【獣医師監修】猫の脱肛 考えられる原因や症状、治療法と予防法

猫の脱肛とは、肛門から粘膜の一部や直腸が出てしまっている状態のことを指します。猫にとっては、意外と珍しくない症状です。ここでは、猫の脱肛の原因や治療法などについてみていきましょう。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

脱肛の症状

猫が脱肛になると、肛門から粘膜の一部や直腸がはみ出してしまいます。肛門から、肛門と直腸の境目付近にある粘膜が飛び出している状態を「肛門脱(こうもんだつ/いわゆる脱肛)」、肛門から遠く離れた場所にある直腸の粘膜が伸びて外に飛び出してしまった状態を「直腸脱(ちょくちょうだつ)」と呼びます。肛門脱を部分脱出、直腸脱を完全脱出と呼び分けることもあります。

肛門脱の場合、肛門から飛び出した直腸の粘膜がソーセージのように見えます。一方、直腸脱の場合は、肛門にドーナツ状のふくらみができます。どちらにしても痛みを伴うことが多く、患部を舐めたり、排泄を嫌がったりする仕草をみせます。

脱肛の原因

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猫が脱肛を起こす原因として、次のようなものがあります。

基礎疾患

感染症や寄生虫症、胃腸の疾患などがあった場合、直腸に炎症が起こることがあります。これにより、粘膜の面積が増え、脱肛を起こしてしまいます。

強いいきみ

メス猫が分娩する時などに、お腹に力を入れて腹圧が高まることで、お腹が風船のように大きく膨らみ外に広がります。この時に、いきむ力が強すぎると、肛門付近の粘膜や直腸の一部、もしくは全部が外に押し出されてしまい、脱肛が発生します。

肛門括約筋が弱まる

栄養の不足や内科的疾患などにより、肛門を閉める役割をしている肛門括約筋(こうもんかつやくきん)の筋力が弱くなってくると、腹圧により腸が押し出されてしまい、脱肛が発生します。

便秘

便秘になった時は、排便の時に通常よりも強い力で便を押し出そうとします。この時に腹圧が強くなり、脱肛を引き起こすことがあります。

脱肛の治療方法

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応急処置

脱肛してしまった時に、粘膜や直腸が脱出した部分に潤滑剤を塗り、やさしく肛門の中に戻します。ただし、腫れがひどい場合や、猫が嫌がる時は無理をせず、動物病院へ連れて行きましょう。

外科手術

脱肛の症状が軽い場合、肛門周辺の皮膚を縫合することで、脱出が起きにくいようにします。しかし、何度も脱肛を繰り返しているような場合は、直腸や、直腸のさらに奥にある結腸をお腹の中に固定するための手術が必要になります。また、脱出部分が壊死している場合は、直腸の切除と吻合が必要になります。

便秘の解消

便秘を解消することで、排便時にいきむ力を弱めることができます。食物繊維を含む食べ物を与えることで、腸の運動を活発化しましょう。

最近では猫の便秘用フードが市販されているほか、サツマイモやバナナなど、食物繊維が豊富に含まれている食材をフードに混ぜて与えるのも効果的といわれています。ただし、食事による治療を必要とする時は、獣医師の指示のもとで適切に行いましょう。

脱肛の予防方法

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猫の脱肛を予防するためには、栄養不足を解消し、便秘を防ぐための生活習慣を取り入れることが大切です。繊維質など便秘に効果がある栄養素を猫の食生活に取り入れ、腸の働きを活発にしましょう。

また、脱肛している時に限らず、日常的に排便をしやすくするために、肛門周辺を清潔にした後、ワセリンを塗っておくのも効果的です。

猫の脱肛は痛みを伴い、排便もしづらくなってしまうので、基本的にはすぐに動物病院へ連れて行く必要があります。日常的に肛門周りや便の状態をチェックし、猫のカラダに異常が起きていないか確認するようにしましょう。

また、栄養不足や基礎疾患が原因になることも多いので、普段から食生活や運動に気をつけるとともに、定期的に健康診断を受け、愛猫の健康状態をしっかりと把握しておくことも大切です。

猫が脱肛になってしまっても、できるだけ早く発見し、適切な処置をしてあげることで、猫のカラダにかかる負担を最小限にとどめることができます。大切な愛猫がいつまでも健康で過ごせるよう、できる限りのことをしてあげてください。

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