最近、『動物傳心師(ドンマッチュンサムシ)』という言葉を耳にした。日本ではアニマルコミュニケーターといい、動物たちからのメッセージを聞き、伝える仕事である。
人間と動物の懸け橋を目指すレイチェルさん(左)と花灑さん
どうぶつ番組で見てからアニマルコミュニケーション(以下アニコミ)には興味があったので、百聞は一見に如かずと思い、知人の信頼するアニマルコミュニケーター花灑(ファサー)さんとその先輩で台湾で活躍するレイチェルさんのお二人に、我が家の黒ちゃんと会話をしてもらった。保護してから7年以上も経つのに、家で姿は見えても近づくことのできない不思議猫なのだ。写真だけで会話できるそうだったので、早速写真を送り後日会話結果も含めインタビューさせてもらった。
動物との会話は、人間同士とはまるで違い、動物の心に直接語り掛けるもので距離や時間は関係なく、動物からの反応は、動物目線の視覚映像や感じている感覚や感情、匂いや感触で伝わってくることもあるそうだ。
日本の野良猫は会話がしやすいそうだ(写真提供・花灑さん)
科学ばかりが先行する現代で、テレパシーやスピリチュアルの領域は理解しがたいところもあるが、人間も動物としてもともと持っていて、今でも直感とか予感とか第六感などと言われている能力を、訓練で動物のレベルに高めたようなものだという話はとてもわかりやすかった。
そして、黒ちゃんの話にも驚かされた。私について尋ねたところ、餌をくれる時は大好きだけど、PCに向かって原稿を書いている時は怖くて近づけないというのだ。それでいつも遠回りしていたのかと、私は爆笑とともにすべてが腑に落ちるのを感じた。
数日後、黒ちゃんがPCに向かう私の近くで立ち止まり、おやつ頂戴という視線を送ってきた。その変貌ぶりは、私の中に残っていたアニコミに対する僅かな疑念をも払拭してしまった。
アニコミ後、黒ちゃんはこんなに大胆な姿を見せるように
実は最近、プラスチック製の亀を行方不明になったペットだと偽り、アニマルコミュニケーターに依頼したテレビ番組が物議をかもしている。花灑さんも香港ではまだ理解度が浅く、わざと偽のペット情報を与え試す人も少なくないと言っていた。一方台湾では、約100人以上のプロが存在し、飼い主がペットの状態を知るために定期的に行うところにまで至っているそうだ。
このインタビューを終えて間もなく、21年間香港生活の支えだった愛猫儍波(ソ ーポー)が虹の橋を渡った。腎不全で様子がおかしくなった時、花灑さんのお力を借りた。「私は、何でも自分で直接ちゃんと(飼い主に)伝えてるから、あなたになんか話さなくてもいいの!」という第一声を伝え聞き、おしゃべりで意思が強い儍波にしか言えない言葉に涙が溢れた。
儍波は、きちんと人の目を見て意思を伝える猫だった
アニコミは、まだまだ様々な捉え方や考え方があり、論争はこれからもついてまわるだろうが、この体験を通して私が実感したのは、それが本当に自分のペットの言葉なのか、アニマルコミュニケーターが本当にペットの心と自分の心を繋げてくれたのかどうかは、強い絆で結ばれた飼い主なら絶対にわかるはずだということだ。
花灑さんFacebook @flowerach
レイチェルさんFacebook @animalcommunications
(写真・文 塚碕由香)
Yuka Tsukazaki
猫2匹と香港在住のライター。
広東語で通訳、翻訳、日本語教師などもこなす。
著書に『香港の大スター☆クリームあにき』(辰巳出版)。