アフガン・ハウンドってどんな犬? 歴史やカラダの特徴について
首を上げ遠くを眺める姿に威厳すら感じるアフガン・ハウンド。優雅さと、温度差の激しい山岳地帯で狩猟犬として発達してきた、たくましさを併せ持つこの大型犬についてみてみましょう。
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アフガン・ハウンドの歴史
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アフガン・ハウンドは、中東地方に生息していたサイトハウンドを祖先に持つ犬種です。その歴史は、古代エジプト王朝時代にまでさかのぼるといわれ、聖地モーセの山の麓に生息していたとか、ノアの方舟にのせられたなどの言い伝えがあるほどです。ピラミッドなどをはじめとする歴史的建造物や記録物にアフガン・ハウンドらしき犬の存在があることも認められており、現存する最古の犬種として知られています。
その名の通りアフガニスタンが原産で、とくに山岳地帯での狩猟犬として遊牧民などに飼育されていました。その狩猟能力は極めて高かったといわれており、2頭1組となって、素早い動きの獲物を挟み撃ちで仕留めるランダウンフリートゲームを得意としていました。
他の動物の出入りが少ない山岳地帯では交雑が起こりづらく、純粋な犬種として血統を引き継いできましたが、18世紀にアングロ・アフガン戦争に勝利したイギリスへと持ち込まれることになります。現在のアフガン・ハウンドの基礎となった系統には「ベルマレイ」と「ガーズニ」の2種類が存在しています。「ベルマレイ」は、草原タイプとされ薄めの被毛が特徴です。一方「ガーズニ」は、山岳タイプの系統で厚めの被毛が特徴で、この「ガーズニ」が、現在のアフガン・ハウンドの容姿に近いといわれています。その後、ザーディンなど他犬種との交配によって、現在のような優美で品格のある容姿へと改良されていきました。
長い被毛と優雅な姿がイギリスの貴族階級たちの人気を博し、20世紀の初めころからドッグショーへ出展されると、もっとも競争が激しい人気犬種となり、とくに世界の富裕層たちを中心に世界中へと広がっていきました。
アフガン・ハウンドのカラダの特徴
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アフガン・ハウンドのカラダの特徴としてまず挙げられるのが、大型犬としては珍しいその長い被毛です。アフガニスタンの山岳地帯の寒さと砂漠地帯の熱さの両方に対応するために進化したといわれています。毛色についてはあらゆる色が認められており、フォーン、ゴールデン、クリーム、レッド、ブラック、チンチラ、ホワイト、グレーなどの単色や、プリンドル、トライ・カラーなどがあります。
アフガン・ハウンドは、視覚に獲物を捕らえて狩りをするサイトハウンドなので、頭を高く掲げた立ち姿がとても優美で凛々しいのですが、平均体高が60㎝を超える大きなカラダでその姿勢を保ちながら長毛を揺らして歩く姿も大変美しく、この犬種の大きな個性の一つといえます。またアフガン・ハウンドの平均的な体重がオスで26~29㎏、メスで20~25㎏程になります。
険しい土地で狩猟をしていたこともあり、その足裏は広く丈夫です。これは獲物が急に方向を変えた時でも反射的にその方向へ反応するために進化した構造であると考えられています。走力と持久力を兼ね備えた屈強な脚力を持ち、またでこぼこの路面を飛び跳ねて獲物を捕らえるために背中は短く、腰骨には勾配がつくよう発達してきました。
アフガン・ハウンドの顔の特徴
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アフガン・ハウンドは頭骸の幅が広く、目が顔の側面にあり、270度にも及ぶその視野の広さは、狩猟犬種としての典型的な特徴であるといえます。距離感も的確で1km先の動くものまで見えてしまうというのだから驚きです。
さらに狩りの時にその視覚能力と嗅覚を高め、獲物を捕らえるための情報に集中するために品種改良された結果、耳は垂れ耳となっており余計な情報をシャットアウトできるようになっています。
このように本来は山岳地帯での狩りの名手だったからこそ、アフガン・ハウンドが他の犬種と違う雰囲気を醸し出していることがわかると思います。アフガニスタンの山岳地帯にはアフガン・ハウンドの原種となった犬が現在も生息していますが、近年はその個体数が減少しており、絶滅のおそれがあるとされています。