【ドッグトレーナー監修】ミニチュアピンシャーのしつけ 始める時期と問題行動の対策

【ドッグトレーナー監修】ミニチュアピンシャーのしつけ 始める時期と問題行動の対策

ミニチュアピンシャーは活発で遊び好きなので、家の中でも外でも家族一緒に遊ぶことが大好きな犬種です。しかし警戒心の強さと自尊心の高さから初対面の人や犬に対して「吠え」や「噛みつき」等、しつけの問題に直面しやすい犬種でもあります。そんなミニチュアピンシャーのしつけについて、始める時期や問題行動、その解決方法を解説します。

  • サムネイル: PECO編集部
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ミニチュアピンシャーのしつけの時期はいつから?

ミニチュアピンシャーのしつけの時期はいつから?


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愛犬のしつけの開始時期は早ければ早いほどよく、理想としては「犬が家に来た日」から始めたほうがいいでしょう。

子犬の頃の学習スピードは私たちが思っているよりも非常に早く、「目にしたもの」「経験したもの」をどんどん吸収していきます。
家族として家に来た犬は、初めての環境の中で匂いを嗅いだり、音を聞いたり、飼い主さんたちの反応もよく見ています。
特に生後3週齢から12週齢の期間は「社会化期」と呼ばれる期間で、この時期に触れ合ったり、経験した様々な人やモノ、環境や状況は生涯を通じて慣れ親しむことができる、犬の一生の中でも非常に重要な期間といわれています。
この社会化期にどんな経験をするかが、その後の生活にも大きくかかわってきます。

一般的にミニチュアピンシャーの子犬が家に来る時期は最短でも生後8週齢からです。
12週齢になるまでの期間は短く1ヶ月ほどしかありませんので、できればミニチュアピンシャーが家に来る前から準備をしておくといいでしょう。

ミニチュアピンシャーの社会化期にするしつけ

しつけは犬が家に来た日から行うのが理想です。特に「社会化期」は次のようなポイントを並行して教えていく必要があります。

人間社会の刺激に慣れさせる社会化

人間社会の刺激に慣れさせる社会化


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犬の「社会化」とは犬が人間社会の中で暮らしやすくするために、さまざまな刺激に慣れさせることをいいます。人間にとってなんでもないことでも、犬にとっては怖いと感じることも多いものです。

犬は、特に「社会化期」を過ぎた頃から恐怖心が芽生え始めるため、それまでは初めて見るものに好奇心で近づけていても、恐怖心が芽生え始めると近づくことすら怖がってしまうことがあります。
家に子犬を迎えることが多い生後8週齢頃から12週齢は「社会化期」の真っただ中なので、日常生活の中で出会ういろいろな「音」「物」「人」「環境」などを経験させてあげる必要があります。

また、「社会化期」には体を触られることにも慣れさせておきましょう。
足先やしっぽ、耳、口周り、歯などは日々の健康管理にも必要になってきますし、子犬の頃から触られることに慣れておくことで、動物病院やトリミングサロンにいったときの負担が少なくてすみます。

こうした「社会化」は、「社会化期」だけで完了するわけではないので、12週齢を過ぎても継続的に行っていく必要があります。

トイレトレーニング

犬のトイレトレーニングで最も重要なことは環境作りです。
我慢できる時間が短い子犬の場合は、「行動範囲を狭めること」と、「排泄のタイミングを知ること」で成功経験を増やすことがポイントです。

失敗の予防をしてあげることが、成功経験につながり子犬のトイレ上達の近道になります。

クレート(ハウス)トレーニング

クレートトレーニングとは、犬にクレートが自分専用の安心できる寝床であることを教えるトレーニングです。
クレートトレーニングでは、クレートをそれぞれの犬の専用のハウスとして用いるため、「ハウストレーニング」と呼ばれることもあります。

