境内の木に登りパトロール。胸元の名札に注目!
商売繁盛の神様として、伏見稲荷や豊川稲荷と並び日本三大稲荷とも呼ばれる岐阜県の千代保(ちよぼ)稲荷神社は「おちょぼさん」の愛称で親しまれ、門前町は多くの参拝客で賑わう。約700mの参道には両側に約120件が軒を連ね、串カツ屋・味噌田楽・川魚料理・大学イモや草餅等の飲食店も並ぶ。
「いらっしゃいませ、どのお花にしますかニャ?」
南口大鳥居にほど近い岡田園芸の看板娘・花子ちゃん(3歳♀)。その名前が知れ渡っているのは、首につけたトレードマークの値札に手書きで大きく「バイト花子」と記されているからだ。太めのゴムは緩いので、小枝に引っかかっても大丈夫。肩書きは「社長」や「番猫」になったりとアバウトだが、参道を往く人々に愛されている。女性にスマホで撮られ、小さな子どもに撫でられても大人しいが、抱っこは苦手。小柄だけれど、出産&子育て経験のあるお母さん猫だ。お供え用の花を買い求めるお客さんにキャットフードを貢いでもらったり、首輪に千円札をくくりつけて帰って来たこともあるとか。
参拝ついでに寄ってくれるお客様に接客中
花子ちゃんの生まれは稲荷の近く、飼い主の岡田睦夫さん(63歳)のご実家の農家。5匹生まれたうちの1匹で、兄弟たちはおちょぼ稲荷の参拝客に無事引き取られていったそうだ。岡田園芸の看板猫としては二代目で、先代看板猫はサバ白で名前は同じ花子ちゃんだったとか。
「優しく撫でられるのは好きニャのよ」
花子ちゃんは岡田園芸に出入りするキジトラの友だちにゴハンを食べられても、じっと見守っている優しい性格。子猫の頃は近くの稲荷まで遊びに出かけていたが、最近では店の周り限定が多いそうだ。でも、近所の串カツ屋さんまで行って、店員さんに可愛がってもらっている。
飼い主の岡田さんと。農家のため、田植えと稲刈りで店がお休みの日があるのでご注意を
月末~月初めに行われる「月越し参り」では一晩中、参拝客が訪れる千代保稲荷。花子ちゃんに会えるかは運次第だが、さすがに月越し参りやお正月など人出の多い時には、園芸店の奥でじっとしていることが多いそう。岡田さんは「昔はうちも月越し参りで深夜まで店を開いていたけど、今は夜10時くらいかなあ。懐かしい雰囲気のおちょぼ稲荷、是非来て下さいね」と語る。お稲荷さんに油揚と蝋燭をお供えしたら、商売繁盛・運気上昇を祈願し、おちょぼさんの名物を味わいつつ、猫に元気をもらうのもいいだろう。
稲藁で結んだ油揚とお神酒をお供えする
岡田園芸
岐阜県海津市平田町三郷1113(バス停「お千代保稲荷」徒歩5分)
営業時間:10:00~16:00 ※不定休
文・写真 原田佐登美