【獣医師監修】猫が臭い。ニオイの原因や考えられる病気、治療法、予防法について
すりすりと甘えてくる猫はとても可愛いですが、顔を近づけるとなんだか臭い! なんてことありませんか?猫が臭いのには様々な原因が考えられます。
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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長
猫は本来臭くない?
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じつは、猫は本来あまりニオイのしない動物です。猫の仕草や行動を見ていると毛づくろいをしたり、トイレの後は砂でおしっこなどを隠したり、とてもキレイ好きな様子がうかがえます。これは、猫が自分のニオイを残さないようにするための行動です。猫はもともと狩猟動物なので、狩りの時に獲物に自分の存在を気づかれないようにするために自分のニオイを消す習性があります。他にも、自分より強い敵から身を隠すために、ニオイを消す必要もあります。このように、猫はただキレイ好きなだけではなく、本能的に自分のニオイを消すようにしているのです。
猫が臭い場合に考えられる原因は2つある
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ニオイに敏感な猫が臭いとなると結構大変なことなのでは? と思いますよね。猫が臭い原因は大きく2つに分けることができます。1つ目は「飼育環境が原因で臭い場合」、2つ目は「猫自身が原因で臭い場合」です。飼育環境が原因で臭い場合は、トイレが汚れていたり、外飼いをしている環境で猫が汚れて帰ってくることが原因として挙げられます。この場合、トイレをいつも清潔に保つ、空気清浄機などを使う、外飼いの場合は猫が帰ってきたらしっかり拭いてあげる、もしくは外飼いをやめるなど、解決方法はそこまで難しくありません。厄介なのは「猫自身が原因で臭い場合」です。
猫自身が臭いのは病気の可能性も
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猫自身が原因で臭い場合は、病気で臭いニオイを発している可能性があります。病気かどうかを判断するには「どこが臭いのか?」「どんなニオイなのか?」「ニオイ以外の症状はないか?」などの確認が必要です。今回は猫自身が原因の場合に臭くなることが多い「口」と「おしり」について見ていきましょう。
口が臭い場合
猫の口が臭い場合は、フードの食べカスが口の中に残っていて臭い、ということがほとんどです。とくにウェットフードは歯にひっつきやすいので、ウェットフードをメインにしている猫に多く見られます。食べカスが原因の場合はそこまで心配することはないのですが、口臭は病気が原因となって発生している場合もあります。
病気で口臭がする場合の代表的なものとして、猫カゼ、猫免疫不全症候群(猫エイズ)、口内炎、歯肉炎、腎臓病、腫瘍などの可能性が挙げられます。そもそも猫は口腔内環境が乱れやすく、口内炎や歯肉炎になりやすい動物です。体調を崩したり他の病気にかかったりすることでも口内炎や歯肉炎を発症することがあります。
口が臭い場合で、食欲がない、口元をしきりに掻く、フードの匂いではなく排泄物のようなニオイがする、口内に出来物がある、などの症状がある場合は病気の可能性が高いです。すぐに病院で診てもらいましょう。
おしりが臭い場合
おしっこの仕方やうんちの状態によって、おしりが汚れていて臭い場合があります。このような場合は、湿らせたコットンやティッシュ、動物用のウェットタオルなどでやさしく拭いてキレイにしてあげましょう。
もう一つ、猫のおしりが臭い原因として考えられるのが、肛門腺からでる分泌液が原因の場合です。興奮したり甘えたり、感情の昂りが激しい時におしりから分泌液を出す猫がいます。分泌液のニオイはかなり臭くて、布などについてしまうと洗濯しなければ取れないくらい臭いのが特徴です。肛門腺の分泌液は、通常であればうんちをする時に一緒に絞り出されます。しかし、これがうまく排出されていないと悪臭の原因になったり、排出されずに溜まると化膿してしまったりする場合があるので注意が必要です。
口や肛門腺が臭い場合の一般的な治療方法
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病気で猫が臭い場合は、治療をすることで簡単に治るケースもありますし、治療が難しい病気だと、病気そのものを治さないとニオイも治らないケースもあります。一般的な口臭や肛門腺に関する治療方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
口が臭い場合の治療は抜歯と免疫力アップが鍵
単純に口内炎・歯肉炎が口臭の原因となっている場合には、歯石除去や抜歯が効果的です。重度の場合は、全顎抜歯をすることで口内炎や歯肉炎が発生しなくなったケースが多く見られます。歯が無いのはかわいそう…と思うかもしれませんが、炎症がひどくて食欲がないことのほうがかわいそうですし、口腔内トラブルに悩まされる確率もぐんと減ります。歯石除去も抜歯も基本的には全身麻酔で処置します。しかしながら、猫が高齢になるほど麻酔によるカラダへの負担やトラブルも増えますので、予防する意味でもなるべく若いうちの治療をおすすめします。
猫カゼ(とくに猫カリシウイルス)や猫エイズウイルス感染症、猫白血病ウイルス感染症、腎臓病、ガンなどが原因で口内炎や歯肉炎になったり、異常なニオイがしたりしている場合には、根本的な病気の治療がメインになります。また、猫の口腔内環境は免疫力に左右されやすいことから、免疫力を高めることが病気や口臭改善の鍵になります。そのために、インターフェロンなどを投与したりサプリメントを使ったりしながら免疫力アップを目指します。
肛門腺の臭いニオイは肛門絞りで解決
肛門腺が臭い場合は、肛門腺を絞る必要があります。肛門腺は肛門の左右両脇、時計で表現すると4時と8時の位置にあるので、そこにティッシュなどを添えてそっと指で押します。そうすると、肛門腺から膿のような分泌液が出てくるので、出なくなるまで絞り出して完了です。分泌液の状態によっては1回で絞り出すこともできますが、慣れないうちや絞り出せたか不安な場合は2〜3回ほどかけて絞り出しましょう。自分ではなかなか肛門線を絞ることができない場合は、動物病院で絞ってもらうことも可能です。また、内容物が溜まってしまって固まっていると、手術が必要になってくるケースもあるので、固まった感じがして絞れない時は、早めに病院に連れていくのが安心ですね。
猫の臭いニオイを防ぐには日頃からの病気予防が大切
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猫の臭い原因としてもっとも多い口臭を予防するために実践したいのが「歯磨き」です。猫によっては口を触られるのが嫌だったり、じっと抱っこされることができなかったりという場合もありますが、最近は飲み水に混ぜるタイプの歯磨きケアや、おやつ感覚で歯石ケアができるようなタイプのものがたくさんあります。他にも、歯につきやすいウェットフードをなるべく控えたり、歯石除去用のドライフードを与えたりすることでも、口腔ケアを簡単に行うことができます。猫の好みに合わせて、できるだけ毎日ケアをしてあげましょう。
また、猫が臭くなるのを防ぐには根本的な病気予防が何より大切です。とはいえ、どれだけ気を付けていても病気になってしまう場合はあります。日頃からのケアと観察で、少しでも異変があった場合はすぐに病院へ連れていきましょう。早期発見と早期治療で臭い原因や病気が改善する確率が高くなります。
こうやって見てみると、猫が臭い場合には病気の可能性が高いことが意外に多いことがわかります。人間にもいえることですが、猫も不衛生な環境で過ごすと様々な病気にかかりやすくなってしまいます。「臭くなるのを防ぐ」というより「猫の健康を維持する」という視点から、猫と飼育環境を清潔に保つように心がけてみてくださいね。