

去勢をすると、男性ホルモンの分泌が抑制されるので性衝動が起こりにくくなる効果があります。

オスは発情中のメスのホルモンのにおいを嗅ぐと、興奮してしまいます。

発情中のメスを求めて、庭や玄関、散歩中に脱走して迷子になるオスもめずらしくありません。

去勢をすれば、メスが原因で迷子になりにくくなるでしょう。

ドッグランなどで、発情期だとは気づかず訪れているメスと交配してしまったり、そうしたメスをめぐって未去勢のオス同士が争ってケガをしたりさせたりする心配もありません。

さらに、満たされない性的欲求から解放されてストレスが軽減できます。

万病のもとであるストレスを減らしてあげられるのも、メリットのひとつです。

去勢によって生殖器に関係する病気を予防できるのも、大きなメリットと言えます。

特にシニア期に入ると前立腺疾患が起こりやすくなりますが、去勢手術によって精巣を取り除くと前立腺が委縮するので、前立腺肥大症や命にも関わる前立腺腫瘍にかかりません。

そのほか、精巣腫瘍、肛門周囲腺腫といった病気を防ぐこともできます。

犬の去勢のデメリット、後悔の理由は?

犬の去勢のデメリット、後悔の理由は?


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去勢をすると、性ホルモンの分泌バランスが崩れるために太りやすくなるというデメリットがあります。

去勢後は、適切な食事管理と、筋肉がつけられるような運動を積極的に行うようにしましょう。

個体差がありますが、ホルモンバランスの乱れによって毛づやが悪くなる犬もいます。

毛質や毛色が変化するケースも、まれにあります。

もともと臆病な性格の犬が、去勢後に自信を無くしたり、さらにシャイになってしまった例を目の当たりにしたドッグトレーナーもめずらしくありません。

犬のプロの経験値から語られるケースですが、アグレッシブさに関連する男性ホルモンの分泌が減ることが影響しているのかもしれません。

愛犬が臆病で心配ならば、社会化やドッグトレーニングなどをとおして愛犬が自信をつけてから、去勢をするとよいでしょう。

これらの理由が、去勢のデメリットでもあり、去勢をして飼い主さんが後悔していることのようです。

去勢や避妊手術が犬の寿命にどう影響するかという研究が、多くなされています。

結論から言えば、去勢によって長生きするとする説と、逆に寿命が短くなるとする説と、ほとんど有意差が見られないとする説があり、去勢と寿命の関係性は明言はできない段階だと考えられます。

犬の去勢時期はいつから可能?

犬の去勢時期はいつから可能?


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犬の性成熟期は、だいたい生後7ヵ月頃。

オスはメスと違って発情出血がないので、メスよりもオスの飼い主さんのほうが手術を急ごうとする傾向は少ないようです。

とはいえ、生涯にわたってしゃがんでおしっこをしてもらいたいならば、片脚を上げて排尿するスタイルが定着する前に行うのがベスト。

同居犬や散歩で出会う犬のマネをするなどして、去勢しても脚を上げるようになる可能性は残りますが、去勢を性成熟前に行うひとつの利点と考えられます。

物理的には、生後2~3ヵ月から去勢手術は可能です。

欧米では保護犬を譲渡する前に、子犬でもほとんどが去勢を済ませます。

ただ、幼齢すぎるうちに去勢をすると、肥満傾向が高まる可能性があるといった研究結果もあり、一般の家庭犬であればそれほど急ぐ必要はないでしょう。

かかりつけの獣医師と相談しながら、愛犬にベストな去勢の時期を飼い主さんが決めてください。

たとえば永久歯が生えたところに残ってしまった乳歯を抜くとか、フレンチ・ブルドッグなどの短頭種では鼻腔狭窄や軟口蓋過長症の処置を去勢手術時に行うといったことも可能です。

犬の去勢手術の方法やリスクと費用は?

犬の去勢手術の方法やリスクと費用は?


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オスの去勢手術は、睾丸を摘出する方法が一般的です。

動物病院によって異なりますが、日帰り入院から数泊の入院までで、メスの避妊手術よりもオスの去勢手術のほうが手術は短時間で済みます。

去勢手術は全身麻酔で行うため、短頭種や老犬などには麻酔によるリスクが多少高くなります。

けれども、適切な術前検査を行い、麻酔の投与量をコントロールすれば問題ないため、必要以上に麻酔を恐れる必要はありません。

麻酔が心配であれば、獣医師によく相談して不安を解消しましょう。

去勢手術の費用は、動物病院によって異なります。

術前検査と手術と1泊入院で3万円程度が目安になるかもしれません。

自治体によっては去勢手術の助成金を出している場合もあるので、必要であれば、術前に動物病院や自治体に問い合わせてみてくださいね。

犬の「去勢手術」まとめ

犬の「去勢手術」まとめ


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当然のことながら、犬の去勢手術にはメリットもあればデメリットもあります。

生殖器の病気をはじめ、ストレス軽減や行動面の改善につながるのがメリット。太りやすくなるのが、よく聞かれるデメリットと言えます。

メリットとデメリット、さらには性格やほかの病気との兼ね合いで、去勢手術を行うのであればその時期を獣医師と相談のうえで決めましょう。

一般家庭で未去勢オスや未避妊メスなどの多頭飼育をしている場合は、とくに前向きに去勢や避妊を検討したいものです。

監修者情報

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箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科

ライタープロフィール

ライタープロフィール


臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。

コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally

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