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【あなたと愛犬、寄り添ってる!?】柴的共感の技術

【あなたと愛犬、寄り添ってる!?】柴的共感の技術

「他者と共感する」ということはかなり難しいイメージだが、よくよく考えると集団で暮らす動物はこの能力がないと生きていけない。多くの哺乳類が、持っている能力なのだという。犬も高い共感力を持っていることが予想されるが、果たして?(Shi-Ba 2018年1月号 Vol.98より)

  • サムネイル: Shi-Ba編集部
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共感するのって難しいっす! 人間同士でも難しいのに、犬は人に共感できる? 本企画では、読者犬がどんなことに共感するかを取材するだけではなく、帝京科学大学講師の今野先生の話から犬の共感力を解き明かしてゆく。

共感は犬の得意分野? 爪の垢を煎じて飲みたいっす

「共感力」。辞書で意味を調べてみると、他人の感情を共有すること、と書いてある。女子たちに「共感力ないね」と冷たく言われ続けている私ライターOには、永遠の課題として、様々な場面でこの言葉が立ちはだかる。これ、30代半ばにして、結婚できていない大きな理由の一つの気がする。 

一方で犬。共感力は犬が持つ、最大の武器の一つだ。犬が人間と共存できるようになったのは、この能力が優れていたのも一つの理由だっただろう。共感力が優れているから、相手の要望にも気付きやすいので、狩りをしたり、協働できたりする関係になり得たのだ。

犬は相手の立場に立って共感することができるかも?

犬は相手の立場に立って共感することができるかも?

「あんたそんなにかしこいんか?」
「ふふふ」

そんな犬先輩の共感力の高さを調査し、学ぼうではないか! と思い立ち始まった本企画。

まず知っておく必要があるのは、共感は大きく分けて2種類あると言われていること。1つは感情的共感。これは、相手の感情と同じものを取り込み経験し、同調すること。例えば友人が泣いているとその感情につられて悲しい気分になり、逆に誰かが嬉しそうにしていると幸せな気分になる共感。2つ目は認知的共感。これは同調せずとも、相手の立場に立ってあげ、気持ちを推し量るという共感。つまり、友達が女性に振られ悲しそうにしていたら「気にするな! 飲みに行こう!」という感じのもの。後者の方が難しいが、「犬は、その2つの共感性のうち特に感情的共感を強く持っているでしょうね」と今野先生。

それを示す実験を以下で紹介する。

犬は本当に共感する!? 愛犬共感タイプ診断

果たして犬には、共感力がどの程度あるのか? それを示す実験を紹介しよう。そして、編集部で犬の共感力を測る簡単なチェックシートを作ってみたぞ。

☑checkシート

人間の共感力を計るテストを犬に応用。ゲーム感覚で、犬の共感が感情的なのか、認知的なのか、測ってみよう。ちょっとした指標になるかも? ただ、どちらかの共感性が高ければ、優れているわけではない。

☑飼い主が緊張していると、犬もこわばってしまう
☑犬見知りの犬には、無理に絡もうとしない
☑飼い主が楽しそうな表情をしていると、元気になる
☑飼い主に悲しいことがあると、慰めてくれる
☑飼い主が落ち込んでいると、犬も悲しそうにする
☑飼い主の元気がないと散歩に行こうと誘ってくる
☑飼い主が怪しい人と思った相手に吠える。
☑飼い主がイライラしていると、オモチャを持ってくる

☑赤のチェックが多い犬は
感情的共感
感情的共感性が高め? 同じ気分になってくれる。多くの犬は、この能力が高いと思われる。

☑青のチェックが多い犬は
認知的共感
認知的共感性が高い傾向にあるかも。相手の立場に立ってものを考えられる?

人間同士でも、あくびがうつることがあるが、これはより親しい人の方がうつりやすいという実験結果が出ている。その理由は、情動的共感が理由だという説がある。つまり、感情を取り込んだ結果、あくびをしてしまう。あくびの伝染は共感能力を示すひとつの指標となる。では、人間と犬の関係であくびはうつるのか。もしうつるならば人間と同じような共感システムを持っているということだろう。

この実験は、今野先生が中心になり行ったもの。(Romero et al., 2013)方法はシンプル。飼い主が、愛犬の注意を引き付けながら5分間あくびの真似を繰り返す。
「多くの犬は、飼い主があくびをした時の方が、犬と初対面の人があくびをした時よりも、あくびがよく伝染しました」

犬に人間の気持ちが伝染? あくびの実験で判明した?

