【獣医師監修】犬の予防接種っていつ受ければいいの? 種類、費用、注意事項について
病気の予防のために、予防接種を受けるのは犬も人間も同じです。また、人に感染の恐れがある人畜共通感染症のワクチンに関しては、法律でどのタイミングで接種すべきかが定められているものもあります。今回は、予防接種やワクチンについて解説していきます。
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長
予防接種・ワクチンの種類
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そもそもワクチンとは何なのでしょうか? 簡単にいうと、予防したい病気の病原体の毒性を弱めたり、無毒化したりしたもののことです。
動物は病原体に感染するとその病原体と戦う抗体が作られ、その病原体に対して免疫がつきますが、ワクチンを接種することにより、病原体に感染することなく抗体を作り免疫をつけることができるのです。
そのため、その病原体に万が一感染しても、すでに抗体があるので無症状もしくは軽い症状で済むようになります。
このワクチンには、大きく分けて2種類があります。
コアワクチン
重大な感染症を予防するためのワクチンです。日本では法律で接種が義務付けられている狂犬病ワクチンも含まれます。
コアワクチンで予防できる感染症には以下があります。
●ジステンパーウイルス感染症
●アデノウイルス感染症
●パルボウイルス感染症
●狂犬病
ノンコアワクチン
住んでいる地域や生活環境など感染リスクに応じて予防した方がよいとされているワクチンです。
ノンコアワクチンで予防できる感染症には以下があります。
●パラインフルエンザ感染症
●レプトスピラ感染症
狂犬病ワクチンは単体で接種されますが、その他の感染症のワクチンは通常「混合ワクチン」という形で一つのワクチンで複数の感染症が予防できるようになっています。
予防接種を受けさせる時期
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では、コアワクチンはどのようなタイミングで接種すればよいのでしょうか?
幼齢犬のワクチン接種で一番考えないといけないのは、母親からの移行抗体です。この移行抗体により、仔犬は生後2ヶ月ほどの間、病原体から守られます。なので、この時期に仔犬にワクチン接種をしても、仔犬自身の抗体が作られず免疫はつきません。しかし、移行抗体が完全に消失するのを十分に待ってから仔犬にワクチン接種を行うと、その間に感染症に罹患してしまうリスクが高くなります。万が一、1回目の予防接種で仔犬自身の抗体が十分に作られなかったとしても、複数回接種を行うことで、感染症に罹患するリスクを最小限におさえることができるのです。
目安としては以下のようになります。
(日本では狂犬病もコアワクチンに含まれますが、狂犬病は3ヶ月齢で初回接種後は、1年に1回の追加接種を行います。)
●1回目のワクチン…8~9週齢
●2回目のワクチン…1回目の3~4週後
●3回目のワクチン…2回目の3~4週後
●4回目のワクチン…3回目のワクチンから1年後
この接種プログラムは、犬の抗体の変化に合わせて、一番効果的と考えられているものです。5回目以降は1年に1回のワクチン接種が行われてきましたが、海外で3年に1回でよいとするガイドラインができました。しかし、ワクチン接種率や飼育環境などの条件が異なる国でのガイドラインをそのまま日本に当てはめていいのだろうか、という不安要素があることなどから、日本では動物病院により5回目以降の追加接種時期について考えが異なります。そのため、かかりつけの獣医師と話し合って決めることをおすすめします。
予防接種・ワクチンの費用はどれくらい?
予防接種・ワクチンの費用ですが、混合ワクチンが5,000~9,000円(混合する数によって変動します)、狂犬病の予防接種が3,000円ほどです。病院によっても多少前後しますので、事前に確認しておいた方がよいでしょう。
予防接種の前に注意しておきたいこと
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最後に、予防接種を受ける時に注意すべきこととして、犬の体調が万全の時に受けさせるということがあります。
異物を体内に入れるわけですから、予防接種は犬にとってカラダに負担がかかるものです。もし副作用が出てもすぐに必要な処置をしてもらえるように、動物病院が夕方まで診療を行っている日の午前中に接種をし、何かあったらすぐに連れて行けるようにご自身の予定も空けておきましょう。
副作用では、突然の嘔吐、下痢、虚脱など、命に関わるものもあります。このような症状は、接種から30分以内(長くても1時間ほど)で現れますので、心配な時は病院の待合室で30分ほど待たせてもらい、様子をみてから帰宅するのもいいでしょう。
また、後から現れる症状としては、顔が腫れたり、かゆみが出たり、食欲不振がみられたりすることがあります。そのような症状が出たら、動物病院に連絡をして指示を仰ぎましょう。
せっかく病気を防ぐために予防接種を受けたのに、それが原因で体調不良になってしまっては犬もかわいそうです。犬の様子を確認し、調子のいい日に受けるようにしましょう。