クレートとは犬専用のハウスに使用されるもので、全体が覆われて扉がついていて持ち運びが可能です。
サークルやケージは、犬の行動範囲を制限する際に用いられ、ケージには天井がついていてサークルには天井がついていません。

犬の祖先であるオオカミは、洞穴や掘った穴などを寝床としていたため、犬も静かで薄暗い巣穴のような場所を寝床として好む習性があります。
そのため、全体が覆われていて静かで落ち着けるクレートは、犬のハウスとして非常に適しています。
クレートに対して「狭くてかわいそう」「閉じ込める場所」といったマイナスのイメージを持つ飼い主さんもまだまだ少なくないため、犬のハウスとしてケージやサークルを使用することも多く見受けられますが、外から丸見えのサークルやケージでは、音や光、飼い主さんの動きなど様々な刺激を常に気にしなければならないので、犬は落ち着いて休むことができません。

そのため、子犬のうちから寝床としてクレートに慣らしておくことで、日常的に一人で落ち着く場所ができますし、気持ちのオン・オフがつけやすく、安定した生活を送ることができるようになります。
慣れるまでは、クレートの扉や屋根が取り外せるものを選んでケージの中に寝床として入れ、クレート自体に慣れることから始めるといいでしょう。
また、クレートを寝床として好むようになっても、普段は扉を開けて自由に出入りができるようにしましょう。

子犬の頃からクレートトレーニングする大きなメリットは、犬が安心できる場所の確保だけでなく、病院や旅行時の安全な移動、災害時のストレスなども軽減してあげるためでもあります。
特に災害時など、避難所で一緒に避難生活をするためにはクレートに入って過ごすことが必須となるので、緊急時の備えとしてもクレートトレーニングをお勧めします。

クレートは愛犬の成長とともに大きさが合っているかを確認し買い換える必要もあるのでご注意下さい。
クレートの適切な大きさは、天井までの高さが犬の体高~体高+5センチ程度、奥行きが犬の体長~体長+5センチ程度が望ましいとされています。
犬がクレートの中で無理なく回転できたり、横になって寝ることができる大きさを提供してあげましょう。

人や物、犬に対しての甘噛み

本来子犬の時期は、兄弟や母犬と噛み合って遊ぶことで、「噛んで遊ぶ」という欲求を満たし、どれくらい噛むと痛いのかという力加減などを学んでいきます。
そのため、生後8週齢までは母親や兄弟犬と一緒に生活することが非常に大切になります。
8週齢以降、家に子犬がやってきてからは、噛んでもいいおもちゃを使って飼い主さんが遊んであげることで噛む欲求を満たしてあげましょう。

また同時に、噛まれて困るものを犬が届くところに置かない、という環境作りも大切なポイントです。

コマンドトレーニング

コマンドトレーニング


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「コマンド」とは指示語のことで、「おすわり」や「まて」のような行動に対しての合図になるものです。

犬のトイレトレーニングのときであれば、ソワソワしたりニオイ嗅ぎの行動が見られたら「ワン・ツー、ワン・ツー」、クレートトレーニングのときであれば、クレートに入ろうとしているときに「ハウス」など、行動に言葉を付けることで、だんだんとその合図を覚えてくれます。

コマンドトレーニングは「社会化期」が過ぎてしまってからでも簡単に教えることができるので、焦ることなく毎日少しずつ教えてあげましょう。

「社会化期」のしつけで1番重要なのは、早いうちから教える・慣れさせるということです。
期間内に完璧に教えなければいけないというものではないので、愛犬の様子を見ながら焦らず毎日少しずつ継続して練習してあげてください。

ミニチュアピンシャーの子犬・成犬・性別によるのしつけの違い

基本的なしつけ方に違いはありませんが、一般的に子犬と成犬では子犬の方がしつけがしやすいです。
子犬の場合はまっさらな状態で1から教えることができますが、成犬になるとそれまでの経験や学習が行動に大きな影響を与えるので、上書きして新しいことを教えるのには時間と根気が必要になってきます。