犬に人間の気持ちが伝染? あくびの実験で判明した?

「私の気持ちわかるん?」
「犬は共感力高めじゃけえ」

犬は関係が深い人ほど感情を共有できることを支持する結果となった。また、他の実験で緊張が伝染することがあるのも、立証されている。
「例えば、アジリティ競技の研究では、負けたペアにおいて、飼い主のテストステロンと犬のコルチゾールが正の相関を示していました。どちらも興奮や緊張に関与するホルモンです」(Jones& Josephs 2006)
「別の実験では、飼い主が泣く真似をしたらどういう反応を見せるかを調べています。結果、犬は飼い主が泣き真似をしている時に近づいて慰めるような行動を見せました」

飼い主の緊張が犬にも伝わってしまうって本当?

飼い主の緊張が犬にも伝わってしまうって本当?

「それ、ちょうだい」
「このぬいぐるみ、はむはむしてると落ち着く」

これは、相手の立場になって考えているとはいえないが、少なくとも相手の状況に合わせて対応を変える能力があるということ。(Custance &Mayer, 2012)犬の共感力は我々が思うよりも高いのかも。

共感犬たち

今回は広島県に、共感力が高い柴犬を探しに行ったぞ。個性が強い犬だったが、共通点は飼い主と仲良しなこと。個性派揃いの柴犬たちと飼い主の共感ライフ!

広島県 木下 春(メス・1歳)

広島県 木下 春(メス・1歳)

悩みがあったら聞くよ

かなりフレンドリーだが、飼い主以外に触られるのはあまり好きではない。身持ちが固いメス柴犬なのだ。人間の言葉を結構理解する頭脳派の一面も。

広島県 森田だい(オス・1歳)

広島県 森田だい(オス・1歳)

寂しい時は言ってこいよ

基本的に外飼いだが、時々仕事場や家の中に入ることがある。近くには山があり、家の近くにもイノシシが現れるが、全く動じないのだという。

広島県 井上タロウ(オス・4歳)

広島県 井上タロウ(オス・4歳)

落ち込むこともあるよね

人懐っこく、甘えん坊のタロウ。抱っこされたり、撫でられたりするのが至福の時間。オモチャで遊ぶのが好きで、興奮してすぐに壊してしまうのだとか。

広島県 井上花子(メス・1歳)

広島県 井上花子(メス・1歳)

まぁ、どんまい

家に迎えた当初、かなりの人見知りだったが、愛情が伝わり、母の明子さんがソファに座っていると甘えるようになった。散歩が大好きで、1時間ほど歩く。

【気付いたら同じことしている!?】 行動編

関係が深く共感できる相手の行動を真似するのは、犬も人間も同じなようだ。さてさて、犬たちは他には、どんな行動を真似するようになったのだろうか?

共感力があるから、楽しいことを敏感に感じとる。

生き物みな友達じゃけえ

生き物みな友達じゃけえ

フレンドリーな性格の母、美和さん。散歩中、知っている人に会うと、楽しそうに仲良く話す。その姿を見ているからだろうか、春も人が大好きな犬に育った。子供でも大人でも、散歩中に見つければ大喜び。家にいる時も、ベランダから道路を見おろし、人が通っていたら「遊んでー」と吠えることもあるそうだ。おかげで、近所では有名な犬なのだという。

真似することは愛情の証 嫌いな人の真似はしない

犬は信頼する人や犬の行動を真似する動物だというのは、実際に取材で多くの犬に会ってみて、そう思う。飼い主の寝相を真似して、お腹を出して寝てみたり、飼い主が何かを観察していたりすると犬もじーっと見たり。

春も飼い主の行動を真似する。春は、歯磨き用の骨が好きなはずなのだが、骨をあげても、しばらくはかじるのを躊躇するのだそう。そこで美和さんは行動を起こす。
「私が骨をかじる真似をするんです。そうすると、食いつきます」

実際にやってもらった。骨に顔を近づけ嬉しそうにかじる、美和さん。その姿が、安心感を与えるのだろうか? 急にスイッチオン。奪い取り、部屋の隅っこでガジガジし始め、恍惚の表情を見せる。
「ほら、真似するでしょう」と屈託なく笑う美和さん。もしかしたら、奪われると思って焦ってかじり始めたのかもとは思ったが、どうやらそうではないらしい。

