【獣医師監修】猫に牛肉を与えるメリットとデメリット

猫を室内で飼育している場合、キャットフードを主食として与えているケースがほとんどで、牛肉を食べさせる機会はあまり多くないでしょう。しかし、猫は本来肉食動物のはず。ここでは、猫と牛肉の関係について解説します。

  • サムネイル: PECO編集部
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

猫に牛肉をあげてもいい?

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結論からいうと、猫に牛肉を与えても問題はありません。

猫を始めとした肉食動物は、草食動物と比較して腸管が短いという特徴があります。肉は野菜などより消化しやすいので、腸が短くても消化し栄養を吸収できるためです。
また、栄養面においても、牛肉にはアミノ酸やビタミンAといった動物のカラダを作る上で必要な栄養素が多く含まれているので、猫にとっては有益な食べ物といえます。

生の牛肉は猫のカラダにいい?

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では、生の牛肉を猫に与える場合はどうでしょうか。これについては、賛否両論あるのが現状です。

猫に生の牛肉を与える2つのメリット

猫に生の牛肉を与えることのメリットの一つに「消化がしやすい」ということがあります。生肉を食べることで、肉食動物である猫本来の力を取り戻し、カラダの不調からも復活しやすいといわれています。

もう一つのメリットが、アミノ酸、ビタミンA、酵素など、猫にとって必要な栄養素を豊富に摂取することができる点です。牛肉は加熱することで栄養が損なわれるため、生で食べることでより多くの栄養素が摂取できるといわれています。

猫に生の牛肉を与えるデメリット

猫に生肉を与えるデメリットとしては、生肉そのものを主食とする場合、もしくは生肉を使った手作りご飯を主食として猫に与える場合、猫が摂取する栄養のバランスが崩れてしまう可能性が考えられます。

なぜなら、基本的に肉食動物は草食動物の肉だけでなく、内臓などを食べることで、草食動物が消化した草などの栄養素も摂取しているからです。そのため、スーパーで購入した赤身肉を与えても、猫にとって必要な栄養を全て補えるわけではありません。
海外では、生肉のみを食べ続けた犬の栄養に偏りが出たという報告も上がっています。

また、猫が野生の動物として生活していた頃には、小動物や昆虫などを食べて餓えをしのいでいました。当時はいくら肉食とはいえ、牛を食べるような機会はなかったでしょう。

ちなみに、日頃猫が食べているキャットフードには、猫にとって必要な栄養素がバランスよく配合されています。

もう一つのデメリットは、衛生面の問題です。生食可能な新鮮な肉はなかなか手に入りにくく、それより鮮度の落ちる加熱用の肉を与えた場合は、細菌性の胃腸炎などを起こすおそれもあります。

なお、猫が細菌性の胃腸炎を起こした場合には、以下のような症状がみられます。

●下痢
●腹痛
●発熱
●嘔吐
●頭痛
●寒気

猫に牛肉を与える際の注意点

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カロリー過多に注意

生・加熱を問わず、猫に牛肉を与える際に気をつけたいのがカロリー過多です。たとえば同じ牛肉の赤身でも、国産ものと輸入ものではカロリーが異なり、ヒレ肉の場合、国産品のカロリーは、輸入品と比較して約1.5倍高くなっています。これは、含有している脂肪分の違いが影響しています。また、牛肉の赤身は豚肉や鶏肉よりもカロリーが高いので、与えすぎると肥満の原因になりかねません。

猫はカラダが小さいため、牛肉についている少しの脂肪を食べただけでも、かなりのカロリーを摂取してしまうことになります。猫に牛肉を与える際は脂肪の部分を取り除き、少量をキャットフードのトッピングとして与えるなどの工夫をしてください。

味付けをしているものは禁物

牛肉自体には猫にとって有害な成分は含まれていないとはいえ、人間が食べているような味付けされた牛肉を与えるのは厳禁です。たとえば人間用に塩焼きにした牛肉は、猫が食べると塩分の過剰摂取になってしまいます。

過剰摂取もNG

牛肉に含まれているビタミンAは「脂溶性ビタミン」と呼ばれ、摂取過剰分は体内から排出されず蓄積されてしまいます。牛肉の中でも、とくにレバーにはビタミンAが豊富に含まれているので注意が必要です。

猫はビタミンAの過剰摂取により「ビタミンA過剰摂取症」を患うおそれがあり、この病気を発症すると、カラダの痛みや変形といった重大な症状が現れます。猫に牛肉を毎日のように与え続けるのは避け、あくまでも副食やおやつ程度の量にとどめましょう。

牛肉は、肉食動物の猫にとってうれしい食べ物です。ただし、良質なフードをしっかり食べている場合、それ以外の食事は基本的に必要ありません。ほかの食べ物を与えることで、それまで食べていたフードを食べなくなることもあります。食欲が落ちていて、とにかく何か食べさせたい時などに参考にしてください。

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