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【DOG's TALE⑧】トリマー物語 第3回

【DOG's TALE⑧】トリマー物語 第3回

文=中原麟太郎(MY♡DOG Summer 2020 Vol.3より)

  • サムネイル: MY♡DOG編集部
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『スコティッシュ・テリアの ストリッピングの歴史と未来』

私は、スコティッシュ・テリアの風貌、頑固で愛らしい性格にはまり、1976年から繁殖を続けて参りました。なぜ専門犬舎なのかというと、ひとつの犬種を深く研究、経験するのに多くの月日を要するからです。

そもそもスコティッシュ・テリアは、猟犬として山猫や穴熊、狐、カワウソなどの害獣を捕まえて殺す、いわゆる狩りのために飼育されていました。この頃はざらざらの毛が体全体を覆い、割と短脚で、頑丈な骨格を持っていました。被毛は伸びてくるのである程度のカットをしていたと思われます。イギリスでケネルクラブの公認犬種となった1879年から本格的にドッグショーへ出陳されるようになり、その頃からドッグショーで勝つための美的要素を追求されるようになりました。そして、人々はより長い被毛とより美しく見えるコートをスコティッシュ・テリアに望むようになっていきました。そこで生まれたのが、コートを美しくする“ストリッピング”の技術です。

ストリッピングとは、毛を抜く作業のことです。ストリッピングする前の写真【1】をご覧ください。

ストリッピングは、完全に死毛になった被毛に行います

ストリッピングは、完全に死毛になった被毛に行います

このように被毛が完全に死毛(※)になってからでないとストリッピングはしません。もうひとつ注意したいのが、ストリッピングする直前にはシャンプーはしないということです。なぜなら油脂と汚れがないとナイフで上手に毛をつかめませんし、犬自身痛みを感じてしまうからです。私が使用するナイフは1本のみ。まず、肩から尾の付け根に向かって、ナイフで少しずつ毛の生えている流れに沿って抜いていきます。そのとき、写真【2】のように毛の真ん中くらいをつまんで、力を入れずにやわらかく抜くように心がけています。

※死毛 既に抜けた毛、毛根が弱りいずれ抜ける毛のこと。抜け落ちず、生きている被毛に絡まっていたり、隠れていることがある

スコティッシュ・テリアが痛みを 感じないように、優しくつまみ、やわ らかく毛を抜いていきます

スコティッシュ・テリアが痛みを 感じないように、優しくつまみ、やわ らかく毛を抜いていきます

首周りは特に痛がるため、より気をつけて少しずつ。そして、アンダーコートを体全体に1枚残し皮膚を露出しないことで、皮膚と新しいコートを保護します。

ドッグショーに参加しているスコティッシュ・テリアはこのような手順でストリッピングを行いますが、手入れとして1カ月に1度ストリッピングする犬たちには、シンプルなストリッピングを施します。写真【3】はそれが完成したときのものです。

シンプルなストリッピングを施し たスコティッシュ・テリア。1カ月に1度しておくと、ブラッシングなどの 日常の手入れも楽になります

シンプルなストリッピングを施し たスコティッシュ・テリア。1カ月に1度しておくと、ブラッシングなどの 日常の手入れも楽になります

シンプルなストリッピングでは、まずどれくらいの量の毛を抜くかを考え、全体がきれいな形に仕上がるように抜いていきます。この手法は少し経験を必要としますが、慣れてくればできるようになります。コートを新しく作ると皮膚の健康状態がよくなり、家庭での日々の手入れが簡単になります。最近では、私がストリッピングをしている姿を見て、オーナーさんたちも挑戦するようになってきました。これから始める人なら、まずよいスコティッシュ・テリアをモデル犬にし、各部分の仕上がりの見本になるスタンダードをよく理解すること。そして、ナイフ、ハサミ、コームなどのよい道具を持つことです。2~3カ月かけてピカピカのコートを作り上げてください。オーナートリマーが増えることがこれからのスコティッシュ・テリアの発展につながると私は信じています。

スコッチテリア専門 ランドローズ犬舎 中原麟太郎さん


スコッチテリア専門 ランドローズ犬舎 中原麟太郎さん

1976年よりスコッチテリア専門ランドローズ犬舎主。2015年に開催された世界最大ドッグショー「英国Crufts 展」で「Best in Show」に輝いたスコティッシュ・テリアの父犬を繁殖。多くのアメリカチャンピオン犬も作出している

構成/ SOULWORK
取材/河島まりあ

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