性別の違いで言うと、どちらかというとオスは警戒心が強い傾向があります。
男性ホルモンによって攻撃性や縄張り性が強く出やすいので、獣医師と相談して時期を見て去勢を検討したほうが良い場合もあります。

ミニチュアピンシャーに起こりやすい問題行動

ミニチュアピンシャーに起こりやすい問題行動


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そもそも犬の問題行動とは、犬にとって「正常な行動」であっても、飼い主が困り悩んでしまう行動のことを指します。

問題行動が起こる要因は個体差、住環境などによっても異なりますが、犬種としての特性にも大きくかかわっています。
例えばミニチュアピンシャーはもともとネズミとりとして活躍してきた犬種なため、勇敢で活発、警戒心の強い犬種です。
ひとりでも獲物を追い、捕まえるという判断が求められていたため、家庭犬として飼われているミニチュアピンシャーでも次のような特性を持っています。

【特徴・性格】
・警戒心が強く吠えたり噛みついたりする
・相手を試す

警戒心が強く、自分より大きな犬にも果敢に向かっていく勇敢さのあるミニチュアピンシャーは、初対面の相手の反応を見るためにわざと軽く噛むなどの傾向があります。
また、その警戒心の強さから、家の外の音や来客、犬が意図していないときに触られるなどの時には、吠えや噛みつきといった身を守るための攻撃行動を示すことがあります。

【解決策】
そんなミニチュアピンシャーは、社会化期に良い経験をたくさんさせてあげることで、警戒心を和らげ問題行動を予防することができます。
警戒心の強いミニチュアピンシャーがストレスを感じないように、子犬のうちから人に触られること、飼い主さん以外の人と触れ合うこと、ブラッシングなどの健康管理に慣れさせておきましょう。
また、犬自身が触ってもらいたくて近づいてくるとき以外は、不用意に触らないでそっとしてあげることも大切です。
吠えに関しては、環境を見直して整えることが最善です。
ミニチュアピンシャーは刺激に対して過敏に反応しやすいため、例えば窓から外の様子が見えないようにガラスフィルムを張る、外からの音を聞こえにくくするために部屋の中で音楽などを流すなど、まずは吠えを誘発させてしまうような刺激を受けないような工夫をしてみましょう。
また、インターホンの音で吠えてしまう場合は、インターホンが鳴ったら特別なおやつをあげるなど、「音」と「うれしい経験」を結びつけることで、インターホンに対する警戒心が和らぎ吠えにくくなります。

ミニチュアピンシャーは訓練性能が高いので、「アイコンタクト」や「まて」といったトレーニングを積極的に行うと、飼い主さんとの絆が深まります。
飼い主さんに注意を向ける練習などをすることで、他の刺激を気にせず警戒心を和らげることができます。

ミニチュアピンシャーのしつけ&トレーニングの工夫・コツ

ミニチュアピンシャーのしつけ&トレーニングの工夫・コツ


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しつけやトレーニングをする上で最も大事なことは「愛犬を知ること」です。ミニチュアピンシャーとしての気質や愛犬の性格を知ることで、しつけやトレーニングの工夫をしてあげることができます。
そして「できなかった、失敗してしまった」ことを叱るよりも、「失敗させないための予防」と「飼い主さんにとって望ましいこと」をたくさん褒めることが大きなポイントです。

犬にとっての「褒め」は、おやつだけではありません。愛犬が好きなおもちゃで遊んだり、好きな行動をするというのは、時としておやつ以上のご褒美にもなります。
愛犬にとって、どんなことが苦手で、どんなことが好きなのかを観察し、好きなものをご褒美にしてあげることで、トレーニングの幅が広がります。