また、犬同士でも、行動の真似をし合うのはよく見られる。2匹目を迎えたらトイレを教える必要がなかった、テーブルの足をかじるようになった、などそういった話をよく聞く。
「花子は、家に来た当初は、抱っこされるのを怖がっていました。一方タロウは甘えん坊で抱っこされるのが大好き。その姿を見て、最近花子も嫌がらなくなってきました」

タロウが明子さんに抱かれて安心しきっている感情を花子は読み取ったのだろう。ふむふむ、やっぱり共感力があるから、行動を真似することはけっこうあるのだな。

大好きな相手のしぐさは似てくるものらしい

あれー母ちゃんどこ?

あれー母ちゃんどこ?

ここでもない

ここでもない

ここにいる?

ここにいる?

やっと見つけた! 手の動きの真似

やっと見つけた! 手の動きの真似

母の光美さんが手を差し伸べると、だいも真似して手を差し伸べる。いや、これってオテをしているだけの気がしなくもないけど。まあいいか。

テレビを一緒に見るのも共感力の高さが理由?

「今日は犬でないね」 「美人犬見たいっす」

「今日は犬でないね」
「美人犬見たいっす」

「もう終わり」 「えー、もっとみたいよー」

「もう終わり」
「えー、もっとみたいよー」

母、明子さんがテレビを見ていると、楽しさを共有したいのか、一緒に見るタロウと花子。犬や動物が映ると、反応することもあるのだとか。

携帯電話からビバルディーの名曲「春」が流れると・・・

お! この音楽は!

お! この音楽は!

「ごはんでしょ?」 「まだだよ」

「ごはんでしょ?」
「まだだよ」

まちきれないー

まちきれないー

飼い主さんは優雅にゴハンタイム。その姿を真似して、春も優雅にゴハン。この日は待ちきれずオモチャに入っているオヤツを探し出した春。

共感というか……似てきた!? 愛犬と飼い主エピソード

もし室内でも勤勉な犬がいたら、ちょっと嫌だ。こんな感じで、ダラダラと過ごすのが至福の時。

もし室内でも勤勉な犬がいたら、ちょっと嫌だ。こんな感じで、ダラダラと過ごすのが至福の時。

飼い主の真似をして家の中で食っちゃ寝?
タロウにとって父ちゃんは、尊敬できる人。おかげで、行動がそっくりなんだそう。
「父ちゃんが家にいる時は食うか寝るか。タロウとそっくり。真似しているのかしら」と冗談っぽく笑う明子さん。やっぱり大好きな人の行動をついつい真似してしまうのか? でも、食っちゃ寝は犬本来の姿の気がするぞ。散歩に出るとシャキシャキするが、家の中は休む場所。きっと父ちゃんも外でバリバリ働いているぶん、家の中では休んでいるのだ。

ねむー

ねむー

【気付いたら同じ気持ちになっている!?】気持ち編

喜怒哀楽。飼い主の感情の機微を敏感に感じ取り同調できるのが犬というが、それは本当なのだろうか? どんな時に同調し、気持ちを共有するのだろう。読者犬の生活を覗いてみた。

「今日はやめようよ」 「僕も行きたくなくなった」 「また明日ね」

感情をキャッチし、同調する。だから犬ってもてるんだなぁ~

「今日はやめようよ」
「僕も行きたくなくなった」
「また明日ね」

功祐さんのダイエットのためにも、だいを家に迎えた。散歩が大好きなのだが、雨の日は行きたくない家族の気持ちに同調し、散歩欲が減退。

いつも仲良しだからこそ 気づいたら同じ気持ちに

だいは共感力がかなり高めのオス柴。散歩に出かけるのを3度の飯並みに楽しみにしているのだが、雨の日は空気を読む。あまり出かけたくない飼い主の気持ちに同調し、ちょっと遠慮するのだとか。

また、飼い主の愛情も感じ取る。普段は犬小屋に繋がれているが、昼になると、自宅に隣接する仕事場に移動するのが日課。冬になると仕事場にある暖炉で暖を取るのだが、冬毛におおわれているだいにとっては、暑すぎることもあり、外に出ようとする。だが、祖父・政史さんの寂しそうな目線をキャッチ。「だいと一緒にいたい!」という思いを受け取って、しばらく一緒に過ごす。

