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【日本犬に多い意外な病気】フードアレルギー

【日本犬に多い意外な病気】フードアレルギー

今までのフードを食べなくなった時をはじめ、成犬になる時や避妊去勢後の肥満を防ぐため、またシニア期を迎える時など、いくつかの場面でフードを変えることがある。フードが体に合わないと、どんなことが起きるのか詳しく説明していこう。(Shi-Ba 2017年7月号 Vol.95より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
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アレルギーが多い日本犬はフード選びを特に慎重に行いたい

ある日突然アレルギー症状が出ることもある

今年10歳になる我が家のまる子。病気とはほぼ無縁の暮らしを送ってきた。それでも今までの犬生で、食べ物が合わずに体調不良を起こしたことが3回ある。

1回目は生後10ヶ月頃のこと。パピー用から成犬用のドライフードに変えた際、涙がたくさん出るようになった。アレルギーテストでチキンがNGとの結果が出たので、それ以降ラム&ライスに変更。

2回目はドッグショップでもらった、ナルトのような形の手作りオヤツを食べた時。当日の夜にはマズルが赤くなり、ひどくかゆがるので動物病院へ。オヤツのパッケージを獣医師と見て、手作りの割には添加物や着色料(ナルトのピンク)、保存料が結構入っているのを確認。原因はその辺りかも、ということで、以降オヤツは無添加で、着色料や保存料不使用のものをあげるようにした。

そして3回目はシニアになってからのフードの切り替え時だ。

飼い主さん「このフードは合うかな〜?」 まる子ちゃん「あんた試しに食べてみれば?」

飼い主さん「このフードは合うかな〜?」
まる子ちゃん「あんた試しに食べてみれば?」

食べ物が体に合わないことは日本犬にはよくあることなのだろうか?

「食材に対して過敏に反応してしまう『食物過敏症』や食物アレルギーなどの症状で来院する日本犬は多いです。食物アレルギーは生後2ヶ月くらいから発症すると言われています。私が診察したケースでは、生後半年の時にドライフードを新しいものに変えてから2~3ヶ月経って痙攣が出たり、下痢がひどくなった犬がいました」

最終的にその犬は自家食に切り替えたことで、すぐに症状が治まったそう。

食べ物が合わないことで出てくる体の不調のサインもさまざま。体臭がきつくなる、フケが出る、体をかゆがる、脱毛する、外耳炎を繰り返す、涙が出る、下痢が続く、嘔吐する、痙攣が起きるなど、いつどんな形でどこに現れるかは犬によっても異なる。また、症状が軽くて飼い主が気づかないこともあるだろう。

そして特に日頃から気をつけたいのが、『アレルギーはいつ症状が出るかわからない』ということ。
「今までずっと同じものをあげていて、ある日突然アレルギーの症状が出ることもあります」

例えば、ずっと食べていたフードがリニューアルした時に、開封してみると今までと違うにおいがすることがある。このような時には、敏感な犬の場合は体調に変化が出る可能性もあるので、しばらくは犬の体の様子、排泄物、皮膚や毛の状態などを注意深く観察するようにした方がいいそう。

また、今は症状が出ていないが、アレルギーの素因を体の中に持っていて、将来アレルギー反応が出るケースもある。この素因を知っておくために、アレルギーテストを受けておくという方法もあるので、心配な場合はかかりつけの獣医師に相談してみよう。

フードを変えて落ち着くまでに約1年の歳月が!

【まる子体験談】

1歳の頃から食べていた、スーパーでも売っている有名メーカーのラム&ライスのドライフード。7歳の時に同じメーカーのシニア用に切り替えたが、8歳を過ぎた頃から涙が出始めた。アレルギー検査でチキンがNGと言われていたので、獣医師と相談し別のメーカーのサーモンがメインのドライに変更。このフードは食いつきも良く、まる子の体にも合っていたが、なんと生産中止に。

そこで、人に聞いたり、ネットで調べた結果、一般的な店ではあまり売っていない500g1000円ほどの、我が家にしては高価なフード(魚が主原料)に切り替えた。しかし、これがまる子には全然合わなかったのだ。

喜んで食べたのは最初の1週間だけ。今まで食べ物を残したことは一度もない犬なのに、よく残すようになった。でも「きっと体にいいはず!」と思い、与え続けて2ヶ月。気がつけば涙、フケが大量に出て、額にはハゲが出現(大汗)。

このフードはなんかイヤ~

このフードはなんかイヤ~

月に1回トリミングに行っているのに、体全体がすぐに脂っぽい感じになり、体臭も今までになくきつい。再度獣医師に相談して、別のメーカーのシニア用ラム&玄米のドライフード(キロ約1000円)に変更。ようやく体調が落ち着き、今に至る。