ミニチュアピンシャーのしつけ・トレーニングに役立つグッズ

おすすめできるしつけやトレーニングのグッズは「引っ張り防止用のハーネス」「コング」「フードポーチ」「ロングリード」があげられます。

「引っ張り防止用のハーネス」は、使用することで犬が前に進む力を分散してくれるので散歩中の引っ張りが軽減され、正しい位置で歩く練習がしやすくなります。
犬が正しい位置で歩けたら声をかけて褒め、その都度おやつをあげることで少しずつ散歩が上達していきます。
お散歩をしながらご褒美をあげるときは、腰から下げて使える「フードポーチ」などのグッズがあると、おやつをあげる時スムーズで非常に便利です。

「コング」は中におやつやフードを詰めることができるので、お留守番の練習や来客時の吠え対策、ドッグカフェなど足元でおとなしくしてほしいときなど幅広く使うことができます。
お留守番が多い愛犬にとっては、自宅で退屈しのぎができる非常に便利なグッズです。

「ロングリード」は、名前の通り長いリードでボール遊びやトレーニングの補助具としておすすめです。
ただし、場所によってはロングリードの使用を禁止している場所もあるため、周りに迷惑をかけないように正しく使用しましょう。

おすすめできないグッズは「電気の流れる首輪」や「チョークチェーン」などの首が締まるタイプの首輪です。
しつけ・トレーニンググッズとして見聞きすることがあるかと思いますが、使い方を間違えると効果が得られないだけでなく、犬に大きな怪我をさせてしまう危険性もありますし、飼い主さんと愛犬との絆が崩れてしまいます。

吠えたら電気が流れる首輪は、痛みや恐怖によって犬の吠えをやめさせる道具です。
非常に強い痛みを伴いますし、犬は常に恐怖におびえ委縮してしまいます。
犬が吠えることには何かしらの原因があるはずなので、恐怖心を与えることで吠えをやめさせても根本的な解決にはなりません。

また、チョークチェーンは訓練士がトレーニングをする際に使用することがある道具ですが、扱うには高い技術が必要になります。
使い方を間違えると、犬の首を痛めたり呼吸困難になってしまうため、命に係わるような怪我をさせてしまうこともあります。

このような犬に痛みや恐怖を与える道具を飼い主さんが用いることは非常に難しく、危険が伴うため使用することは控えましょう。

ミニチュアピンシャーのしつけ まとめ

ミニチュアピンシャーのしつけ まとめ


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警戒心が強いミニチュアピンシャーは、「社会化期」からいろいろな刺激に慣れさせることが大切です。
成犬になってから吠えや甘噛みなどが出やすい場合には、環境を変えたり、トレーニングをして犬が受け取る嫌な刺激を減らしてあげることが望ましいですが、もし成犬で吠えや噛みつきなどの問題行動で困っている場合には、自分でなんとかしようとする前にかならず専門家へ相談してください。
間違ったトレーニング方法は余計に状態を悪化させてしまいます。愛犬にあった正しいトレーニング方法を専門家に聞き実践しましょう。

監修者情報

監修者情報


鹿野 正顕(学術博士)
・学歴(大学・院、学部、専門分野)
麻布大学大学院 獣医学研究科 博士後期課程修了 
専攻:人と動物の関係学、犬の行動学

ライタープロフィール

ライタープロフィール


長根あかり Akari Nagane
・学歴:帝京科学大学 (生命環境学部 アニマルサイエンス学科)

・ライター歴:2年

・過去の執筆履歴:ペトこと 『楽しく教える犬のしつけ』『犬と寝るって幸せ』など

・飼っている犬種:雑種

「幼少期から動物が好きで将来は動物に携わる仕事がしたいと夢見ていた。

高校、大学と動植物について学び、大学2年の時に初めての犬に「保護犬」を迎える。

愛犬と共に行動学やアニマルセラピーについて学び、OPDES公認ドッグトレーナー資格、動物介在教育アドバイザー認定資格を取得。

現在は、自身の経験から保護犬についての相談や家庭犬のしつけ・トレーニングについてフリーで行っている。」

コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally

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