【獣医師監修】猫のマーキング・スプレーの意味。 やめさせるにはどうすればいい?
室内飼いの猫の問題行動の中でも、とくに厄介なものの一つに「マーキング・スプレー」があります。スプレー行動とはどんなもので、防ぐ方法はあるのでしょうか?
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
猫は縄張り意識が強い?
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猫はもともと、個々の縄張りを持つ生き物です。ライオンを除いて猫の仲間、ネコ科の動物はほとんどが本来、単独行動で生活します。そのため、自分だけの縄張りを「マーキング」と呼ばれる各種の行動によって示します。
それぞれの猫がマーキングを行っていることは、他の猫は何らかの形で感知することができます。猫も犬と同様、嗅覚の優れた生き物ですので、おもに「ニオイ」を用いてマーキングを行います。
マーキングの種類はいくつも
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マーキングの方法は何種類かあります。たとえば、爪とぎも、爪のケアの為に必要不可欠な行動ですが、マーキングとしての側面も持っています。他の猫が爪をといだ痕跡があれば、そこはその猫の縄張りであると理解する、というわけです。
顔をこすりつける行為もマーキングである場合があります。猫の顔には臭いの出る腺があり、そこから出た分泌物を壁などにこすり付ける行動は、よく見られます。
便がマーキングである場合もあります。これはニオイがあるのは当然ですから、わかりやすいですね。飼い猫が粗相をした場合、それは我慢ができなかったなどの理由ではなく、マーキングである場合があるのです。ちなみに、人間の嗅覚ではまったく識別はできませんが、猫のマーキングのニオイ物質には複雑な情報が込められていて、縄張りの主の素性など、猫どうしでは多くの情報をそこから知ることができるのだそうです。
スプレーというマーキング
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このように、マーキングにはいくつもの種類があるのですが、猫にしか嗅げないニオイ物質のマーキングは、人との暮らしにはほとんど問題になりません。厄介なのは、「マーキング・スプレー」と呼ばれる、オシッコをかけるマーキングです。猫の尿は、人間にとってかなりの悪臭です。猫自身にとっては、マーキングというのは単に縄張りを示すだけでなく、リラックスの意味があったりと様々なのですが、たとえば布団の上でスプレーされた場合には、人間にはたまったものではありません。
スプレーをどう防ぐ?
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マーキング・スプレーは、メスもしないことはないですが、圧倒的に多いのは、発情後、未去勢のオスのマーキングで、つがいの相手を探すためと考えられています。ただこれは、発情前に去勢を行うことで、9割以上防ぐことができます。メスも、避妊手術をするとスプレーする確率はかなり下がります。発情後であっても、しないよりは手術をした方がよいといわれますが、発情後、手術をして、なおスプレー行動が残る場合は、完全にやめさせるのは難しいといわれます。
では、そんな場合にはどうすればいいか? 「ニオイの残っている同じ場所に」またスプレーする、という習性が猫にはありますので、ニオイ取りをしっかりすることが大切です。ニオイ取りの方法ですが、もっとも効果的なのは熱湯です。ついで、酸性の物質、たとえばお酢など。専用のニオイ取りスプレーも市販されています。やってはいけないのは、猫を叱ることです。叱っても猫には何故叱られたのか理解できず、むしろスプレー行動を悪化させる要因ともなります。