【熊本地震現地レポートVol.3】被災地が教えてくれた、ペット防災の大切さ
2016年4月14日21時すぎに起きた熊本震災で、被災したペットや飼い主さんの支援をしてきたNGO団体ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)への取材記事もいよいよ最後です。今回は今後の活動の方針や、PWJから飼い主さんへのメッセージをお届けします。
- 更新日:
Vol.1,2はコチラから!
【熊本地震現地レポートVol.2】飼い主たちが語る「やっておけばよかったこと」 :: PECO(ペコ) Irina Kozorog/Shutterstock.com
今後の震災や災害に対する、PWJの"目標"
多くの飼い主さんとペットが初めての避難生活を送ることとなった熊本震災ですが、ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)にとっても、今回のようなペット専用避難所を運営したのは初の試みだったそうです。そのため、ケージ不足やワクチン未接種のペットが意外と多いことなど、様々な問題があることがわかりました。
復興が進みはじめた7月には、ワンちゃん用のドッグランも設営されました。
この経験を今後に生かすためにも、継続的に被災地の支援を続けていきます。フェーズによって避難所の形態を変え、そこで暮らすペットや飼い主さんたちが少しでも快適に暮らせるように工夫をして、ペット同行可避難所のモデルケースになっていきたいそうです。
猫ちゃんの預かり場所も設営されました。
熊本震災は気温が上がり始める4月に起こりましたが、もっと暑い時期の場合は地面に近いテントはワンちゃんには厳しく、冬の場合は寒さに弱い小型犬への配慮が必要になります。季節ごと、ワンちゃんの種類に対する配慮などもされた避難所が今後必要になっていきそうですね。
これからの目標は"行政が支援する同行避難"の実現
預かり所で飼い主さんを待つ猫ちゃん。
ペットと共に避難することは、環境省が強く推進している避難方法です。しかし、同行避難をしてきても、ペットの受け入れが可能な避難所は、とても少ないのが現状です。特に、行政が運営している避難所は、動物が苦手な人やアレルギーの人にも配慮する必要があるため、受け入れ不可の場所が多いのです。
そのため、ペットと一緒にいることを希望する人は、やむをえず車中泊をするというケースが多いです。しかし、それは熱中症などのリスクを高めると同時に、飼い主さんの健康も害する可能性があります。
そのようなケースを無くすためにも、今後は行政を支援して、ペットと一緒に同行避難をしてきた人も入れるような避難所の支援をしていきたいと、PWJは語っています。せっかく一緒に避難してきても、バラバラの場所で暮らすことはペットにとって非常にストレスになるので、そうした避難所が増えるのは、飼い主さんにとっても嬉しいですよね。
PWJから飼い主さんに伝えたい事とは?
最後に、PWJから飼い主さんに向けて、ペット防災で注意しておきたいことをお伺いしました。
DJTaylor/Shutterstock.com
移動用として、ケージ不足を見越して、様々なケージを持ち込んだ飼い主さんが多くいましたが、ワンちゃんの場合、あらかじめケージに入るようにしつけをしておかなければ、ワンちゃんは怖がって入らないそうです。大切なのは、ケージなどの道具だけでなく、その道具に慣れさせることなのです。
普段からケージに出入りしたり、ケージの中で待つことを遊びの一環として取り入れてみましょう。特別なときにケージを出すのではなく、日常的に使ってもらえるように、広い場所に置いてみる、など工夫が必要だと、PWJは語っています。
他にも、迷子になったときに他の人が捕まえやすいように、名前を読んだら近づいてくる「呼び戻し」のしつけや、他のワンちゃんとも仲良く接することができるように、社会化をさせておく、ということが必要だそうです。これらをしっかりとやっておけば、避難所で飼い主さんもペットも快適に過ごす手助けになります。
更に、仮設住宅も避難所と同様ペット不可の施設が多く、ペットを泣く泣く手放した人も多かったそうです。そのため、仮設住宅に入る際にもペットと同伴できるところを選ぶことを推奨しています。もし難しそうであれば、一時的に友人に預けたりするなど、頼れる人のめどを立てておきたいですね。
避難所のペットと触れ合うPWJのスタッフさん
震災のたびに、迷子になったり殺処分になってしまうペットが多い。大切な家族の一員として、同行避難という選択肢を取ったなら、最後まで一緒にいてあげてほしい、とPWJは語っています。これからペットを飼う人、今も飼っている人、すべての人は一度、ペットと一緒に災害時に避難できるか考えてみましょう。
インタビューを通して見えてくる、これからの"ペット防災"
baimaple/Shutterstock.com
全3回に渡り、災害時にペットや飼い主さんの支援をしてきたPWJさんにお話を伺ってきました。昔よりも同行避難という言葉の重要さが飼い主さんに伝ったこともあり、取り残されるペットは少なくなりましたが、まだまだ認知が足りない状態です。
避難するときは必ずペットと一緒に、それができそうになければ、近所の人と協力して迎えに行く、などの対策を作っておきたいですね。また、ケージに入るトレーニングや呼び戻しのしつけ、他のペットと仲良くするために社会化をさせる、などの基本的なしつけも大切だということが分かりました。
防災バッグなどには食料や水の他にも常備薬など、ペットにとって必要なものを最低限揃えてあげましょう。また、病気を予防するためにワクチン接種などを欠かさないことも大切ですね。飼い主さんが少し気を付けてあげることで、避難所でのペットの生活はぐっと楽になります。
災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、普段からしっかりと準備し、備えておくことが大切になります。災害時はPWJのような支援団体がペットを支援してくれますが、万全とは言えません。最後に大切なペットの命を守れるのは、最も身近な飼い主さんだけなんですね。
これまでに見てきたPWJのインタビューを踏まえて、もう一度ペットと自分の防災を見直してみてはいかがでしょうか。
取材先・制作協力
取材先
特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン
熊本地震の発生直後、災害救助犬とレスキューチームを現地に派遣、行方不明者の捜索活動を行う。被災者支援においても、これまで見過ごされがちだったペット同行避難世帯を対象としたテント村、ユニットハウス村などを継続的に運営している。
制作協力
+ソナエ・プロジェクト
日常生活に「備え」という意識をプラスしようというコンセプトから生まれたプロジェクト。生活者目線で防災・減災に取り組んでいる。