【獣医師監修】感染力が高いジステンパーから愛犬を守ろう

【獣医師監修】感染力が高いジステンパーから愛犬を守ろう

ジステンパーは感染力が強く、致死率が高い病気です。 有効な治療薬がないので、予防をしっかりと行うのが重要。 病気とワクチンの接種方法について、ぜひ正しい知識を身につけておきましょう。

  • サムネイル: PECO編集部
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ジステンパーの原因

ジステンパーの原因


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ジステンパーはウイルス感染症です。
人のはしか(麻疹)に似たウイルスと考えられるイヌジステンパーウイルスが、犬やフェレットなどに感染するのが発症の原因。
狂犬病やレプトスピラ症などは動物から人間にうつる可能性がある人獣共通感染症ですが、ジステンパーウイルスはペットから人にはうつりません。

主な感染経路は、ジステンパーにかかった犬のくしゃみなどを浴びてしまう飛沫感染と、尿や目ヤニなどに触れてしまう直接感染のふたつ。
犬はよく足裏を舐めるので、散歩中に感染犬の尿を踏んでしまい、それを帰宅して舐めて感染するケースもあります。
ジステンパーウイルスは非常に伝染力が強いため、予防が重要です。

ジステンパーの初期症状から末期症状まで

ジステンパーの初期症状から末期症状まで


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犬の鼻や口から侵入したジステンパーウイルスは、全身に広がっていきます。
ウイルスに感染すると3~6日の潜伏期間を経て、食欲不振や発熱、元気がなくなるといった初期症状が出現します。
その後、高熱、嘔吐、下痢、血便、膿のような鼻汁、結膜炎などに伴う目ヤニ、咳、くしゃみなどが出現して、元気を消失します。
末期になり脳にまでジステンパーウイルスが及ぶと、異常行動やけいれんが見られ、下半身にまひなどを生じるケースも。こうした神経症状は、ジステンパーを発症した犬の2割ほどに現れます。

免疫力の高い成犬では、初期症状のみや、無症状のまま治ってしまうことがあります。
けれども抵抗力の弱い子犬や老犬がジステンパーウイルスに感染すると、致死率がかなり高くなるので要注意。

ジステンパーは、ウイルス検査によって確定診断を行います。
血液検査や症状などを見ながら診断を進めますが、症状は多岐にわたり、どのような症状が出るかは個体差があるので、最終的にはウイルス検査に頼らざるをえません。

飼い主さんは、もし下痢や嘔吐などが愛犬に見られる場合は、いつから始まったかと、血液が混じっていないかをメモして獣医師に伝えましょう。
高熱が出ている場合は、睡眠中でなくても鼻が乾きますので、自宅で愛犬の体温が測れない場合はよく観察しておいてください。

ジステンパーと診断された犬と同居のペットがいる場合は、ケージやドッグベッドなどをアルコール消毒したり洗濯したりしてウイルスを少しでも死滅させるように努めましょう。

ジステンパーの治療法

ジステンパーの治療法


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ジステンパーウイルスに有効な薬は、現在のところありません。
ジステンパーの確定診断が出たら、隔離病棟に入院をして対症療法を受けることになるでしょう。
脱水症状を防ぐ補液をはじめ、整腸剤や利尿剤、神経症状がある場合にはそれらを抑える薬を用います。

また、抵抗力が落ちるとほかの感染症への二次感染も懸念されます。
そのため、抗生物質などの投与も必要になります。

ジステンパーは予防が肝心

ジステンパーは予防が肝心


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ジステンパーは致死率の高い病気のため、ワクチンが開発されています。
ワクチンには、すべての犬が接種すべきだと考えられているコアワクチンと、補助的なノンコアワクチンに分類されています。
ジステンパー、パルボ、犬伝染性肝炎、狂犬病が、犬のコアワクチン。
狂犬病を除くコアワクチンは、3種混合(※製薬メーカーによっては細かく分類して4種以上の混合とするところもある)ワクチンとしてどの動物病院でも容易に接種が可能なので、定期的に接種しましょう。

生まれて最初にワクチンを接種させるのは、母体移行免疫を失う生後50~60日頃が理想的。
ただし、これは母体がワクチン接種などによってウイルスによる免疫を獲得していて、子犬が初乳を飲めた場合に限ります。
それが定かではない場合は、生後30日頃に初回、その約30日後に2回目のワクチンの接種を。
欧米では子犬の混合ワクチン接種は合計2回が主流ですが、日本では母体移行免疫が子犬の体内に残っていて初回のワクチンの効果が十分でなかったケースを想定して、2回目からさらに約30日後に、3回目のワクチンを打つケースもめずらしくありません。

ワクチン接種後、およそ2~3週間で抗体を獲得します。
成犬になったら、獣医師と相談のうえ1~3年に1回、追加でワクチンを接種していけば予防策は万全です。

たとえば、フィラリアの予防薬をもらいに行く時期に接種すると決めておけば、うっかり忘れを防ぎやすいかもしれません。

まとめ

まとめ


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ジステンパーは愛犬が死亡する危険性のある恐ろしい感染症です。
最大の対策は、ワクチンの定期接種。
とくに子犬で嘔吐や下痢が見られたら、早めに動物病院を受診するようにしましょう。

監修者情報

監修者情報


箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科

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ライタープロフィール

ライタープロフィール


臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。

コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally

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