【獣医師監修】猫の腎臓病 考えられる原因や症状、治療法と予防法
犬よりも猫がかかりやすい病気、それが腎臓病です。じつに、7歳以上の高齢猫の3割以上がこの腎臓病を患っているともいわれます。しかも、腎臓病は死に至ることもある恐ろしい病気です。
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監修:電話どうぶつ病院Anicli(アニクリ)24 三宅亜希院長
猫が腎臓病になる原因
なぜ、猫は腎臓病になりやすいのでしょうか? 一般的には、猫はもともと砂漠で暮らす動物であったため、水分を有効に使うために尿を濃縮して排泄することから、腎臓に負担がかかりやすいのではないかといわれています。人間の腎臓病の場合は塩分の摂取過多のほか、高血圧症・糖尿病といったほかの病気が原因で発症することが多いのですが、猫の場合は規則正しい食生活をしていたとしても腎臓病になってしまうことがあるのです。
猫がかかりやすいのは、腎臓病の中でも「慢性腎臓病」と呼ばれるもので、初期症状が出づらく、じわじわと進行していく腎臓病です。腎臓が徐々に衰えていき、最終的には機能しなくなってしまうのです。
急に腎臓の機能が低下する「急性腎臓病」は、中毒性のあるものを口にしてしまったり、尿結石など病気の影響で尿が出せなくなってしまったりした場合になる病気です。この場合は、すぐに治療を行うことができれば、体調が元に戻ることもあります。
猫の腎臓病の症状
急性腎臓病の場合は、名前の通り突然症状が出ます。食欲が低下し、おしっこが出なくなります。嘔吐を伴うこともあります。
慢性腎臓病の場合、症状は緩やかに出るのですが、腎臓の働きが悪くなると、水分バランスが悪くなるので尿の量が増えたり、水をたくさん飲むようになったり、脱水症状を起こしたりします。さらに、老廃物が体内に溜まることで気持ちが悪くなり嘔吐をしたり、食欲不振になったりするため痩せていきます。最終的には腎臓が働かなくなり、おしっこを作れなくなってしまいます。
猫の腎臓病の治療・予防方法
猫の慢性腎臓病は、残念ながら治療をしても完治することはありません。腎機能は低下する一方なので、その機能の低下をできるだけ緩やかにし、腎臓に負担をかけないような対処をしていくことになります。
一般的には、嘔吐や脱水などの症状を抑える対症療法を行い、療法食を食べさせます。血管透析や腹膜透析といった治療法もありますが、血管透析の設備を持っている病院は少なく、費用も高額になります。腹膜透析では、腹部にチューブを入れたまま猫が生活しなければいけないため、感染症のリスクがあります。
予防としては、慢性腎臓病は7歳以上の高齢の猫がなりやすいので、半年から年に1回は定期検査を受診することが大切です。
また、2017年1月には猫の腎臓病治療薬が承認されています。この腎臓病治療薬「ラプロス®」の成分には、人間の血流を改善させる目的で使用されているものが含まれています。研究の結果、じつはこの成分が猫の腎臓病にも効果があることがわかり、猫の腎臓病治療薬として発売されることになりました。腎臓は治る臓器ではなく、この薬を使用しても慢性腎臓病が治るわけではありません。しかし、「腎臓に直接作用して慢性腎臓病の進行を遅らせる効果がある薬」というのは今までになかったものなので、飼い主も獣医師も期待していると思います。
猫に多い腎臓病。まずは定期的な健康診断を行い、早期発見・早期治療に努めましょう。
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