尊敬してやまない父、功祐さんに対してもその共感力の高さは発揮される。功祐さんが酔っ払って帰宅して、最初に迎えてくれるのは、玄関先にいるだい。ご機嫌な功祐さんの餌食となる。顔をこねくり回し「だい~」と言いながら、抱きつく。ちょっと迷惑だけど、嬉しそうな功祐さんに同調して、だいも楽しくなるのだ。

木下家では、春の共感力の高さを利用している。
「春と遊ぶ時、私も心から楽しそうにしてあげるんです。ハイタッチ、とかしたり。そうすると、春もテンションが上がるようです」

他にも、ご夫婦が喧嘩を始めたら仲裁しようとすることもあるのだという。
「主人と口論になったら、春があたふたし始め、別々の部屋にいる私と主人に交互に、オモチャくわえて持ってきてくれるんです。私たちの感情を理解して、落ち着かせようとしてくれているのでしょう」と美和さん。
「落ち着いてオモチャで遊ぼうよ」といった感じかな。認知的共感と言えるだろう。

これも共感力の高さがなせる技だ。

離れていても会いたい気持ちを華麗にキャッチ

離れていても会いたい気持ちを華麗にキャッチ

共感! 共感!

光美さんがだいに会いたくなり、玄関前にある小屋の前に行くと、その気持ちを感じ取り、だいも小屋から出てきて甘えん坊モードになる。

怪しい取材班の登場 飼い主の警戒心が伝染?

怪しい取材班の登場 飼い主の警戒心が伝染?

なんて怪しいの

例えば、怪しいセールスマンの訪問があると、誰でも警戒する。そんな時、だいにもその気持ちが伝染し、身を構えることもある。

リラックスしていると愛犬もまったりあくび

リラックスしていると愛犬もまったりあくび


「ねむいなあ」 「今日もつかれたー」 「母ちゃんおつかれ」

「ねむいなあ」
「今日もつかれたー」
「母ちゃんおつかれ」

明子さんがソファに座って休んでいると、愛犬達もリラックスをするのが日課。

撮影が終わりほっと一息 安心してゴロンを披露

撮影が終わりほっと一息 安心してゴロンを披露

おつかれー

一通り撮影が終わって安心している光美さんを見て、気を抜いたのか、ゴロンと腹見せ。

一緒にたそがれたい時に近寄ってきてくれる

一緒にたそがれたい時に近寄ってきてくれる

「風が気持ち良い」
「ねえ母ちゃん」

甘えたい時も近寄ります

甘えたい時も近寄ります

美和さんが外を見てたそがれていると、春も見たくなり、抱っこを要求することが。

こんな時共感してほしい!

あそぼーあそぼー

あそぼーあそぼー

飼い主の苦労にも共感を!
あまりイタズラをしないが、タオルについているタグを噛んで遊ぶのが、至上の喜びだというだい。だいがタグを飲んでしまうと危ないので、タオルなどを購入すると一枚一枚ハサミで切り取ってあげるのだそう。この大変さ、共感してほしい! また、春は美和さんが掃除機をかけているとなぜか、オモチャを持って遊びに誘ってくる。遊んであげたいのは、やまやまだけど、ちょっと邪魔なんだそう。「私が忙しい気分の時は、共感してそっとしていてほしいです」と苦笑い。

楽しさは共有できるけど、大変さは感じ取らないことが!? これは確信犯か?

楽しさは共有できるけど、大変さは感じ取らないことが!? これは確信犯か?
「だってーたのしいもん」

こんな時どうする!? 飼い主の気持ち推し量り選手権~!!

