【獣医師監修】猫の神経系の病気と知っておきたい症状
愛猫の健康を守るためには、病気の早期発見・早期治療が大切です。猫の様子を毎日観察することで、いち早く病気のサインに気づきましょう。今回は、注意すべき神経系の病気とその症状について解説します。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
猫の症状からわかる神経系の病気
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猫の神経系の病気には、どのようなものがあるのでしょうか。
認知症
猫の認知症は人間と同様に、一度発達した脳細胞が減少し、それまでできていた行動ができなくなったり、説明のつかない異常な行動をとってしまったりする病気です。猫によって個体差はありますが、おおむね7歳を過ぎた頃から徐々に発症していくといわれています。
てんかん
猫のてんかんとは、脳内の神経に異常な興奮が起こることで、カラダのコントロールを失ってしまう病気です。犬と比較して、猫がてんかんを発症するケースは少ないといわれています。
髄膜脳炎
猫の髄膜脳炎(ずいまくのうえん)とは、脳とそれを包んでいる髄膜に炎症が発生している状態のことをいいます。脳に発症した炎症を「脳炎」、髄膜に発症した炎症を「髄膜炎」、両方に発症した炎症を「髄膜脳炎」と呼びます。
肝性脳症
猫の肝性脳症(かんせいのうしょう)とは、肝臓の機能不全によって脳神経系に有害な物質が代謝されない結果、脳に障害が生じる病気です。
水頭症
猫の水頭症(すいとうしょう)とは、脳や脊髄の周囲を循環している脳脊髄液(のうせきずいえき)と呼ばれる液体が増え、脳を圧迫している状態のことをいいます。猫が発症するケースはまれだといわれていますが、この病気のほとんどが遺伝性であるため、仔猫の時期に疾患が発見されます。
硬膜外血腫
猫の硬膜外血腫(こうまくがいけっしゅ)とは、脳に強い刺激が加わることにより、脳内で出血が起こり、脳と脊髄を覆う硬膜の外側に血が溜まった状態のことをいいます。脳は、硬膜・くも膜・軟膜という3枚の膜で覆われていますが、硬膜外血腫は硬膜の外側にある毛細血管が破裂し、硬膜と頭蓋骨の間に溜まった血液が脳を圧迫することで発症します。
小脳障害
猫の小脳障害とは、運動機能を司る小脳に病変が生じ、正常にカラダを動かすことができなくなった状態をいいます 。
前庭神経炎
猫の前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)とは、脳神経の一部である前庭神経に炎症が発生することで、おもに平衡バランス感覚が障害を受けている状態をいいま す。
ダニ麻痺症
猫のダニ麻痺症とは、成長したメスのダニが、猫のカラダから吸血する際に分泌した唾液(アセチルコリン)によって、筋肉が麻痺してしまった状態のことをいいます 。
キー・ガスケル症候群
原因不明の自律神経失調症のことをいいます。
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次に、これらの病気を症状別に分類してみましょう。
痙攣
●てんかん
●髄膜脳炎
●肝性脳症
●水頭症
●硬膜外血腫
失禁
●認知症
●てんかん
ふらつき
●髄膜脳炎
●肝性脳症
●小脳障害
●前庭神経炎
●ダニ麻痺症
視力障害
●髄膜脳炎
●水頭症
●硬膜外血腫
食欲不振
●肝性脳炎
●水頭症
過食・異常摂取
●認知症
●水頭症
昏睡
●肝性脳炎
●水頭症
●硬膜外血腫
眼振(眼球振盪/意識とは無関係に眼球が動いてしまう症状)
●小脳障害
●前庭神経炎
散瞳(瞳孔が過度に拡大する症状)
●ダニ麻痺症
●キー・ガスケル症候群
痴呆症状
●認知症
●水頭症
●硬膜外血腫
上記のような症状がみられた場合、神経系の疾患が疑われます。日頃から猫の様子をよく観察し、少しでも異常を感じた時には、すぐに動物病院で診察を受けてください。何もなければそれで安心できますし、もし病気だった場合には早期発見が重要になります。大切な愛猫につらい思いをさせないためにも、早め早めの行動を心がけましょう。
また、これらの症状から、飼い主が病名を判断するのは困難です。しかし、獣医師に相談したり、症状を説明したりする時のために、これらの病気について基本的な知識を身につけておくとよいでしょう。病名はわからなくでも、注意すべき病気やその症状についての知識を持っているだけで、その後の対応が変わってきます。
大切な愛猫が一日でも長く健康に過ごせるように、病気の早期発見・早期治療に努めましょう。