【獣医師監修】猫の予防接種っていつ受ければいいの? 種類、費用、注意事項について
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【獣医師監修】猫の予防接種っていつ受ければいいの? 種類、費用、注意事項について

猫の感染症は、よく外に出る猫はもちろん、ずっと家の中にいる猫も患う可能性があります。その一番の対抗策は、予防接種です。接種していれば絶対にかからないというわけではありませんが、猫の健康を守るうえでは重要です。

  • サムネイル: PECO編集部
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長

猫の予防接種の種類

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猫が予防接種をすることにより予防できる病気は、以下の通りです。

●猫ウイルス性鼻気管炎
●猫カリシウイルス感染症
●猫汎白血球減少症
●猫クラミジア感染症
●猫白血病ウイルス感染症
●猫免疫不全ウイルス感染症(別名:猫エイズ)

上記の病気(猫免疫不全ウイルス感染症以外)を予防する複数のワクチンを組み合わせた混合ワクチンを接種することになり、以下のような種類があります。

室内飼育の猫向けの3種混合

猫ウイルス性鼻気管炎・猫カリシウイルス感染症・猫汎白血球減少症の3つの病気は、とくに感染力が強いうえ空気感染の可能性もあるので、ずっと家の中にいる猫にも接種が奨励されています。

外へ出る猫向けの4種混合・5種混合・7種混合

3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス感染症を加えたものが4種混合、その4種混合に猫クラミジア感染症を加えたのが5種混合です。また、猫カリシウイルス感染症には複数のタイプがあることから、別の2タイプを加えた7種混合もあります。猫免疫不全ウイルス感染症については、単独のワクチンを接種します。

猫の感染症の中でも致死率が高い猫伝染性腹膜炎(FIP)については、残念ながら、今のところ有効なワクチンは開発されていません。

猫の予防接種の時期

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猫の予防接種の時期は、いつがいいのでしょうか?
仔猫は、しばらくの間は初乳に含まれていた母子免疫により、ウイルス感染から守られています。
しかし、その母子免疫が切れる生後2~3ヶ月くらいには、予防接種をしておいた方がよいでしょう。幼齢猫のワクチン接種で一番考えないといけないのは、母親からの移行抗体です。この移行抗体により、仔猫は生後2ヶ月ほどの間病原体から守られるため、仔猫にとって必要なものですが、移行抗体が残っている時期にワクチン接種をしても、移行抗体が反応するため仔猫自身の抗体が作られず仔猫に免疫はつきません。しかし、移行抗体が完全に消失するのを十分に待ってから仔猫にワクチン接種を行うと、その間に感染症を患ってしまうリスクが高くなります。そのため、複数回接種を行うことで、万が一1回目の予防接種で仔猫自身の抗体が十分に作られなかったとしても、感染症にかかるリスクを最小限にしているのです。基本的には以下のようなプログラムが推奨されます。

●1回目のワクチン…8~9週齢
●2回目のワクチン…1回目の3~4週後
●3回目のワクチン…14~16週齢
●4回目のワクチン…3回目のワクチンから1年後

5回目以降は、1年に1回のワクチン接種が行われてきましたが、海外で3年に1回でよいとするガイドラインができました。しかし、ワクチン接種率や飼育環境などの条件が異なる国でのガイドラインをそのまま日本に当てはめていいのだろうか、という不安要素があることなどから、日本では動物病院により5回目以降の追加接種時期について考えが異なります。そのため、かかりつけの獣医師と話し合って決められることをお勧めします。

猫の予防接種にかかる費用

猫の予防接種の費用は、動物病院によってまちまちですが、3種混合で3,000~5,000円程度、7種混合で5,000~7,500円程度です。ちなみに、予防接種はいわゆる病気ではないので、ほとんどのペット保険で対象外となります。

猫の予防接種における注意事項

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予防接種を受けると、副反応が出るのでは? と心配している飼い主もいるかもしれません。猫によっては体調不良になったり、アナフィラキシーショックを起こしたりするおそれがあります。日本獣医師会が2012年に発表した資料では、10,620回の予防接種のうち、133接種(1.25%)で何らかの副反応が出たという報告もあります。猫の予防接種後は、様子を見守ります。副反応が出た時は、すぐに獣医師に相談できるよう、予防接種は午前中に受けることがお勧めです。
また、突然の嘔吐、下痢、虚脱など、命に関わるものもあります。このような症状は、接種から30分以内(長くても1時間ほど)で現れますので、心配な時は病院の待合室で30分ほど待たせてもらい、様子をみてから帰宅するのもいいでしょう。

後から現れる症状としては、顔が腫れたり、かゆみが出たり、食欲不振がみられたりすることがあります。そのような症状がみられたら動物病院に連絡をして指示を仰ぎましょう。

また、猫ではワクチン接種部位に悪性腫瘍ができやすくなるという報告もあるため、万が一できてしまった場合に切除しやすい四肢や尻尾などに接種をすることもあります。

ちなみに、ペット保険に加入していても、予防接種を怠って患ってしまった病気は、保険の対象外となることが多く、全額自己負担になる可能性があります。多くのペット保険の規定では「予防接種で予防できる病気を、予防しなかった場合は補償の対象外」となっているので、ペット保険に入っているからといって安心はできません。ちなみに、予防接種をしていたにも関わらず治療費がかかった場合や、そのほかの病気で予防接種ができなかった場合は補償の対象となるようです。

経済的負担にはなってしまいますが、予防接種を受けることで、感染症リスクは低減します。猫の健康を守るためには、定期的な予防接種を怠らないようにしましょう。

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