犬は飼い主の感情を共有する能力が高いのはわかった。でも、こちらの気持ちを推し量ってくれるのか? 飼い主の協力のもと、お遊び実験してみたぞ。

表情や仕草や声などなど 感情のヒントはたくさん

犬は飼い主の感情を読み取る際、何をヒントにしているのだろうか? まず、考えられるのは表情。経験則で飼い主の目尻が下がっている時、つまり笑顔の時は嬉しがっている、などは把握している可能性が高い。怒っている時、機嫌が悪い時なども、同様で、表情に加え仕草なども観察し、総合的に判断していると考えられる。
「また、声からもヒントを得ているでしょう。多くの動物の中で、音声は共通点が多いです。声が低ければ怒っている、高ければ機嫌が良い、甘えている、など共通点が見られるのでヒントにしやすいはずです」

しかし、感情がわかっているからといって、推し量ってくれるとは限らず、自分の気持ちを優先して行動をとることはよくある。まあ、その場合、多分気づいていないだけ……ってことにしておきましょう。

井上家の場合

「兄ちゃん食べんさいや」 「母ちゃんごめん!」

「兄ちゃん食べんさいや」
「母ちゃんごめん!」

机の上に大好物を発見! 食べる? 我慢する? どっち?
ヨーグルトが好きなのだというタロウと花子。机の上に置いといてみると、どういう反応を見せるか? という実験。飼い主の「撮影中に盗み食いされたら恥ずかしいー」という思いに共感するか? と思いきや、食欲には勝てず。このあと、容器にかみついた。

木下家の場合

「それ、時代遅れだよ」 「えっ!? 古い?」

「それ、時代遅れだよ」
「えっ!? 古い?」

ダブルピースで喜びを表現 ピースの意味は伝わらない?
我々人間は誰かがピースサインを出していると、機嫌がいいんだなあ、と察する。それがダブルだったら、さらに。しかし、さすがの春も2本の指を立たせるこのサインの意味はわからないようだ。「何やってんの?」って感じで見つめるだけ。共感失敗。

森田家の場合

「はらへったー」 「ききんさいや」

「はらへったー」
「ききんさいや」

晩酌をしながら愚痴をこぼす でも、食べ物が気になる
時々晩酌につき合ってもらって、愚痴をこぼすことも。この日は、実験ということで、酒を飲むふり。いつもと違うことを察知したのだろうか、功祐さんが愚痴をこぼしてもどこ吹く風のだい。それよりも、テーブルに食べ物がのっていないか入念に確認する。

井上家の場合

「えーんえーん」 「なにしてんの?」 「バレバレ~」

「えーんえーん」
「なにしてんの?」
「バレバレ~」

迫真の泣きの演技だが「泣いてないでしょ?」と冷静
「えーん」と泣き声を出し、目を手でおおう。誰が見ても泣いているように見えるが、さすが犬の観察力。嘘と見破り、動こうともしない。「母ちゃん、変なことやらされてかわいそう」という感じで見つめるタロウと花子。うーん、犬って冷静だなあ。

共感力をアップするのは、やっぱ相手への思いやりが必要っす

違う種とも共感し合える 犬の共感力ははんぱないっす

それにしても犬は本当にすごいなあと思う。だって、違う種である人間と共感できるのだから。これは、チンパンジーなど知能が高いと言われている動物にも、なかなか見られないことなのだという。性質も、体のつくりも、習性も大きく違う我々人間と言葉以外で通じ合うことが出来る。それを可能にするのは、まずは観察力。まあ、みなさんすごく飼い主を観察している。相手の感情がわからないと共感しようがないものね。

僕ちん実は凄いんです

僕ちん実は凄いんです

ただ、飼い主と愛犬のやり取りを見ているともっと重要なことに気が付いた。犬は飼い主を観察するだけではなく、何をしたら喜ぶかも考えている気がする。要は思いやりってことだな! 思いは技術を超えるのだ。それに気づかせてくれた犬のお蔭で、共感力がアップした気がするライターO。少しだけ結婚へ距離が縮まったのだ。

ねぎらってね

ねぎらってね

最後に、今野先生が興味深いことを言っていた。
「共感性は動物が集団生活するうえで調和を守るために大切です。でも、ダークサイドもあります」

共感力があるから、自分に近いもの、家族、属しているグループを守ろうとする。これは人間も同じ。味方とそうでない人に、ラインを引き、敵とみなせば攻撃をしてしまうこともある。これは犬にも言えること。犬は誰とでも共感出来るわけではないことは意識しておこう。

Text:Daizo Okauchi Photos:Michio Hino

監修:今野晃嗣先生
帝京科学大学講師。動物の個性や性格の生物的基盤の解明をめざし、質問紙法から遺伝子解析まで、幅広い手法を使って解析を進めている。日本動物心理学会、日本動物行動学会などに所属。

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