【獣医師監修】糞線虫に愛犬が寄生されたら? 治療法と予防法

【獣医師監修】糞線虫に愛犬が寄生されたら? 治療法と予防法

糞線虫(ふんせんちゅう)という寄生虫に愛犬が感染したら、どのような症状が起こるのでしょうか。 日本では、主に2種類の糞線虫に感染する可能性があるので、知識を得て、症状を見逃さないようにしたいものです。

  • サムネイル: PECO編集部
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糞線虫とは

糞線虫とは


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糞線虫は糸状の白い虫です。
メスの成虫は、体長約2~3mmで細長い形状をしています。

日本で確認されているのは、糞線虫と猫糞線虫の2種類。
猫の名を冠していても、猫だけでなく、タヌキやキツネなどの食肉目の野生動物や犬にも寄生します。
犬も含め、こうした食肉目動物に寄生する糞線虫は、メスの成虫のみ。
寄生した動物の体内で、糞線虫は幼虫を産み、猫糞線虫は産卵をします。
これらの幼虫や虫卵は、寄生された犬の糞便で外界に排出されます。
そのため、犬のうんちに混じり白いミミズのように見える回虫などとは違い、飼い主さんが愛犬のうんちに目を凝らしても、糞線虫は肉眼では見つけられません。

土壌でオスとメスの幼虫に発育した糞線虫のうち、宿主となる動物への感染能力を備えたメスが現れると、皮膚から潜り込む経皮感染や、口から入り込む経口感染によって寄生が成立します。

糞線虫症の症状は?

糞線虫症の症状は?


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糞線虫は小腸に寄生するので、糞線虫症の主な症状は下痢です。
とくに、抵抗力の弱い子犬は、激しい下痢を起こしやすいとされます。
下痢が続くと、痩せてきて毛づやが悪くなり、元気を消失し、重症例では脱水症状に陥ります。
寄生虫の感染に限らず、下痢が続く場合は早期の治療を行わなければなりません。
糞線虫に寄生されても、無症状でいる犬や猫やタヌキなどもいます。

糞線虫の検査と診断方法

糞線虫の検査と診断方法


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糞線虫は、犬の糞便をすぐに片づけていないような不衛生な飼育環境下でしばしば発見されます。
海外から日本に入ってきた犬に寄生している例も、少なくありません。
さらに、タヌキなどが生息する地域を犬が散歩するなどといった間接的な接触によっても、感染する恐れがあります。
獣医師には、以下の心当たりがある場合は診察時に告げるようにしましょう。

・数ヵ月以内に、タヌキなどの野生動物が生息する地域を旅行などで訪れたか。そうであれば、野生動物が歩くような場所を愛犬と歩いたか。
・数ヵ月以内に愛犬と海外旅行をしたか。
・愛犬は海外から輸入した犬かどうか。
・愛犬が家族になる前に過ごした環境(ペットショップやブリーダー、愛護施設など)がわかれば、どのような衛生状態であったか。

糞線虫の診断は、糞便の中から虫卵や幼虫を検出することで行います。
寄生虫の感染症が疑われる場合は、糞線虫だけでなくほかの寄生虫にも感染しているケースがめずらしくないことや、糞線虫は鉤虫と区別をつけるのがむずかしいことから、検査キットを使用するなど、詳細な検査を行う動物病院が少なくないでしょう。

糞線虫症の治療法

糞線虫症の治療法


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糞線虫の駆虫を主目的とした、内科治療を行います。
糞線虫を駆除できる薬には、フィラリアの薬としても知られるイベルメクチンがあります。
ただ、フィラリア症の予防では月に1回の投薬で管理しますが、糞線虫は1回の投薬では完全に死滅されられない可能性があります。
糞線虫症と診断されれば、連続した投薬や、継続的な糞便検査が必要になるでしょう。

糞線虫症の予防法はある?

糞線虫症の予防法はある?


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糞線虫の寄生を予防するために、飼い主としてなにができるでしょうか。
理想としては、旅行などでは、なるべくタヌキなど野生動物の生息する地域の土の上を歩かせたり、食肉目動物と思われる野生動物の糞便には近づかないようにしたいものです。
とはいえ、それでは旅行の楽しみも半減してしまいがち。
自然豊かな場所を旅行で訪れた後や、まわりに糞線虫症の犬や猫がいると知った場合は、時々糞便の検査を受けて、早期の寄生発見を心掛け、早い段階で治療を開始するように努めましょう。

糞線虫の卵は殻で守られているため、アルコール消毒などを行っても駆除や殺虫効果はありません。
ただ、外界に排出されたばかりの幼虫は感染力を持っていないので、すぐに感染犬や感染猫の糞便を片付けるようにすれば、同居犬や同居猫への感染を予防できます。

糞線虫は人間にもうつる?

糞線虫は人間にもうつる?


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糞線虫は人間の小腸にも感染します。けれども、犬や猫に寄生する種類の糞線虫は、人間には感染しにくいと考えられています。

まとめ

まとめ


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糞線虫症は、人間にもある感染症ですが、犬と人間の糞線虫のタイプは異なると考えられているので人獣共通感染症ではありません。
タヌキなどの野生動物が生息する地域で暮らしている犬や、自然豊富なところを旅行する際は念のため注意しましょう。
肉眼では発見できないため、愛犬に下痢の症状が続くようであれば、早めに獣医師の診察を受けてください。

監修者情報

監修者情報


箱崎 加奈子(獣医師)
・学歴、専門分野
麻布大学獣医学部獣医学科

ライタープロフィール

ライタープロフィール


臼井 京音 Kyone Usui
フリーライター/ドッグ・ジャーナリスト。
旅行誌編集者を経て、フリーライターに。独立後は週刊トラベルジャーナルや企業広報誌の紀行文のほか、幼少期より詳しかった犬のライターとして『愛犬の友』、『ペットと泊まる宿』などで執筆活動を行う。30代でオーストラリアにドッグトレーニング留学。帰国後は毎日新聞での連載をはじめ、『週刊AERA』『BUHI』『PetLIVES』や書籍など多数の媒体で執筆。著書に『室内犬気持ちがわかる本』『うみいぬ』がある。

コンテンツ提供元:愛犬と行きたい上質なおでかけを紹介するWEBマガジン Pally

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