【獣医師監修】猫がお腹を見せて寝ている! その心理とは?

もふもふの腹毛もチャームポイントの一つ。お腹を触ると怒るくせに、人間のお腹の上には平気で乗ってくる厚かましさも猫ならではです。

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監修:ますだ動物クリニック 増田国充院長

お腹のたるみにはワケがある

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愛猫のタプタプのお腹を見て、「太りすぎ?」と心配になる飼い主も多いはず。でも、ご安心ください。パンパンなら注意が必要ですが、タプタプは専門用語で「ルーズスキン」といって、ごく普通に見られる現象なのです。

猫の心臓や肺は肋骨に守られていますが、消化器系の内臓はちょうどお腹の部分にあり、そこを攻撃されれば致命傷を負いかねません。猫のお腹がタプタプになるのは、内臓を守るためであり、全身を使ってジャンプする時に皮膚が突っ張らないようにするためといわれています。

ルーズスキンはすべての猫に見られる現象ですが、たるみ具合はそれぞれの猫や猫種によって変わってきます。とくにアメリカンショートヘア、エジプシャンマウ、ベンガル、ピクシーボブなどの血を引く猫に多く、そのほかライオンやトラなど、大型のネコ科動物にも同じ現象が見られます。いつ敵に襲われるかわからない自然界では、防衛手段としてなくてはならない現象なのです。

お腹を見せるのは信頼の証

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屋外で仰向けになって寝ている猫を見たことはありますか? ほとんど見たことないですよね。大抵の猫は、足を地面につけて丸くなって寝ています。なぜなら、その体勢ならいつ危険が迫っても素早く逃げられるから。睡眠時間のほとんどがレム睡眠といわれる猫は、常に次の行動に移れるよう、寝る時も警戒を怠りません。

そんな猫が飼い主の前でお腹を見せて寝るのは、100%信頼している証です。そこが安全な場所で、飼い主に守られていることをよく知っているからこその寝姿といえるでしょう。あまりにも無防備な寝姿に驚かされることもありますが、自分を信頼してくれていると思うと愛おしさも倍増しますね。

信頼といえば、飼い主のお腹に乗って寝るのも同じです。重くて苦しいと感じても、我慢してそのままにしておいた経験をお持ちの飼い主も多いのではないでしょうか? 人間の体温が心地よいのか、猫は腕や膝、背中に自分のカラダをくっつけてきます。顔の上に乗られると、息ができなくて困ってしまいますね。

猫のお腹を触るのはNG

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たとえ飼い主であっても、猫はお腹を触られることを嫌います。先に紹介した通り、お腹は猫の弱点だからです。また、哺乳類にとって、相手にお腹を見せることは「降参」を意味し、その姿を見せた以上、白旗を挙げた相手に手出しはしないというのが暗黙のルールです。それなのに、お腹を触るのはルール違反。猫が怒るのも無理はありません。

とはいえ、健康管理の面からいえば、猫のお腹を触って、異常がないかチェックすることも必要です。機嫌のいい時を見計らって、ワキの方からやさしく撫で、そのまま手の平で大きく円を描くようにお腹をマッサージしてあげましょう。胸にしこりはないか、下腹部に過剰な尿や便がたまっていないか、触れると痛がらないかなどを確認してください。ただし、嫌がるようであればすぐにやめること。しつこくすると、噛みつかれてしまうおそれがあります。

お腹がパンパンなのは注意信号

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猫のお腹がパンパンに膨れているのは、避妊手術をしていないメス猫なら妊娠、それ以外はオス、メスともに太りすぎの可能性があります。病気を引き起こす原因にもなるので、肥満も困りものですが、エサをやりすぎてもいないのにお腹がパンパンなのは、ひょっとすると病気のサインかもしれません。

原因としては「腫瘍がある」「腹水や膿がたまっている」「内臓が腫れている」などが挙げられます。そこから考えられる病気は、伝染性腹膜炎、肝炎、胃拡張、腸閉塞、子宮ガン、子宮蓄膿症など。中には死に至る恐ろしい病気もあるため、お腹の張りとあわせて、いつもと違った様子はないか普段からしっかり観察するようにしましょう。

もふもふの腹毛に顔をうずめたくなる気持ちはわかりますが、下手に猫のお腹を触ると手ひどいしっぺ返しを食らってしまいます。猫のお腹は急所ともいえる箇所だけに、気安く触らせてはくれません。一緒に暮らしていれば、そのうち安心して触らせてくれるようになるので、急がず、じっくりと信頼関係を深めていきましょう。

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