【獣医師監修】ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)の症状と予防法

【獣医師監修】ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)の症状と予防法

咳とくしゃみが特徴の、ケンネルコフ。 成犬では軽症のケースもありますが、感染力が高く、空気感染をして広がりやすいのがやっかいな病気です。 子犬や老犬では、命に危険が及ぶ可能性も。 愛犬が感染源にならないためにも、症状や予防法を頭に入れておきましょう。

  • サムネイル: PECO編集部
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ケンネルコフの原因

ケンネルコフの原因


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ケンネルコフは、数種類のウイルスや細菌などが原因となり、単独感染や複数感染で起こる病気です。
ケンネル(犬舎)という名がついている理由は、感染場所として、ペットショップや保護施設などといった複数の犬がいるところで多く発症するからです。

ケンネルコフを引き起こす主な原因となるウイルスとしては、イヌパラインフルエンザウイルスとイヌアデノウイルスⅡ型が知られています。
さらに、気管支敗血症菌(ボルデテラ菌)も主因のひとつで、前述のウイルスなどと複合感染をすると重症化する恐れがあると考えられています。

かつては、ジステンパーウイルスも関係すると考えられていました。
確かに、ジステンパーに感染しても咳の症状が出ます。
けれども、ケンネルコフはジステンパーとは違う気管気管支炎で、がんこな咳が特徴です。

ケンネルコフの初期症状から末期症状まで

ケンネルコフの初期症状から末期症状まで


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伝染性気管気管支炎とも呼ばれるケンネルコフは、病名のとおり咳が主症状です。
原因となるウイルスや細菌のうち、ひとつにしか感染しないと軽症になるケースもあります。
たとえばイヌパラインフルエンザの単独感染の場合、発熱もなく、食欲もふだんどおり。
突然に笛を鳴らすような咳が始まり、くしゃみをすることがある程度で、発症から6~8日間かけてウイルスが排出されると完治するでしょう。

ケンネルコフのほとんどは、3~10日の潜伏期間を経て発症します。
特徴的な症状は、ガチョウが鳴くような高音の短い咳。
興奮時や運動後、気温の変化などによって咳はひどくなります。
元気でも、吐くような様子を見せる例や、微熱を伴う例も少なくありません。
他のウイルスや細菌と混合感染をした場合、膿の混じる鼻汁を出したり、くしゃみをしたり、食欲や元気がなくなったりします。
重症化すると、高熱や肺炎といった症状を起こし、抵抗力の弱い子犬や老犬、ほかの病気にかかっていて免疫力が落ちている成犬では死亡するケースもあります。

ケンネルコフの検査と診断方法

ケンネルコフの検査と診断方法


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ケンネルコフを疑って動物病院を訪れる場合、飼い主さんは以下を伝えるようにしましょう。

・いつから咳やくしゃみなどが始まったか
・症状が現れる数日~2週間以内に、トリミングサロン、ペットホテル、ドッグラン、オフ会など、多数の犬が集まる場所を訪れなかったか
・多頭飼いをしている場合、ほかに咳だけという軽症ののちに自然治癒をした犬がいないかどうか
・混合ワクチンを最後に接種したのはいつか

それらの問診ののち、獣医師は症状を確認するとともに、レントゲン検査や、必要に応じてウイルスや細菌やマイコプラズマの分離・同定検査を行います。

ケンネルコフの治療法

ケンネルコフの治療法


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ケンネルコフはその原因によって、治療法が異なります。
パラインフルエンザやイヌアデノウイルスⅡ型に感染していた場合、これらに効く薬はありません。
対症療法として、咳止めや気管支拡張剤を用いるケースが多いでしょう。
細菌とマイコプラズマが原因だとわかれば、抗生物質が有効です。
気管支拡張剤とともにネブライザーで抗生剤を吸入させると即効性が期待できます。

発症中の犬は、咳やくしゃみでほかの犬に空気感染をさせてしまうため、多頭飼いの場合は治療中は隔離をする必要があります。
飼育環境はこまめに換気を行ってください。
もちろん、ほかの犬が多く集まる場所への出入りは控えましょう。
人間にうつることはありません。

ワクチン接種で予防を

ワクチン接種で予防を


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最悪のケースでは愛犬の命を奪うこともある感染症なので、予防が肝心です。
イヌパラインフルエンザとイヌアデノウイルスⅡ型に関しては、ジステンパーやパルボウイルスなどのコアワクチンと呼ばれる重要度の高いワクチンとの混合ワクチンを打つことで、予防が可能です。
ただし、イヌパラインフルエンザとイヌアデノウイルスⅡ型の両方を含む混合ワクチンは、5種~9種混合ワクチンになります。

抗生物質での治療が可能な細菌やマイコプラズマに関しては、ワクチンでの予防はできません。
けれども、ケンネルコフに有効なワクチンを定期接種して抗体を獲得していれば、混合感染による重症化は免れられる確率が高まります。
また、人のインフルエンザ同様、ワクチン接種をしていても、軽症のことが多数ですがケンネルコフにかかることがあると覚えておいてください。

混合ワクチンは、母乳により母体移行免疫をどれほど獲得できたかにもよりますが、子犬期は生後60日前後に初回接種をしたのち、合計2~3回の追加接種をします。
成犬になったら、1~3年ごとの追加接種を、かかりつけ医と相談の上、行いましょう。

そのほか、ケンネルコフは風邪の総称とも言える病気なので、病中病後など愛犬の免疫力が下がってそうなときは犬が集まる場所へ出かけるのは避けるなどの予防策も柔軟に行ってください。

まとめ

まとめ


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ケンネルコフは原因となるウイルスや細菌が複数存在するため、何度か罹患を繰り返す可能性のある感染症です。
乾いた高音の咳、くしゃみ、詰まったものを吐き出すかのような様子などが見られたら、ほかの犬にうつさないためにも、早めに動物病院へ。
定期的なワクチン接種などでの予防も重要です。

監修者情報

監修者情報


箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科

ライタープロフィール

ライタープロフィール


臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。

コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally

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