よその犬に合っていても、どんなに高いフードでも、自分の犬の体質に合わなければまったく意味がない、と思い知らされた一件だった。

よその犬に合っていても自分の犬に合うとは限らない

奥さん、あたしマジで大変だったのよ~

奥さん、あたしマジで大変だったのよ~

フードが合っていないとこんなことが起きるかも

皮毛の状態が悪くなる

皮毛の状態が悪くなる


毛がパサついてくる、脱毛する、逆に脂っぽい感じになる、フケが目立つようになるなど、毛や皮膚の状態が変化してきたら、要注意。

外耳炎を繰り返す

外耳炎を繰り返す


耳の中が臭い、掃除をしても耳の中がすぐに汚れる、耳の中の皮膚が赤いなど、治療をしても何度も外耳炎を繰り返す場合は、食物アレルギーの可能性も。

涙がよく出る 涙やけが取れない

涙がよく出る 涙やけが取れない


合わないフードを食べ続けると、結膜が強い炎症を起こし、涙の量が増えることがある。
まる子の場合、最初に涙やけがひどくなったのが、体調不良を示すサインだった。

定期的にシャンプーしても体臭がきつい

定期的にシャンプーしても体臭がきつい


まる子の場合は、特に頭の部分から青魚が腐ったような脂っぽいにおいがした。
無添加で、保存料などが不使用でも、油分が多すぎるフードはうちには合わなかったようだ。

療法食も食べない場合は自家食という方法もあるが

我が家のケースは明らかにフードを変えてから体調に変化が生じたので、「フードが合わないのかも」と割と早いタイミングで判断もついた。しかし、いろいろな食材をあげていると「どの食材が犬の体に合わないのか」わかりづらいこともよくある。

胃腸系の疾患、皮膚トラブル、繰り返す外耳炎などの症状がみられて、それらが食べ物と関連しているのかどうかを調べるためには、食物除去試験を行うのがオススメだそう。

「まずは今まで食べていたものを、オヤツも含めて飼い主さんにすべてリストアップしてもらいます。それらの食材以外で、今まで口にしたことがない食材(よくあるケースではラム肉など)を1~2ヶ月与えます。この間は市販のドライフードは一切与えず、炭水化物は白米やジャガイモで補い、アレルギーを起こしにくい食材だけを与えます。

もし食べ物がアレルギーに関わっているのであれば、薬を使わなくてもこの方法でかなり体調が改善されます。体調がよくなってきたら、今度はそこに今まで食べていた食材を1つずつ加えていきます(1つの食材を与え続ける目安は約2週間)。例えば、鶏肉をあげたら犬が顔をよくかくようになったということであれば、鶏肉がアレルギーだということが特定できます。

根気がいる検査ですが、1つ1つの食材を試していくとこで、どれがNGでどれがOKなのか、犬の体に負担をかけず、お金もかからず、確実にアレルギーの原因を確定できる方法です」

この方法は家族の協力が不可欠なことは言うまでもない。

また、1ヶ月以上続く除去食試験の手間が大変ということで、動物病院で処方される加水分解タンパク食(あらかじめ消化、分解したタンパク質を使用して作る)や新奇タンパク食(今までに食べたことがないタンパク源で作る)の療法食を選ぶ人も多い。これらはアレルギーの原因になりにくい食事と言われている。

嗜好の問題で療法食を食べてくれない場合は、飼い主が愛犬の好みと体に合うフードを探し出すか、自家食で頑張るしかない。しかし、自家食の場合は栄養の偏りが原因で体調不良を起こすこともあるので、いずれも獣医師と相談しながら慎重に進めたい。

アレルギーを起こしにくい動物病院で処方する療法食のドライフードに切り替えるのも手

ここだけの話、試供品は最低1週間分欲しいですが図々しい?

正直な話、フードを切り替えるのがこんなに大変とは思わなかった。とりあえず今は体調が落ち着いているが、10歳という年齢も考えると、今後もどんな小さな体調の変化も見逃せないと痛感した。

ところで、アレルギーテストでチキンがNGだったので、ラムやフィッシュがメインのフードを探し回った今回。ようやく見つけたお目当てのフードも、原材料項目を見て「チキン●●」という単語を発見しては振り出しに戻る、の連続だった。

また、試供品もショップで2~3袋(1~2日分)もらうものの、犬が食べなくなるのは1週間くらい経ってから。試供品を食べ終わり、そのフードを買った後に犬が食べなくなり、8割方フードが余って廃棄ということも2回あった。

そんなわけで、我が家は図々しくもいつも診てもらっている獣医師に「先生、フードの試供品は最低1週間分ください」と頼んでみたが、快くサンプルを取り寄せてくれたのには深く感謝。

やっぱり、なんでも相談できるかかりつけの先生がいるのは頼もしい!

飼い主さん「案外デリケートなんだね?」 まる子ちゃん「今頃気づいたのかい……」

飼い主さん「案外デリケートなんだね?」
まる子ちゃん「今頃気づいたのかい……」

今回の教訓

犬は自分でフードを選べない
愛犬に合ったフードを見つけ出すのは飼い主の大切な役目なのだ!

嗜好と自分の体質に合ったフードを食べさせてよね!

嗜好と自分の体質に合ったフードを食べさせてよね!

Text:Mari Kusumoto Photos:Masayuki Satoh 監修:野矢雅彦先生

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