【獣医師監修】高齢犬に起きる突然のふらつき。前庭神経炎の予防法や治療法

今までまっすぐ歩いていた犬が、ふらつくようになってしまった…そんな症状が現れた時は、前庭神経炎を患っているかもしれません。この病気、突然発症するのですが、どのような病気なのでしょうか。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

犬の前庭神経炎とは?

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犬の前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)とは、前庭神経と呼ばれる脳神経に炎症が起きる病気です。犬の耳の奥には内耳と呼ばれる部分があるのですが、この内耳にはカタツムリのような形をした蝸牛と、プレッツェルのような形をした三半規管があります。蝸牛は蝸牛神経につながっていて、音を脳に伝える機能を持っています。そして、バランス感覚を司る三半規管は、カラダの位置情報を脳に伝える機能を持っています。この三半規管が前庭神経とつながっているため、前庭神経炎を発症すると犬が自分の頭やカラダをコントロールできなくなり、ふらふら歩くようになるのです。

前庭神経炎になると、歩く時に足がふらつく以外にも、くるくる円を描くように歩いたり、歩行中に突然こてんと倒れたりしてしまうといった症状が現れます。ほかにも、突然頭を横に向けたり、かしげる仕草をするようになったり、視線が安定せず、眼球が震えたりすることもあります。また、水を飲んだりご飯を食べたりすると吐いてしまい、よだれを垂らし続けることもあります。いずれも、前庭神経に炎症が起こり、バランス感覚に影響が出ていることが原因です。

このように、飼い主から見ても明らかに犬がおかしな歩き方をするようになるので、すぐに異常を察知できると思います。普段から犬がどのように歩いているかを観察し、このような症状が現れた時はすぐに動物病院に連れて行ってください。

犬が前庭神経炎になる原因

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犬の前庭神経炎のおもな原因は、耳の内部で起きている炎症が前庭神経にまで広がってしまうことです。また、耳に腫瘍ができた時も、前庭神経炎を発症することがあります。

とはいえ、犬の前庭神経炎の引き金については不明点が多く、ほかにも生活環境の悪化によるストレスや気圧の変化、老化現象の一環として発症する可能性があると考えられています。もちろん、内耳炎や中耳炎、外耳炎といった耳に関する炎症が前庭神経炎につながるリスクは高いので、犬が耳を気にしている様子を見せた時はすぐに対処するようにしましょう。耳の炎症が前庭神経まで広がる前に、しっかりと治療してあげることが重要です。

犬の前庭神経炎の治療法

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犬の前庭神経炎は、耳の病気から引き起こされることが多いため、まず耳の病気を予防することが大切です。それでも前庭神経炎を発症してしまった場合は、症状の進行を防ぐため、早期治療に努めましょう。

内耳炎や中耳炎、外耳炎に注意を払いつつ、耳に腫瘍ができていないかを定期的にチェックするようにしましょう。また、ストレスが前庭神経炎の引き金になることもあると考えられているので、犬の生活環境には気を遣ってあげましょう。前庭神経炎を発症するケースは8歳以上の高齢犬に多いので、その年頃の犬の飼い主はとくに注意が必要です。

耳の病気により前庭神経炎を発症してしまった時は、その病気の治療を行います。投薬治療や運動の制限など、前庭神経炎の症状に合わせた治療も同時に施していきます。投薬治療で使用されるのは、抗めまい剤やビタミン剤、副腎皮質ホルモン薬などです。

犬に上述のような前庭神経炎の症状が出ている時は、すぐに動物病院に連れて行きましょう。早期発見・早期治療がこの病気を治すポイントです。

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